No.12凛として
深夜テンション。以上です。
ここまで見てくれるひとがどれくらいいるか知りませんが。
「じゃあまずは第一段階、魔術からやろうか。」
まるで新しい玩具を買ってもらった子どものようなテンションだ。というか実際にそう思っているに違いない。ここ三日間で分からないなりに理解しようとしたせいで何度「だろう」といっただろうか。少なくともまた一つカウンターが回った。そんな私ですら断言できる。この人は楽しんでいる。
「よ〜しよしよし、まずは魔力を練ろうか。」
何故に動物と触れ合っているような声を出すのだろうか。
「魔力ですか、さっき知ったばかりなのでやり方がわからないのですが。」
「そんな難しいことじゃないよ、人間誰しも無意識に魔力を練るんだ。主に呼吸するときだね。へその下あたりに手を置いて深呼吸をして。血と酸素以外に体に巡るものを感じてはい、吸って〜吸って〜吐いて〜。」
ラマーズ法!?この人は何かボケないと死ぬのだろうか。
正直魔力が体に流れてるなんて全くわからない。
「あの、本当にこれでわかるのですか?」
「んや、分からないよ。」
当然のように意味不明な発言はしないでほしい。
「じゃあ何故こんな事を?」
「ふっふっふっ、これは魔法に対する適正を図る方法なのだよ。体に魔力が流れる感覚がするっていうのは、体が魔力を自然に受け入れられてないってことなのだよ。」
おそらく本に書いてあったのだろう、かなり得意げだ。
(って本に書いてあった。)
(コイツ!直接脳内に!?)
「ちなみに今のテレパシーは魔術だよ。」
「その前に魔力の錬り方を教えてください。」
思ったよりノートさんは教えるのが上手かった。
これにも驚いたが、深呼吸自体は間違っていないらしい。その時に意識を頭ではなく全身に張り巡らせる必要があるそうだ。
「うんうん、良い感じだね。じゃあ仕上げだ。錬丹と言うだけだよ。」
ふぅ〜と大きく深呼吸し私は初めて詠唱をするのだった。
「錬丹っ!」
結果から言うと、爆発した。
ノートさんいわく、魔力爆発というらしい。魔力の器の飽和魔力量を超える魔力を錬ると留まる場所を失った魔力は爆発して外に出ていくそうだ。
「まぁ最初はこんなもんだよ。それより魔力を錬る感覚と巡る感覚はわかったかな?」
「ケホッケホッ。ええ…痛いほど。」
「じゃあ次はその魔力を外に流そう。」
「そんなトントン拍子でできることなんですか?」
「人によるんじゃない?私は一回でできたし。あぁでもアーくんは結構時間がかったらしいよ。三ヶ月くらい?」
「たしか初めて会ったときにも言ってたと思いますが、アーくんとは誰ですか?」
「ん〜まぁギルド入ったら嫌でも会うんじゃない?ほらそんなことより修行に戻るよ。」
二時間後
「はぁはぁはぁ、これ結構難しい…」
魔力に反応する魔道具に杖を使って魔力を流し込む訓練をしているがそれだけなのにかなり難しい。なかなか魔力が体を離れようとしないのだ。
「苦戦してるねぇ、存分に悩み給え、少年よ。そうだね、少し良いことを教えてあげよう。魔力には魔力有効範囲があるんだ。その中でなら魔力は流れるよ、でも急に物体に魔力が宿るわけじゃない。あ、あと魔力を流すときの詠唱は
「流転」以上。」
要は周りの空間も自分の体の一部と思えという事だ。
「空間にも魔力を流れるイメージを。」
大きく息を吸って連続で唱える。
「錬丹」意識を空間から魔道具へと流す「流転!」
今度は今までとは違い白い靄のようなものが見えた。
ビービービーと魔道具が音を鳴らす。
「やったねもしかして私、アドバイスの天才だったり。」
「せめてこっちを褒めてください。」
「さぁ〜次にいこうか。」
この人酷くマイペースだ。
「簡単な魔法からにしようか。まずは名指しだね。」
「名指し?」
また聞いたことない言葉だ。
「名は体を表す。の通り、私達の名前は基本的に神から授かるものなんだけど、その名前も一つの術式化された神秘なんだ。手本を見せてあげよう。」
そう言って彼女は手のひらを上に向けてこうつぶやいた。
「我が名をもって神秘とせん、八百万に混じりし恩恵、万象よ集え、ノート!」
そう言った直後彼女の手には一冊の本が乗っていた。
「こんな感じ、詠唱と効果は神の啓示があるから安心してね。」
私の凜という名前は本名ではないのだが、一応やってみるか
「我が名をもって神秘とせん、八百万に混じりし恩恵、万物よ燃えよ、燐。」
無意識だった。その魔法はさっきの魔道具にかけまた音を鳴らそうとしたとき、設置していた地面に火がついた。
「嘘…」
「おぉ飲み込みが早いね。」
ノートさんは対象的な反応を見せている。そんなはずはないがもしやだ。
私の本名と夢幻さんがつけた名前が同じだった。あの人は私のことを知っていたのか?ならば鈴音は誰なんだ?
無の境地