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鈴音  作者: R a bit
皆が忘れた物語
25/57

No.1、臨界突破

1話ですが個人的にはNo.7から読むことを推奨します。

当然ですがここから読んだほうがわかりやすい。

強風に煽られ鳴り続ける鈴の音によって俺の睡眠欲は解消された。

いつもより少し早いな。五時半くらいだろうか。

時計の針は寝ぼけた目では捉えきれず靄がかかっている。

「痛っ」

身体を起こそうとベッドについた手がズキンと痛む。

手には赤く染まった包帯が巻かれていた。

怪我という程ではない。

木刀の素振りを何年も続けた結果手に無数のまめが出来た。それでもやめなかった故に定期的にちまめが潰れる。

今日は指立てにしておこう。そんな事を考えていると、朝霧は晴れ遠くに朝日で光る雪を被った山が望めた。

木々はざわめき湖面には波が揺らめく。

今日も気持ちのいい朝だ。

夏の国の中でもこの場所は秋の国に近い為、国内ではかなり涼しい。

空気を吸い込むと陽に焼かれ始めた大地の匂いがする。

「よっと。」

二階の窓から飛び降りて俺はいつもの場所に向かう。

足を進めると水が大量に流れる音が近づく。

「おはよう、師匠。今日も五月蝿ぇな。」

ドドドと自然の力強さを見せつけるように轟音を轟かせる滝に向かって俺は挨拶を済ます。

近くの一本だけ生えている木の根本を見ると

いつも通りそこにはボロボロになった木刀が転がっている。

今日は使うことはできないがな。

いつもなら真っ先に木刀を拾うが今回は滝壺にある、横に自分が三人並べそうなほど大きな岩へと向かう。

流れに長年身を晒していてもこの岩はまるで少しも形を変えていない。この岩を見上げずに済む日は恐らく俺が生きている間には訪れないだろう。

「フンッ!」

そんな岩を持ち上げそのまま少し上に投げる。

小さい影は直ぐに大きくなり俺はそのまま十本の指で支え、一秒毎に一回スクワットをする。

岩と大量の流れる水によって体は地面へと押される。

二、三年間この修行モーニングルーティンをしているが未だにこれを300回、つまり五分続けることができない。

一分経つと体は新しい滝を作り始める。

膝から下が生まれたての子鹿のようになっている。

「289、290、291、292、」

指の骨が折れそうだ。

「298、299、」

あと一回だ、これができれば昨日の自分より強くなったと自分を認められる。

「さんびゃ」

「凛!」

「うわぁ!」

ザパァーンと水面に高密度の物体が叩きつけられ飛沫を上げる。

ちくしょう。あと少しで目標達成だったと言うのにぃ。

誰だ?いや声で分かっていはいるが。

「あんたまぁた家抜け出して無理な事して!お母さんの胃に何個穴を開けるつもりだい!」

「うるせぇ!いつまで子供扱いするつもりだ後期高齢者!」

「あたしはまだピッチピチの三十九歳よ!」

「何がだよ!砂漠といい勝負だ!」

相変わらず母親が口うるさい。

「そんな事より凛、あんた今日は入学式だろ?早く準備しなさい。」

「はいはい、分かってますよだ。」

ジャブジャブとあえて泳いで火照った体を冷やす。

風邪引くよ。と母親の心配を他所に俺は体を拭かずに家に帰った。


「良いじゃない、結構似合ってるわよ。」

朝食を食べ終え俺は制服に袖を通した。サイズ確認を含めて二回目だ。

「じゃあ母さん、行ってきます。」

「えぇ、行ってらっしゃい。」

ドアに取り付けられたベルがリンと心地の良い音を鳴らした

今日から夏の国国立魔導学園、その高等部の生徒としての日常が始まる。

草木が今の俺の心を映し出すようにざわめく。

眩い日光を掌越しに眺め赤く灯る生きている証を見つめる。

「今度こそ、上手くやるさ。」

そうだ、もうあんな失態はしない。

俺は平穏な日常を送るんだ!


って、「ついさっきそう意気込んだじゃねぇかよ!!!」

俺の叫び声に遠巻きに眺めていた生徒達が畏怖を帯びた目で見つめる。懐かしいな、二度と味わいたくねぇ。

少し後ろから教師が般若を思わせる表情で近づいてくる。

その中に一際明るい燃えるような髪のキラキラと目を輝かせる生徒がいた。

「すげぇなお前!今何したんだ?魔法陣が見えなかった!」

話は数分前に遡る。


何時までも緑に染まる木々を通り抜け、夏の国の国王

春間(はるま)輪回(りんね)の住む水無月城が位置する国内有数の都市へと出ると、そこには既に何十人もの制服をきた人々がいた。

中には初等部や中等部での有名人もいる。

見たことの有る顔が大半で、忘れたい顔も大半だった。

何度も歩いた道、その途中で裏路地に目を配ることになんて

大した意味は無いはずだった。

リン。

はっと裏路地を二度見する。

名前を呼ばれた気がした。

しかし、目の前にはジメジメした道が続くだけでそこには誰も居ない。

「気の所為か…」

その時の俺は気づいていなかった、自分の変化を。

鏡でも見ない限り、自分の姿を一番知らないのは自分なのだと、俺は思い知ることになる。

「あ、殺人鬼じゃん!なんだよまだ捕まってないのか?」

小太りの男性の生徒が俺に話しかける。

中等部でよく見た顔だ、名前は確か…なんだっけな?

二年と半年前から友達ではなくなった人。

それ以外の記憶はもう忘れてしまった。

いや、元から然程興味なかったのかもな。

「うわ、あいつ試験受かったのかよ。」

「よくのうのうと外歩けるよね。」

「悪びれるつもりもないみたい…」

「次こそ誰か殺すよ、あの目は。」

「やめてやれよ、ストレスで一部白髪になってるぜ。」

「「「ハハハハハ!!!!」」」

ノイズ、ノイズ、ノイズ、こんなDays。

いかんいかん、謎の歌詞を作ってしまった。

(既に誰か書いてたらごめん。)

まぁこの程度の悪口ならもう慣れたな。

「あいつ殺しても誰も文句ねぇだろ。」

「それは草www」

草に草を生やすな。

「編入生にも注意喚起しねぇとな(笑)。」

一人少し前の世代がいるな、時代遅れめ。

「いい加減自分が悪いって認めれば良いのに。」

「MUSHA×KUSHAしてやったんだろ。」

お前の人生休載にしてやろうか?

(バンドの方だよ。)

こいつ直接脳内に!?

ん?今のやつ女だったっけな?

「おい、何時まで俺のこと無視すんだ!?」

脳内ツッコミを遮ったのはさっき話しかけてきた小太りの男だった。

「あぁ、いや、なに?」

「曖昧な返事しやがって。俺を誰だと思ってる!」

「面倒くさい奴。」

「名前聞いてんだよ!!」

いちいちうるさいやつだ、ちょこちょこ変なこと言ってるし。

「勉強のし過ぎか?黒鉛の匂いするぞ。」

「こいつっ!」

みるみる相手の顔が赤く染まる。

そういえば、家の鍵閉めたっけな?

「あ?さっきからなんだよ?お前に聞いてねぇ。」

苛立ちを隠せず声に出してしまった。

この三年弱で随分嫌な性格になってしまったものだ。

未だ誰も味方してくれないのもこれが原因だろうな。

「何言ってんだ一人で?気持ち悪い…」

気味悪がって小太りの男は先に前に行ってしまった。

(あーあ、また一人突き放した。)


少し歩くと目の前に見たことのない赤髪の男と俺に対して執拗にちょっかいかけてくるグループがいた。

「お、噂をすれば何とやらだな。」

紫のトゲトゲした髪が特徴的なグループのリーダーが話しかけてくる。

正直こいつ等は嫌いだ。

「なぁ、恥ずかしくないのか?あんなことしてよ?」

久しぶりの登校、とはいえ数週間の長期休みだった。

それだけでこの人達はストレスを溜め、それを俺にぶつける。

こんな生きづらかったっけな?

「で、何だっけ?噂をすれば?」

「影が差すだよ。勉強しろ〜。」

ワイワイ楽しそうに会話をする四人のグループ。

見たことのない生徒は呆然としている。

「まぁでもお前には、」

キラッとポケットが光った。

「コイツを刺すけどな!?」

バタフライナイフ、痛いな。いや物理的じゃなくて。

「設置型条件魔法、燐。」

ナイフが俺の制服に当たった瞬間、制服というより、紫髪の男が発火した。

「ギャアアアアアアアア!!!!!」

「うわっ!やりやがった!」

「くぁwせdrftgyふじこlp」

声にならない叫びを上げ苦しんでいる。

「解除」

フッと炎が消え男は息を荒げながらいまだ苦しんでいた。

「正当防衛だろ、文句言うな。」

「畜生!remember me!」

それは映画だ。いや「覚えてろ」も充分映画みたいだな。

そして今に至る。


「自己紹介が遅れたな!俺は紅蓮ぐれん灰頭はいのこうべ紅蓮だ!」

心臓の部分に親指を当て紅蓮は自己紹介を始めた。

元気良いやつだな。

「そうか、元気でな。」

歩き出そうとすると紅蓮に腕を捕まれてしまった。

「ちょっと待てよ!せめて名前だけでも。」

それはナンパだろ。

「…ん」

「あ?なんて?」

りんだ。お前みたいな大層な上名は無ぇ。」

パァァアと表情が晴れる音が聞こえるようだ。

「宜しくな、凛!俺編入生だけど、最初の友達がお前で嬉しいよ!」

肩を組もうとした腕を払い、俺は最低な事を口にする。

でも、きっとこいつも彼奴等と同じ人間だ。

「今日の天気は晴れのち曇り、俺の場所だけ雨が降るでしょう。」

「ん?なんだ急に?」

無邪気に首を傾げる顔が無性に気持ち悪く感じる。

「スタートダッシュを間違えたくなければ俺に近づくなって話だ。」

今日から、今日もまた、

俺の学園生活(生き地獄)の始まりだ。

いまだ知らない、俺も知らない。

まさに神のみぞ知る世界の終着点を

ただひたすら運命に抗う物語の、今はきっとプロローグ。

ということで、唐突ですが次回予告のコーナー!

凛「「」つけろよ、紅蓮。語り手に間違われるぞ。」

紅蓮「まぁなんと言うか、後書きに書くこと無くなりそうだからしばらくこんな感じらしいぜ。」

凛「だとしても今の関係性だと気まずいだろ。」

夢幻「二人共少しメタ発言多くないか?」

凛「すみません夢幻さん、貴女出番まだです。」

紅蓮「余談ですが、凛のお母さんは未亡人で四十一歳!少し鯖読んでます。」

凛の母「因みにスリーサイズは…」

凛「次回!No.1'熱血漢。はい、解散!」

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