No.28、いつか見た橫顏
嬉しいものですね。書きたかった物が書けるの。
概念がそれぞれを観測し、神が誕生したことによって生まれた世界。
世界を大きく四等分するのは、4つの巨大な国の国境だ。
人々曰く四季国。
政治の国、春の国
兵士の国、夏の国
平民の国、秋の国
貿易の国、冬の国
有の神春の恩恵を受ける春の国を差し置いて
兵士の国を名乗る夏の国は、その殆どの戦力は革命前、もとい現夏の国国王春間輪回の就任前の騎士団と、革命の首謀者率いる冒険者たちが合併された夏の国防衛団によって賄われていた。
その防衛団もまた、一つのパーティーが大半の戦力を抑えていた。
パーティーの名を五騎。
マナに嫌われた春の国英傑の家系の異端者、灰神楽夢幻
攻撃魔法に嫌われた補助魔法使い、アイシス・ハルマ
補助魔法を諦め最も才能に溢れた魔法使い、ノート・キーパー
不規則に誕生する大怨霊の残滓修羅小路の名を継ぐ呪術式魔法に呪われた少女夜叉小路遥夏
春の国英傑の家系の一つ半田家に生まれたなまくら刀を作り続け、神の眼を移植した半田棘
計5名によって世界一の戦力を誇っていた。
これはその一人灰神楽夢幻に拾われた一人の少女
鈴音の物語
生い茂る草花を通った透き通る風が、
麗らかな日和らしく暖かく熱された土の匂いを運ぶ。
後頭部にはきめ細やかな布と少し硬くも柔らかい感触
頬から顎にかけて何かが触れている。
私は何故ここに居るのだろうか。
思い出せない。
でも、それに焦りは感じない。
何となくわかるんだ。
これらは簡単に思い出せる事だって。
「鈴音。起きたか?」
優しい声。そして聞き慣れた声。
私は初めて聞く筈なのに。
耳を中心に波紋のように浸透して、私の意識は完全に覚醒した。
目を瞑っていたが、木陰に居たお陰でそこまで光を眩しく感じなかった。
「夢幻さん。おはようございます。」
上を見上げると、何度も見てきた長い黒髪がよく似合う
端麗な顔立ちの女性。
灰神楽夢幻の顔があった。
「起きたのなら早くどけ。そろそろ足が痺れそうだ。」
頭を太ももから退かし、前方を見やると
どうやらここは旧鬼の里のようで。
当たりに散らばっている魔石から、つい先程まで
私達が魔獣と戦っていたことが分かる。
私はそのときに気絶したのだろうか。
人類最強とまで言われる夢幻さんがいながら。
という疑問は残るが、今はそれで納得することにした。
「おや。何も理由なく歩いとったら、えらい珍しい状況に遭ってしもたわ。うちもびっくりやで。」
この世界では恐らくこの人しか使わないような話し方、
何か責め立てられるような声音。
私はこの人を知っている。無則真名。
というか少し訛りが混じってるような。
「ん?というか夢幻。その白い娘だれや?うちは見たことないなぁ。」
やっぱり少し違う気がするが、この人に何言っても無駄だろう。
「こいつは鈴音、前に言った私の弟子だ。」
真名は私を見て?話を聞いて?何かに興味を持ったらしく。
少し表情を明るくした。
「ほぉ〜。鈴音ちゃんねぇ。ええ名前しとるなぁ。
綺麗な娘やし、上名有ったりするんか?」
「聞かなくてもお前なら判るだろ。」
「名前は本人から聞きたいんよ。ロマンスが足りんなぁ。」
どちらも淡々と会話をしているが、
無則真名の方がどこか浮ついた話し方をする。
微笑みが混じった無表情をこちらに向け、
「自分、どのくらい覚えてるん?」
自分。一瞬戸惑ったが、どうやら私の事を指すらしい。
只今の私にはそれの答えを持っていない。
無則真名はそれを感じ取り、黙ったまま彼女の輪郭がぼやけていった。
無則真名を認識できなくなってから凡そ10秒後、
夢幻さんは徐ろに立ち上がり、砂埃を払いなから体を起こしたものの座っていた私に手を差し出した。
何故かはわからないが、理性が手を握る事を阻んだが
今の私には関係ないと、過去の自分を無視することにして私たちは夏の国に帰還した。
と思っていた。
「鈴音の奴はどこ行った!!??」
「早くひっ捕らえろー!!」
「お前邪魔すんな!賞金は俺が全て貰う!」
私たち…というか私を見つけた何人もの人々が、聞き取れない罵詈雑言と共に追いかけてきた。
また何故?と思ったが、どうやら理由は明白のようだ。
記憶は定かではないが、私はウィンド、バーンライト、ナイトの三人が所属する文殊というパーティーと共にさっきまで居た旧鬼の里へ来ていたそうだ。
そこでオークの大群に襲われ、転移魔法の魔石で三人を逃がし、自分も後を追おうとしたところ上手く発動しなかったらしく、そこを応援に来た夢幻に助けられた。
という経緯がある。
そうこれは経緯だ。理由ではなく経緯。
「鈴音、今回の件に関してはお前に非はない。
お前たちがオークの大群に勝つのは不可能だ。」
夢幻さんはそう言っているが
恐らく今の私がこの言葉の真意を理解することはできない。
先程これは鈴音の物語と称したが
今改めてここで撤回しよう。
これは世界の八つ当たりを受けた少女が
自分の全てを思い出すための
記憶を取り戻すための物語。
少なくとも今は
鈴音は右手の中指と親指を擦り、鈴の音を奏でる。
「鈴音。」
ちこっと小話のコーナー
二章で暴れてた不破雷同ですが、
相手の名指しを含めた魔法を自分も使うという名指しに
いろんな作品でも猛威を振るいがちな催眠能力。
まだ未熟とはいえ紅蓮やウィンドを圧倒し、凛と余裕を持って渡り合えるフィジカル。
明らかに強キャラムーブかましてた彼ですが
実は五騎の誰にも勝つことはできません。
なんなら一章で凜たちが戦っていたアイスゴーレムにも勝てません。
(アイスゴーレムは氷属性の魔法は基本無効で自分自身は氷属性の魔法しか使えないから。)
彼は筋肉こそありますがこの世界は魔力と筋力がまったく釣り合っていませんし、雷同は魔力の扱いの才能が恐ろしく低いです。
だから部下と通信するときは魔術の一つであるテレパシーではなく、トランシーバーのようなものを使ってますし
作中において彼が使った魔法は名指しだけ。
催眠もあの場に居た円火やカイイ、棘には聞いていません。
何故なら魔法において彼はこの三人より弱いから。
三章と四章での彼の出番はありません。
本当なら読み取って欲しいところではありますが
変なところで考察して本当に気づいて欲しいところに気づいてもらえないと作品のテーマが破綻してしまうので。
それともう一つ。
更新が大分遅れました。
少ないながらも最新話まで見てくれていた方々に謝罪します




