冷蔵庫のたまごパックに入った異分子
挿絵の画像を作成する際には、「AIイラストくん」を使用させて頂きました。
夫は会社に出勤し、娘は小学校。
私一人で食べる昼食なんだし、簡単な即席ラーメンで良いよね。
流石に麺だけだと味気無いから、適当な具材は入れるけど。
「野菜は昨日の残りの白菜があるし、後は鶏卵でもあれば栄養バランスも良くなるかな。んっ?」
冷蔵庫から鶏卵を取り出そうとした次の瞬間、私は硬直してしまったの。
何しろ手にした透明パックの中には、卵じゃない物まで入っていたのだからね。
サイズ感や形は鶏卵によく似ていたけど、手触りはいかにもプラスチックという硬質な物だったし、オマケに分割線が随所に入っていたの。
極めつけは、青とか黒といった自然界では有り得ないカラーリングね。
「こ、これは…」
そのうちの黄色い個体を手にした私は、子供の頃の記憶を頼りに指先を動かしたの。
分割線に沿って開き、中から出てきた部品を展開して。
そして数十秒後、テーブルの上にはズングリしたキリンのミニフィギュアが鎮座していたの。
「子供の頃に買ったのと変形機構が全く同じね。それだけタマゴロンが玩具として完成されているって事なんだろうけど…」
鶏卵型から動物や恐竜に変形するタマゴロンは、私が小学生の頃に大流行した玩具だったの。
この真新しさから察するに、近年になって発売された復刻版なのだろうけど。
「と言う事は、全く仕方ない子…」
悪戯の下手人を察した私は、呆れながら思わず頭を抱えてしまったの。
そうして鶏卵型に戻した変形玩具を透明パックに収めた私は、小学校から帰宅する娘の京花を玄関先で待ち構えたの。
「おかえり、京花。これ、貴女の仕業でしょ?」
「ああ、バレちゃった?」
動かぬ証拠を突きつけられた京花は、アッサリと観念した。
「あのね、京花。冷蔵庫の中って匂いが移りやすいのよ。生臭くなったらタマゴロン達が可哀想でしょ。」
「えっ、生臭くなる?それは嫌だなぁ…」
こうして理詰めで説得したら、京花はアッサリと非を認めたの。
やっぱり自分の御小遣いで買った玩具が臭くなるのは嫌みたいね。
ところが、事件はまだ終わってなかった。
翌日の早朝、今度は透明パックの中に卵型チョコレート菓子が収まっていたの。
「修久さんったら、また中のオマケだけ抜いてチョコを放ったらかしにしたのね…本当に、仕方のない人!」
食玩を集める為に卵型チョコレート菓子を箱買いしている夫の顔を思い浮かべながら、私は再び頭を抱えてしまったの。
娘といい、夫といい…
私の家族って、どうしてこうなのかしら?