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鈴音  作者: R a bit
皆が忘れた物語
36/57

No.5'、正義も明日から

一章臨界transcendenceNo.23「伽藍堂の」に当たる話です

深々と雪の降る鉛雲を見上げ、俺は刀身に映る自分の顔を見た。

雪が積もったからではない。

間違いなく俺の水色の髪は白色に染まっていた。

瞳も肌も白い。

嗚呼そうか、俺はもう俺では居られないみたいだ。

「絶望した?」

女性にしては低い、でもどこか落ち着く声で

誰かが話しかけてきた。

この人は、そうだ。あの時雷同に抑えられたときの

半田はんだいばら

世界最強のパーティー五騎さつきの一人

なまくら刀を作り続ける鍛冶師。

「私たちは君にお願いが有ってね。それでここに来た。」

ゴーグルでかきあげられた、ボサボサの赤い髪をかきながら半田棘は横へと視線を移す。

私たちというのは、半田棘の他に修羅小路しゅらのこみち遥夏はるかと名乗る女性がいるからだ。

修羅小路遥夏はこちらの顔を見て、何かを察したようだ。

「ああ、なんで、夜叉小路やしゃのこうじじゃ無いのか。って顔、だね。」

途切れ途切れの言葉に、炭のように黒黒とした目元のくま。

時刻は時々刻々と夜へと向かっているが、既に睡魔が襲っているようだ。

「僕は、夜叉小路遥夏の、呪い、だよ。」

夜叉小路家。春の国でかつては呪術師や陰陽師として活躍していた名家。

魔法の発展によって衰退し、急遽作られた呪術式魔法はあまりの難易度に後を継げる者がいなくなってしまった。

しかし、不定期で夜叉小路家には天才が産まれてくる。

その天才に与えられる特別な上名。

修羅小路。

大怨霊、修羅小路聖冥(せいめい)から取られた。

「より正しく言うなら、夜叉小路遥夏の第二人格だね。」

それが、なんだって言うのだろうか。

そんなことよりわ…俺は、ナイトさんとバーンさんを…

助けないと。

「ん?あ々ごめんね。本題に入ろうか。」

半田棘はあの光る眼でもう一度俺を見た。

数秒何か考えていたようだが、おもむろに口を開いた。

「私はね、神の眼を持ってるんだ。」

信仰を受けた神は信者に恩恵を渡す。

その一つが神の目。

確かこの人は、鑑定眼…だったか。

「一般的な神の目じゃないよ、神のまなこ

真実の神トュラーの左眼を移植した。」

本来ならオーバーリアクションで驚く事だ。

神の眼を移植する。

なんたる神への侮辱かと。

「だから私は、見た物や者の真実を見抜く力を持つ。

移植した対価として、聞き手が最も欲しい情報と、話し手の私が最も伝えたい情報を伝えられなくなる代わりにね。」

つまり、この人は自身の能力と対価。という情報より重要なものを掴んでいるという事だ。

只、その状態でお願い。というのも疑問だ。

「凛、端的に言うと君は直ぐこの後に死ぬ。」

冷たい言葉と視線。

でもやはり何も感じ取れない。

それ以上に体が冷たい。

「でもギアスによってじゃない、春間はるま輪回りんねによって、君は処刑される。」

やはり、雷同らいどうが動いたみたいだ。

「それによってーーによって無音が復活し、世界が無に帰す。」

何だ?今のノイズは?

嗚呼成程、今のーの部分が話せない大切な情報なのか。

修羅小路遥夏は半分寝ながら

半田棘は淡々と話し続ける。

できるなら、早くあそこに戻りたい。

それでも体が動かない。

「そうだね。その感じだと自分の体の変化に、然程興味関心は無いみたいだね。じゃあ長話をしようか。」

透き通る虚空を見つめ俺は動く事を諦めた。

「知ってると思うけど、それは君の凛の体じゃない。

第二次魔人戦争によって誕生した原初の魔族の一体

馨鬼きょうきの身体だよ。

授業でやったかな?第三次魔人戦争によって原初の魔族

生鬼りゅうき雹鬼ひょうき鍾鬼しょうきが封印され、馨鬼は戦死した。

同時に秩序の神(ともえ)も概念の消滅目前まで追い詰められていた。

無音が持つ六つの恩恵、六恩が散り散りになったのは知ってる?

その一つの無垢むくによって魔獣が生まれた。

そのうち二つを君が持っている。

もう解ったかな?

今の君は、馨鬼の体に六恩が入り込みその隙間に凛の人格がねじ込まれた状態だ。」

長々とした説明を終え、半田棘は咲っている。

嗤っているのかもしれない。

でも、話を聞いてより一層疑問なのは

何故今それを言ったのか。

半田棘はそれを察したようで再び説明を始めた。

「本当なら私は何もしないで済んだはずなんだけど、

イレギュラーが何重にも重なって今に至るってかんじ。」

「そ…れが、何……か、もんだ…いですか」

乾燥か寒さで感覚を失ったか、もしくは別の要因か

声を絞り出すのも精一杯で

何処からか眠気が襲ってきた。

こちらがもう限界だと悟ったのだろう。

半田棘はその場に座り、何かを握った。

もう感覚がないが、手を握られているみたいだ。

「春の国では星海ほしうみ家が、夏の国では無則なのり家が、秋の国では楸雨天しゅうあまの家が誕生するか栄える。冬の国では雪宮ゆきみや家が衰退する。これは間違いなく起こる。何故なら修羅小路が復活したから。

凜にはこれまで発生したイレギュラーを修正して欲しい。内容は言えないけどね。

あゝでも君には見えていないのか。

示じゃなくて禾の凜にお願い。」

この人は何を言っているんだ?

禾?

「それ、と、ね。あの、二人を、助けたいなら、契約、しよ?」

「契…約?」

「君の、中、に眠る六、恩を、開放、してあげる。」

小指をこちらに差し出してきた。

指切りげんまん。というやつだろうか。

「その代わりに…何をすれば…?」

黒い、暗い眼光の宿らない目で唇が今までになくしっかりと動いていた。

「死刑にかけられて死んでもらう。」

小指がどういう動きをしたのか、最早記す必要はないだろう。


半田棘の力か、修羅小路遥夏の能力か、さっきまでの説明の時間は流れていないに等しいようで

空中に止まっていた雪がまた降り出した。

そっか

こういうことなのか

運命の神フェイトが残したとされる詩。


遥か彼方の夏の国で鈴の音は

無くした幻想をノートにつなぎとめる。

殺めた人たちがまだ退かないかまだ退かないかと

死の灰に頭を垂れる。

夜風は万雷と旋律を輪唱させる。

音は止まらず風雅を極める。

I死するともと光の下でそうそう酔ひもせんと影を踏む。

星の航路に後来を託す。

誰も咎めぬ数多の星達は

時の流れのまにまに天を照らし

あまつさえ作り話の黄泉へと繋がるとは気づかない。

神はやはり我々を見限ったのだ。

真意は戦の下にあり。

瘴気は雷に、氷期は光の柱に、隆起は黄泉に


始まりの騎士は音を抜かれた。

騎士の魂は常に呼ばれ続ける。


決して覆らない定められた結末

運命の神が記したものに

私なりにアレンジでも加えようか。

カチャカチャと腰にさした刀が揺れる。

やっぱり、何処かで見た景色だ。

まだ3歩目であると言うのに、眼前に広がる光景は

右腕を抑えるバーンライトと、魔法陣を展開するナイト

指を振り上げようとするギアス。

そして、血を吐いて倒れ伏すウィンド。

「呼応したのは鈴の音の」

人差し指をギアスの額に起き

「いつか訪れる無音の合唱。」

たった数コンマ、刹那の時間使用しただけで

ギアスは白目を向いて膝をついた。

「凛っ!?」

「何してるの!?早く逃げるよ!!」

転移の魔法は素質がなければ使用は不可能。

それでもこれが未来からの贈り物だろうか。

何故かは今の私には凛を捨てきれずに居る私にはわからないが、ここ延々雪林から夏の国の手前につながる転移魔法の痕跡がある。

「鈴音。」

親指と中指を擦り音を響かせる。

上手くいったみたいだ。

数分すればナイトとバーンライトは門番に発見されるだろう。

私は刀を抜いて刀身に映る自分の顔を見た。

水色が少し混じっている。

わかってるさ、決着は俺がつける。

「起きろよギアス。次は俺の番だ。」

「調子に乗るなよ愚かなる者よ。」

ギアスは服についた雪を払い、立ち上がった。

「お前、二年前に光璃こうりを魔族に変えたのは覚えているか?」

理由はない。只聞きたかっただけだ。

こんな外道でも殺めた命くらいは覚えているのかと。

「なんだ?貴様は復讐にきたのか?」

復讐…違うな。

多分俺はそんな大義名分を背負ってここに立っていない。

「申し訳ないが、余も友との誓いがあるのだ。」

「死ぬのは俺とお前だけで良かった。」

「「ここで死んでくれ。」」

最速で刀を首へと振り切りギアスの首を飛ばす。

したはいいものの、やはり直ぐもとに戻ってしまった。

影牢かげろう。」

影が鉄格子のように飛び出し、行く手を阻む。

時間稼ぎか。

黒転クロール〉引〈。」

右手の人差し指に闇が集まる。

古典的な。

叢咲むらさき。」

ギアスもろとも周囲を吹き飛ばす紫の炎。

しかしどうやらもとに戻るらしく、ギアスの黒転の邪魔にはならなかった。

黒転クロール〈発〉。」

渦巻く闇が宇宙の膨張のように広がり辺りを巻き込みながら発散される。

目を開けるともう周囲には削り取られた地面しか残っていなかった。

「馬鹿な!?」

疾風の太刀(はやてのたち)。」

空を駆ける斬撃がギアスの左腕を飛ばした。

「…!?」

そのままギアスを突き飛ばし、馬乗りになって刀で首を押さえつける。

「何故、核が左腕にあると解った?」

「別に居合を使えば魔力の流れくらい見える。」

人間が魔法を使う時、魔力回路を通る必要がある。

魔族は身体そのものが魔力回路であるが、魔力が形を保つための核が存在し、魔力は大方そこに集まる。

「なんでこんな事したんだ?」

友との誓い。

例外個体のこいつに友人が居るとは思えない。

魔力爆発マナ・エクスプロージョン。」

急いで後ろに飛んだが、失敗だった。

流石にギアスほどの魔族の魔力爆発は洒落にならないと思い避けたが

まんまとやられた。

ギアスは左腕を小規模の魔力爆発で自身の方に飛ばし、くっつけた。

ギアスの名指し自体をどうにかしないと。

「飛べぬ鳥と木を這う彪

青嵐が運ぶ五月雨

赤き花と青き隣草

されどつかめぬ五センチの隙間」

長ったらしい詠唱。

あちらはこれで決着をつけるつもりのようだ。

その間俺はどうしようか。

夢幻の太刀の新しい名前を決めようか。

空気を切り、真空を作ることで魔法を切る斬撃。

夢幻こそがふさわしいと思ったが。

「行くぞ!愚かなる者よ!」

ギアスは詠唱を終わらせたようだ。

以前までの俺なら、この濃度の魔力を感じただけで気絶するだろう。

犠牲を伴う明日ディヴォー・トゥ・モロー!」

よし。決めた。

虚の太刀(からのたち)。」

鞘から走り抜けた刃が空を裂き、更にその真空の隙間を上から振り下ろし、魔力の塊と魔法陣ごとギアスを当に一刀両断した。

魔族故に血は吹き出ないし死体は残らない。

だから俺が覚えておこう。

ギアス。お前は

「何故、余のギアスを突破できた?」

消えゆく身体を見つめながら、ギアスはそう問いかけてきた。

「刃で真空を作った。それだけだ。」

「素晴らしい。其方の手によった葬られた事」

俺はギアスに背を向けそのまま歩き出した。

「もう聞いたよ。」

鈴の音はもう聞こえない。

いよいよ次書き終われば(というかNo.6は目茶苦茶短い予定)ずっと書きたかった三章に移れます。

度々警告してますがもし二章皆が忘れた物語から見てまだ一章見てないって人は三章に行く前になんとなく適当に一章読んでください。

あと同時並行で君のソナタって作品も書いてるので

興味があったら見てみてください。

不定期ですが今後ともよろしくおねがいします。

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