表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鈴音  作者: R a bit
鈴の音は遥か彼方へ
55/57

No.34、カノン

最近になって一章で広げる風呂敷間違えたなって気づきました。YouTubeでAngelBeats!を見返してより思ったんですが、やっぱ最初は世界観の把握が大事ですね。異能力とか異世界とかファンタジーはこれで最初で最後にしようと詰め込みすぎたのと、単純に私の力不足が悪い方向にインド人を右にしてしまいましたね。

春の国政治の中心である弥生城、そこには3人の人影があった。春の国国王代理であり軍の最高権力者且つ、国の全権を委任された人物アスタリスク・スターレール。そしてその側近神雷(こうらい)双影(そうえい)。政治の国である春の国の中心とは思えないほど、普段穏やかな空気の流れる城内は緊張に包まれていた。

「それで双影、巡回する兵士の影に潜んだは良いものの灰神楽(はいかぐら)夢幻(むげん)の力で魔法が解除され、挙句の果てには紅炉(こうろ)が現れた事で戦慄(せんりつ)の移動が遅れ灰神楽同士を会わせてしまったと。」

「何やってんだかな、これで灰神楽(最終兵器)は失われ、俺等3人があの夏の国全戦力と殺り合わなくちゃならねぇわけだ。」

金髪の巨漢、神雷は腕を組みながら隅で縮こまる双影に圧をかけていた。

「ご、ごめんって。でもしょうがないだろう?凪の水面が壊れたんだ…その衝撃で周辺に住む人たちが何人気絶したと思ってるんだよ。(ヒカリ)ならまだしも僕は影がなければトロいのは知ってるだろ?」

双影は尚も顔を上げようとはしない。その様子に慣れているのかアスタリスクも神雷も特に気にすることなく雰囲気を切り替えた。

「まぁここまでは嬢ちゃんの予想通りだな、後は俺等三人で夏の国最高戦力五騎(さつき)の元メンバー達を殺れるかだな。」

「一つ予想外があるとすれば、一般兵をあしらうのは半田(はんだ)(いばら)だと思っていたが、鈴音(すずね)とか言う魔族がそれを行ったことだ。棘に当てるつもりだった刀寿(かたぶき)が其奴と戦ってどうなるか、そこが唯一の懸念点だ。」

直に五騎の戦闘を見なければ…いや全員の戦う場面をその目で目撃できなければ、半田棘という人物は五騎のサポート役だと思うだろう。しかしこの三人は違った。半田棘もまた化け物じみた強さを誇っており、彼女に勝てるのもまた五騎のメンバーくらいのものなのだと。そう理解しているからこそ、刀寿というメタをぶつけたかった。彼女の最もと言える弱点は彼女の兄、半田刀寿に対して過度なコンプレックスを抱いている事だった。

「どうなるも何も、嬢ちゃんがノート・キーパー、双影がアイシス・ハルマ。俺と兎亀(とがめ)がその他の殲滅、それが変わるわけじゃねぇ。」

どっしりと構えながら神雷は目を瞑って深く椅子に座り直した。木の軋む音がその身体に内包された力を示していて、苛立ちとも呆れとも違う感情を抑えるように身体が少し揺れている。

「とにかく、灰神楽の決着がつくか拮抗状態になるまでは私たちが動くわけにはいかない。天弓(アルテミス)月弦弓(アポロン)の準備はできている、それまでは気長に待つとしよう。」

三人はそれから特に話すことも動くこともなく、場面は灰神楽邸へと戻る。


灰神楽夢幻が巳速(みはや)を抑え、凪の水面を破壊し漸くの帰省を果たすと同時に灰神楽戦慄は刀を持って庭に現れた。齢は還暦を超え着物越しに見える部分だけでも桁違いな数の皺と傷跡が刻まれていた。そのうちの半分は自らの子供によってつけられたものだ。

「夢幻か…今日は厄日だな、二度と顔を見たくないと思った我が子に二度会うとはな。」

しゃがれた声は重々しく辺りに響く。髪も妻も失って尚人類最強の威厳は失われていなかった。

「とても娘が帰ってきたとは思えない発言ですね、お父様。以前会ったのは母様が亡くなった時でしたか?会うたびに親の死に目を見るとは心苦しい限りですよ。」

お互い声は穏やかだが柄から手を離そうとしない。既に2人共間合いに入らないギリギリを攻めていた。

「巳速はやられたようだな。純粋な速さではワシを遥かに超えているのだが、やはり貴様には通用しなかったか。」

「お父様も年老いて、最早例え名指しを使ったとしても巳速に届かないのでは?少なくとも7年前と比べ間合いは狭くなったようで、既に前回より三歩前に出ていますよ。」

静かに二人の灰神楽(人類最強)は15mの間隙を以って足を止め、抜刀の構えをとった。風が二人の間を通り抜けどこかで風鈴がなる。長く艷やかな夢幻の黒髪が振り子として一秒を刻むよりも早く戦慄の姿は見えなくなった。

「舞十技六番月の舞、美霞月斬(みかづぎり)。」

到底剣の間合とは思えない距離を一瞬にして詰め、旋律の刀は三日月の軌道を描き夢幻の喉元へ伸ばされた。殺気によって揺れる空気を切り裂く刀身が夢幻の残像(・・)を掻き消した。

「化け物め、一秒先にいる(・・・・・・)ワシの攻撃を躱すとは。」

「その場千鳥。お父様のためだけに編み出した移動しない回避術ですよ。」

戦慄の名指し『戦線恐狂と律する刀(プライドブレイド)』。その能力は至って単純であり、一秒先の自分を連れてくるという物だ。それをもってしても夢幻の動きを超える事は出来なかった。

「今ので分かったでしょう?貴方がどんな魔法を使おうと、どんな剣術を用いようと、私に届くことはないと。」

戦慄は何も言うことなく刀を鞘に収める。夢幻もより一層力強く地面を踏んだ。本来『戦線恐狂と律する刀』は防御に用いられるカウンターの技である為、夢幻から攻めることは困難であり、当然それを理解している戦慄もまた攻めあぐねていた。そうして2分程硬直しその硬い空気を斬り伏せたのは灰神楽夢幻の後ろ髪だった。

「舞十技二番水の舞、高波(たかなみ)。」

上へ切り上げられた斬撃が地面を割り、空気は裂かれ向かいの壁を切り分けた。戦慄は自身の名指しによって、かすり傷に抑え回避に成功し即座に攻撃へと切り替えた。

隙の多い高波によって生まれた絶好の機会の僅かな隙間を通すように、戦慄は最高速の攻撃を繰り出す。

「舞十技八番雪の舞、氷柱針(つららばり)!」

急速冷却された空気は体積を縮め、生まれた真空を通すような高速の突きが夢幻の心の臓へと伸びたが、その刀は僅かに届かなかった。

夢幻泡影(むげんほうよう)皆既日食の型かいきにっしょくのかた。私の無幻の効果は一点に集める事で私の体外にも同じ効果を持たせる事ができる。先程の斬撃(・・)に無幻の力を込めました。正確には刀ですが。」

一秒先にいる。それは時間的なアドバンテージであるが、自分が一秒先にいるという勘違い(・・・)は距離の目測を誤るデメリットと成り得る。戦慄は最も速く攻撃をしようと夢幻に刀身が届く限界を歴戦の勘によって見極め、それによって一秒分の距離夢幻に届かなかったのだ。夢幻は冷静に冷酷に刃を戦慄の喉に当て血が出ない程度に薄皮を切った。

「仮にも父親だ、言い残す事があるならば巳速に伝えて上げますよ。」

「貴様に人が斬れるのか。」

戦慄は冷たい錆のつく様子のない刀身に怯むことなく、磨かれに磨かれた眼光は夢幻の心の暗い部分に鋭く突き刺さった。

「お前が家を出てから17年、幾らでもワシらに復讐する機会はあった筈。だのにそうしないというのは、貴様が17年も魔の者を斬り続けたのは貴様に人を斬る覚悟が無いからだ、親との(えにし)を斬る強さが無いからだ!」

自らの命の危機に抵抗する為の虚勢は、いつの間にか獲物を喰らう狩人の物となっていた。現に夢幻は迷っていた。輪回の話は別に確かな物ではないのだ。同じ事を、別の世界での記憶があるという人物には他にも夏の国で出会った。しかし夏の国でしか見たことがない。それは夏の国の建国が最も遅かった故かもしれないし、輪回によってそう思わされている催眠紛いなものなのかもしれない。自身と同じような力を輪回が持っていることは信じざるを得ないがだからこそ自分が他の世界を認識できない事に疑問を感じていた。

つまりどういうことか、夢幻は確かに親に拒絶され隔離された環境で育った。それは本当に人を殺すに値する理由なのだろうか。未だこの世界では人を斬ったことのない夢幻はそれを杞憂だとは到底思えなかった。

「『む』と『音』は忌み名。」

それでも確かに自身に刻まれた物を夢幻は思い出していた。生まれたとき親の記憶にその子供の新たな存在が名前として現れる。『夢幻』という名前が天啓ときて降りてきたとき、両親はどう思っただろうか。

その記憶は確かにあった。彼らは私の性別から跡取りを気にし、自分という忌み名を受け入れた。

「そこだけは感謝しています。舞十技三番風の舞、青嵐・薫。」

夏の薫る風が濡れ衣を拭い、戦慄の(誇り)は夢幻によって切断された。



「お前の母親の名前を覚えているか。」

夢幻が暫くの沈黙の後刀を鞘に収め後ろを向いた時、戦慄はか細く呟いた。

星海(ほしうみ)(かんなぎ)。春の国の巫女だったそうですね。」

神々しく皇后しい当時の春の国の第三王女であり、現人神の子孫。神を信用しない戦慄が一体どうして彼女を妻として迎えたのか、国民は全員が政略結婚だと思いそんな疑問は全く持たなかった。

「巫は仮名だ。無則(なのり)の妹にワシがつけてもらった。真名は神薙(かむなぎ)、アイツもまた神に嫌われた存在だった。」

仮名遣いが変える事で、星海家は威厳を保ち続けていた。

「ワシみたいな物好きは存外居るものだ、お前は母さん似で美人だからな。」

「今更何を…」

「成長したな夢幻、過去に戻れるのならその過程を見てみたかった。」

夢幻は耐え難い怒りとやるせなさに力の発散場所が分からなくなって、下唇を噛んで勢いよく後ろを振り向いた。

巳速はまだ眠っていて門にもたれるように姿勢を直してから夢幻は門を閉めた。



同国弥生城

三人いたはずの部屋にはアスタリスクと神雷しかおらず、空気は冷めきって停止していた。それを破壊するように窓ガラスは雨として部屋に降り注いだ。

「よぉ二人とも!相変わらずしけてんな、もっと元気に行こうぜ!」

「光!テメェいつになったら扉から入ってくんだよ。」

「外から入るにゃこれがいっちゃん速ぇんだよ。んな事より灰神楽の決着がついたぜ。戦慄は戦意喪失、夢幻は誰かを探すように春の国を徘徊してる。どこ行ったかは速すぎて見えなかった。」

「光より速いとか本当に人間かよ。見失ったって事はここに来る様子はないんだな?」

光と呼ばれる金髪でハツラツな青年は無邪気な笑顔を瞬時に曇らせ、光る目は少し暗んだ。

「多分狙いは同じなんだろうな、夢幻も戦慄の戦線復帰を危惧して簡単にはここを去れない。見渡しのいい場所で待機って感じだろ。なぁアスター?」

「愛称擬きで呼ぶのは辞めてくれ。まぁ大方それで間違いはないと私も見ている。」

アスタリスクは帽子を被りドアノブに手をかけた。

「行くぞ二人とも、ここからが正念場だ。」


一方その頃半田棘と雪宮綾命は各々春の国の使者と接敵していた。

棘は自身の兄半田刀寿と、綾命は秤兎亀と。

後1名の死亡が確認された。

明けましておめでとうございます。そういえばで言うべき内容かは分かりませんが2024年11月23日をもって鈴音1周年でした。という報告を2025年の三が日に行っています。

飽き性ではあるのですが1年続けたとなると感慨深いものがありますね。計算したところ書き途中の短編とかありますが公開した内容に絞ると1年で312,293文字となりました。

なんか調べたところ10万前後が一般的な文庫本の文字数だそうで、鈴音と君のソナタで2巻ずつ行くか行かないかくらいらしいです。

今年も稚拙な文章と構成にはなりますが何卒宜しくお願い致します。


戦慄の名指しが横文字な事に違和感があった人、多分そこに触れるのはもっと未来なので今は名指しは漢字に横文字あてる念能力みたいな感じなんだなぁって思ってください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ