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鈴音  作者: R a bit
皆が忘れた物語
32/57

No.3、泡沫といざこざ

やっと書きたかった事がかける事に喜んでいる限りです。

「元に戻ってる。」

朝起きると、俺の身体は元の男の物に戻っていた。

只水面に映る俺の髪は、やはり白が増していた。

白色化現象。

老化によって魔力が弱まる兆候。

俺の魔力は氷属性の為、本来なら水色だった。

俺の身体があの少女のものに変わったのも、何か理由があるのだろうか。

考えても考えても分からない。

「今の俺は本当に俺なんだろうか…」

「その症状が出るには二年遅かったな。」

顔に息がかかり、聞き慣れた声が俺の思考を掻き消していく。

「夢幻さん。おはようございます。」

「ああ、おはよう。因みにもう二百回目だが、休憩しなくていのか?」

え?

上を見やると、そこには体長を大きく上回る岩とそれを打ち付ける大量の水からなる水飛沫。

どうやら俺は知らない間にいつもの筋トレをしていたようだ。


家に戻り夢幻さんと朝食を食べていると、何やら前にもあった展開になっていた。

「そうだ凛、今日アイシスとノートが帰ってくるそうだ。」

「そうなんですか。じゃあまた二人に稽古つけて貰えるわけだ。」

アイシス・ハルマは俺の魔術と補助魔法の師匠。

ノート・キーパーは俺の攻撃魔法の師匠である。

その上文殊もんじゅ、バーンさん、ナイトさん、ウィンドさん達の師匠でもある。

紅蓮ぐれんにも紹介したいな。

「あ、もうそろそろ時間ですね。行ってきます。」

「…あぁ。」

少し暗いその顔と声から、俺は違和感を覚えるべきだったんだろう。

敢えてネタバレをすると、次に俺が帰ってくるのは

凡そ10ヶ月後の話である。


「凛、おい凛。約束の時間に遅れるぞ!」

「ん?あぁ。そうだったけ。」

ぼやけた視界で外を見やると、もう日は南天を遥かに通り過ぎていた。

最近学園にいる間の記憶が無い。

家を出てからの記憶も消えている。

そうだ、確かアイシスさんとノートさんが帰ってきたから紅蓮に紹介しようとして…

「このままだと約束の時間に遅れるじゃんっ!?」

「だからそう言ってるだろ!?早くしろ!」

急いで俺達は俺の家の近くに広がる草原へ向かった。


「凛。時間ギリギリだぞ。」

「リンリン久しぶり〜!そっちの赤い子は?」

灰色の寝癖のようにはねた髪を後ろで結んだ痩せ型の男性と

金髪を熊の耳の様にしてまとめたローブにショートパンツの格好の快活な女性、アイシス・ハルマとノート・キーパーが立っていた。

「すみません。少しボーっとしてました。

あ!こいつが編入生のはい…」

そういえば、夢幻さんは灰頭はいのこうべという上名は名乗るべきではない。と言っていたな。

「灰頭紅蓮だ!宜しく。」

そんな俺の葛藤と推敲は知らぬと紅蓮は元気よく挨拶した。

「アイシス・ハルマだ。」

「ノート・キーパーだよ!紅蓮だからグレグレだね!」

「グレグレ…?」

相変わらずノートさんのネーミングセンスは壊滅的だな…

「というか、案外緊張しないんだな。」

ノートさんだけでもアイシスさんは手を焼いているが、

紅蓮が混じってより面倒になりそうだ。

まぁ、それはそれで俺としては一安心だ。

「緊張?俺が人見知りするタイプだと思うか?」

いや、人見知りというか。

てっきり俺は紅蓮が五騎さつきに最大限の憧れを抱いていると思っていた。

「憧れの五騎に出会ったら流石に緊張するのかなって思っただけだよ。」

「え?」

コンマ数秒で紅蓮の絶叫が轟いた。


「意外だな。まさか五騎の名前と顔を知らないとは。」

俺の声は紅蓮には届いていないらしく、

何かブツブツ言いながらうずくまっている。

「とりあえず。折角の機会なんだ。稽古つけてもらおうぜ。」

「お、おう!ややややってやる!」

意気込み凛と紅蓮に対し、アイシスは冷酷にこう告げた。

「言い忘れていたが、俺は紅蓮が魔力の逆流ができるようになるまで、魔術を教えるつもりは無い。」

その言葉を聞き、紅蓮はいつも以上に神妙な面持ちに成り、

「魔力の…逆流…ってなんだ?」

「知らんのかよ!?」

まぁ…当然といえば当然か。

魔力の逆流は治療ヒールを使う人ぐらいでなければ知らないのが普通か。

「というか、お前魔酔知ってるならわかるんじゃないか?」

魔酔もやっている事は同じだ。

「いや、そう言うのは相手の魔力回路を逆走するわけだろ?

逆流って事は自分の魔力回路を逆走するって事のはずだ。」

これは驚いた。

知識はなくても理解はしているのか。

「それと凛。お前は今から俺と脳トロと模擬戦だ。当然だが、紅蓮に教えるのは禁止だ。」


一時間後

「あぁーーーー!!!!出来ねぇー!!!」

紅蓮は魔力の逆流に苦戦しているようだ。

因みに今は途中から来た文殊の人達が修行中だ。

「苦戦してるな。」

「凛…なぁ何となくでいいからヒント無いか?」

うぅん。多分アイシスさんはお前に時間をかけたくない。

みたいなニュアンスで言ってそうなんだよな。

実のところ、俺の知る限り五騎を含めても魔力の逆流ができるのは、発案者の俺と最初の成功者であるアイシスさんだけだ。

とてもじゃないが紅蓮にできるとは思わない。

恐らく、アイシスさんなりの気遣いなんだろうな。

「じゃあ紅蓮。代わりに一つ新しい技を教えよう。」

「新しい技?悪いが俺は名指し以外は出来ねぇぞ。」

「問題ない。ちょっと見とけ。」

俺は凡そ10メートル先にある岩を見やり、

右手の親指と人差し指を立て、銃の形を作る。

火縄銃バレッド。」

右腕が赤く光り人差し指から炎の弾丸が飛び出す。

岩に当たった炎は爆発的に広がり粉々に岩を砕いた。

「いや、そりゃあ氷属性の凛が精度の高い火属性の火縄銃を使えるのはすげぇけど、それはお前の技量だろ?」

「まぁまぁ、少し見てろって。」

右手はさっきと同様に、左手の掌を右腕の肘の裏に当てる。

火縄銃バレッド・風。」

先程よりも疾く炎の弾丸は飛んでいき、着弾した途端炎の渦が生まれた。

「風属性の魔力…すげぇな。」

紅蓮は驚きをむき出しにして赤い光を眺める。

当然だろう。三属性の魔力を持つというのは、それだけで昔は神の子として崇められる程の才能だ。

「魔力回路の延長の応用だよ。指の形を変えて属性を切り替えてる。」

「でも、それをどうしろってんだ?」

「これから使うんだよ。」

(諸事情により、この先の話は一時省略とする。)


帰ってくると既にバーンライトとナイトは倒れており、ノートは仮眠を取っていた。

「んにゃ?あぁ!リンリン、グレグレおかえり。」

「すみません。大分時間をかけてしまいました。」

白色の太陽は現在茜色に移り変わっていた。

「まぁ雷同との契約があるもんね。戦力の補充は大事だよ。」

今思えば寝ぼけているノートさん。という何を言い出すのかも分からない危険人物に、俺は声をかけるべきでは無かったのだろう。

「学年末まで時間もないし…」

「ノート!」

ノートさんが普段何をしても冷静に対処していたアイシスさんも、今回ばかりは声を荒げている。

紅蓮の顔つきが傾いた陽のせいか影がかかり、何かおどろおどろしい物を感じた。

「なぁ…凛。雷同との契約で戦力が必要って、どういう意味だ?雷同の目的は、別にお前と戦うってわけじゃないだろ?」

声音の変わった紅蓮の言葉は、間違いなく疑問形であり、クエスチョンマークがついていた筈なのに、何故かエクスクラメーションマークの様な、大きな威圧感があった。

「いや、別に…」

「言えよ。仲間だろ?」

言える訳が無かった。

それは強さを追い求める紅蓮にとって、

誰よりも強くありたいと願う紅蓮にとって、

俺と友人で居たいと願う紅蓮にとって、

仲間思いな紅蓮にとって、

裏切りに近い物だから。

「学年末試験で、俺と雷同は決闘を行う事になってる。」

ただ、言わないという選択肢もまた、紅蓮への裏切りなのだ。

「最初に雷同に狙われた、氷璃ひょうりから標的をずらす為に…一年前に結んだ契約だ。」

「それだけじゃねぇだろ?」

唇噛み、手を握って紅蓮は俺に問いかける。

「ウィンドさんが雷同から離れるための…決闘でもある。」

四年前、高等部に成ったウィンドは雷同に絡まれ、癇癪持ちの彼は雷同と一線交える事になった。

敗北したウィンドはその後雷同と簡易的な奴隷契約を結んでいる。

いわば、氷璃とウィンドを自由にする為に、凛は雷同との決闘を行う事になっていた。

「なんでそれ…俺に言ってないんだよ?」

「それは…」

「足手まといだって!そう言いたいのか!?」

紅蓮の怒号が空気をビリビリと震えさせる。

「違う…これは俺と文殊の三人の問題だから…」

「アイシスが俺にあの課題出したのも、俺に関係ないことさせて課題の達成を完全に不可能にさせようとしたのも!そんなもん!戦力外通告以外の、何でもないだろ!?」

当たり一帯がいつも以上に静まり返り、

紅蓮の粗くなった息遣いと俺の早まる鼓動が、耳もとに煩わしく木霊する。

「俺…帰るわ。」

紅蓮はそう呟き、夕日と反対方向へと足を進める。

俺はその茜色に染まる後ろ姿を眺める事しか出来なかった。

立ち止まった時間は十秒に満たない筈なのに、まるで一時間たったようだ。

灰頭はいのこうべとは、剣術に長けた灰神楽はいかぐら家から廃刀を命じられた者につけられる蔑称だ。灰頭はいとう廃刀はいとうくだらない言葉遊びだな。」

アイシスさんはこう言えば紅蓮が何故あそこまで怒るかわかるだろ。と言わんばかりにこちらを見やる。

紅蓮も、春の国にいた頃は迫害の対象だったのだろう。

「俺…行ってきます。」

夜へと片足を入れた夏の国の首都へ、俺もまた足を踏み入れた。


暫く経つと、俺の家から学園へと続く普段通る通学路に出た。

何度も通ったこの道の路地裏。

国王、春間はるま輪廻りんねに命じられ、再びこの学園の入学試験に赴いた日。

俺は一人の少女と出会った。

髪も肌も目も白く、体中にできた紫がより痛々しく見えるそんな少女だった。

あのとき、俺が何をしたのかは覚えていない。

いや、その時から俺の記憶は所々その日の内に消えていた。

思えば怪しむべきだった。

俺の髪色がいきなり白くなった事に。

急激に増加した魔力量に。

夢だと思っていたが、あの少女の見た目そっくりに一度変わった事に。

いや、代わった事に。

件の路地裏の入口についた時、俺が見た光景は

とても信じがたいものだった。

ゴミのように乱雑に倒れた、()()()()がそこにあった。

どこかでまた風鈴が鳴った。

少し語らせていただきます。

今日この作品がどのくらい読まれているのかを初めて知ったわけですが、思っていたよりいたんですよね。

(てっきり零だと思ってた。)

まぁここまで読む人が何人居るかなんてわかりませんが、

一応弁明を、このあと(掲載する時間ではなく2024/04/14午後5時14分の事)直ぐNo.7の所に書く予定ですが、

この作品本当になろうに向いてなくて

序盤が信じられない程つまらないんですよ。

何十個と伏線をしこむ必要がありまして…

そもこの作品のテーマが読み返す楽しみなんですよね。

どの章でも物語としては完結するけど

作品としては完結しない。みたいな物を目指していまして。

だからもし二章「皆が忘れた物語」から読んでる人が今これを読んだとしたら、一章は適当に読んでもらって大丈夫です。三章と四章を読む前に適当に読んで、三章と四章が終わり次第じっくり読んで欲しいです。

読み方で文の価値や意味が変わる感覚を楽しんでいただけたら幸いです。

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