No.12' 鋳造 No.13威張らずに判断を
修行パートはこれで終了です。
やっと、なろう系らしくやれるぜ。
12'鋳造
「よぉし、じゃあ魔術は魔力が流せればもうやることはないからね。名指し以外の階梯の低い魔法からやろうか。」
階梯、魔法の正確には魔法陣の生成難易度ごとに分けられ、人が行えるのは第五階梯までらしい。それ以上は人知を逸脱した禁術だそうだ。
「突然魔法なんて言われても分からないだろうけどね。さっきみたいに魔力を体の外に流すんだ。そしたらはいこれ。」
そう言って彼女が差し出したのはさっき名指しの魔法で取り出した本、その一ページ目に書かれた魔法陣だった。
「これを覚えて頭の中で描けるようにする。」
それは円の中に三角形が二つ重なったたしか六芒星やダビデの星と呼ばれるものの中に。灯と書かれたものだった。
「はい、覚えました。」
「じゃあそれを頭の中で描いて、魔力と一緒に外に流すように意識を動かして。」
「錬丹」「流転」
「じゃあはい、ご唱和ください!
灯火」
「灯火!」
突如私の手の前にさっき見た魔法陣が浮かび上がり、空気が燃えた。
「……」
言葉を失うしか無い。さっきの名指しは結局何がなんだか分からなかったが、今回は明確に理解した。
炎と呼ぶには小さく儚いが空気に火を付けるという事象を私が引き起こしたのだ。
そのまま夜まで私は夢中で魔法の修行をした。
今日覚えたのは三つの魔法だ。どれも第一階梯魔法だそう。
「遅かったな。道に迷ったのか?」
家につくと夢幻さんは既に夕飯の準備を始めていた。
この人のエプロン姿結構似合うな。
「いえ、思ったより魔法の修行が楽しくてつい。それより手伝いましょうか?」
「いや、大丈夫だ。しかし初めてで五時間近く魔法の修行行うとは、一般的な飽和魔力量よりかなりの数字なのだろうな。」
それからというもの午前中は夢幻さんと剣術を鍛え、午後ではノートさんと魔法を鍛えた。
月日は経ち、三年後。
「……よくやった。遂に舞十技全てを覚え、私に追いつけるくらいには成れたな。」
「はい、ありがとうございます。」
ここ三年で私は背と共に髪が伸びた。黒と白は対象的だが、服は夢幻さんのお下がりのため、見た目はかなり似てきた。
「そろそろ、だな。ギルドに登録しに行こう。」
その日から私のギルドでの波乱万丈な生活が始まる。
13、威張らずに判断を
「その前にだ。一人合わせておきたい奴がいるのだ。」
「もしや、あれですか?真名さんとか。」
「いや、あの話は無しだ。そもそも三年もたって捜索願いが出ていない。まぁお前がそこまでしてここを出ていきたいのならそうするが。」
「そんな卑怯なこと言わなくても、私はまだまだ世話になるつもりですよ。」
麗らかな日和に絶え間なく鳴る風鈴。夏の国の気候にも随分慣れたものだ。
「ついたぞ。」
既視感のある道のりだったがそのはずだ。
「ここは、ギルドですよね?」
「そっちじゃなく、こっちだよ。」
彼女が進んだ先にあったのは。あの小さな家だった。
扉を開け、聞こえたのは。
カンッ!カンッ!という金属音のようなものだった。
「もう作業中か精が出るな。」
カンッ!と一回音がなり作業していた女性は振り返った。
「あれ、夢幻か。約束の日は十日後じゃあないのかい?」
「相変わらずこの場所から離れないな。そもそも城を新しく建てるとなったとき移動命令が出ているというのに。」
はぁというため息をつき夢幻さんはこの汚れた(いやもしかしたら元からこの色だったのではないかと思うほど着色した)黒色のタンクトップに灰色の汚れのついた赤のショートパンツ、そしてボサボサな短い赤色の髪(これも癖っ毛なのか洗ってないのかはわからない)をゴーグルで目に入らないように抑えている女性を紹介した。
「この汚れた黒色のタンクトップに灰色の汚れのついた赤のショートパンツ、そしてボサボサな短い赤色の髪をゴーグルで目に入らないように抑えている女性が、半田棘。」
以心伝心とはこのことか。ありがたい説明口調だ。
「まぁ、棘でいいよ。よろしく。」
棘はそう無愛想につぶやき、作業に戻ってしまった。
「私生活はだらしないが、仕事は一級品だ。私の刀もこいつにうってもらった。」
「もしかして、私の刀ですか?」
「その通り。何だが、まぁこの一本が終わるまで待とう。」
刀を作るのにどれくらい掛かるか正確に知らないが、かなり早く棘は作業を終えた。
「駄目だこりゃ。途中手を放したせいだよ。」
「約束をすっぽかしたせいだ。」
この人はなんというか、独特な人が知り合いに多いのだな。強く生きてほしい。
「何だっけ?その娘の刀うってあげればいいんだっけ?」
約束の内容は覚えていたようだ。
「じゃあはい。出すもん出しなさい。」
夢幻さんはおそらく金が入っている袋を手渡し。何故か私に近づいてきた。
「凜、少し痛いが我慢しろよ。」
「え、何するつも…」
プチッと私の髪を引き抜いた。
痛いは痛いがビビらせないでほしい。
「ほら、これで全てだ。」
「りょ〜かい。」
ふあぁと欠伸をしながら棘はまた作業に戻っていった。
「棘、さんは何故刀を魔法で創ろうとしないのですか?」
「武器を創る魔法は半田家相伝のものなんだが、彼女は私やノートと同じく家を追い出された身なんだ。理由はその相伝が使えないから。」
「なんか、家を追い出された人多くないですが?」
「そりゃあそうだろう。夏の国は春の国で勘当をくらった者たちが作り、今も流れている国だからな。」
あぁそっか。この人はそれ知ってるから私の捜索願いが無いことを悲しそうな顔をしながら伝えてくれたのか。
だとしたら記憶を失う前の私と、家を追い出される前の夢幻さんは春の国で先に出会っていたのかもしれない。
「そういえば、刀をうつのって何日もかかかるような気がするのですが。」
「そこは心配いらない。一からうつのではなく、髪の毛を媒体に既に完成してる刀をその人にあったものへと変化させる。それが彼女の能力の一つだ。」
いった通り、さっきよりも早く棘は帰ってきた。
「終わったよ。」
「あぁ助かる。これからもよろしくな。」
私は刀を受け取り、お礼をした。
「ありがとう」
そこまで言って私は棘に静止された。
「ギルドに入るんでしょ、じゃあお礼を受け取るのは私の刀が君や君の仲間の命を救ったときだよ。過酷で、私はすぐ辞めちゃったけど、頑張って。」
「はい!」
刀を手に入れた。次の課題は入団試験だ。
次からバトル続きです。長ったらしい準備段階に付き合っていた頂いた方、もし今これを読んでくださっているなら。
ありがとうございましたと共にすみませんでした。
江戸時代で例えるなら次からは改革期です。
ちょくちょく出てくるアーくんも登場します。