No.21、場案Ride On
今回少し細かい設定が出ますが忘れて構いません。
「うぅ…頭痛い…」
「バーン、ごめんとょっとあっちで吐いてくる…」
「ありゃ重症だな。」
昨日飲みすぎたせいでパーティメンバーの二分の一が既に戦闘不能になっている。
「はぁ、なぁ凜。たしかお前居合できるんだよな?索敵頼んでいいか?」
「はい、分かりました。」
私は試験のときと同じように意識を低空飛行させる。
魔力を流すときどんなものでも媒体が必要になる。
ノートさんとウィンドさんは本。
バーンさんや綾命私は剣や刀
ナイトさんは右の人差し指に付けている指輪を媒体にしている。
魔術でもそれは同じでほんとんどの場合はその人の身体自体を媒体としている。
その中でも居合はかなり特殊なもので、魔力有効範囲という本来目に見えない(鑑定や魔力探知を使えばわかる)空間を媒体にしている魔術だ。動くと乱れやすくなる、居合によって曲げられた魔力有効範囲では正しく魔法が使えない。
等の弱点があるがON/OFFを使いこなせれば暗闇でも普段通りに戦うこととできる。そのため使える人も多くはない。
私は索敵の結果を伝えた。
「バーンさん、ここから1〜2km程で視界の開けた草原に出ますがそれまでに何体か魔物がいるみたいです。」
現在の状況はウィンドさんとナイトさんが戦闘不能でバーンさんはその二人を担いでいるため必然的に戦闘に参加できない。
「数が分かりました、二体居ます。」
「種類は?」
「餓狼ですね。」
餓狼、三年前私を襲った魔物。スピードと硬い牙による攻撃力が強く一体ではEランクほどだが仲間意識が強く複数体ではCランク相当になる。
「餓狼二体か。凜、いけるか?」
「大丈夫です。」
私は足に魔力を溜め始めた。
「最高速で行きましょう。」
挑発するように少し笑みを浮かべながらそう伝え、意図を汲んでくれたのかバーンさんも足に魔力を溜める。
「「よーい、ドン!」」
ドン!と言葉と同時に地面に衝撃が轟く。
600mを36秒程で走り抜ける。
「そろそろ餓狼が居ます。」
「よし、頼んだぞ凜!」
私はそのまま跳躍し等速直線運動を行う。
体をほぼ地面に水平に倒しながら落下し、
「舞十技一番鳥の舞、飛燕!」
さっきと違いドン!と衝撃が響く頃には私は10m以上先に進んでいた。
燕のように低空飛行しながら居合を展開する。
「見えた!」
ザシュッと一体の首を切り落とすことに成功した。
頭を守り転がりながら減速する。
居合でも目でも二体目が見えない。
「バーンさん!もう一体がどこかに居ます、気をつけてください!」
バーンさんは二人を抱え全力疾走しながらこちらに向かっている。
しかし突如その上から黒い影が落ちてきた。
「しまっ」
二人に当たらないように腕を前に突き出し餓狼の牙を背中で受け止めバーンさんの上に餓狼が乗る形になった。
「痛っ!」
服を貫通して水鉄砲のように血が吹き出すその瞬間、餓狼の体は炎に包まれた。
「設置型条件魔法、燐。」
キャインキャイン鳴きながら火を消そうと体を地面に擦り転がっていく。
「せめて楽に送ってあげよう。舞十技三番風の舞、青嵐・薫。」
私は音も無く刀振り抜き切り離された首から遅れて血が吹き出した。
「バーンさん!大丈夫ですか?」
「問題ねぇ、止血は出来た。」
出血はあまりしていないが走ると貧血になるかもしれない。
速歩きで進むことにしよう。
その後は何事もなく夏の国に帰還することができた。
「身分を証明できるものを見せてください。」
私は自分とナイトさんのギルドカード(入団すると貰える)
バーンさんはウィンドさんとの二つを門番に見せ帰国する。
早めに二人を休ませるためすぐにギルドへと向かうことになった。
ギルドに繋がる大通りを歩き受付に結果を報告する。
「これが三箇所で調べた魔力濃度だ、左から入口に近い順だな。そんでついでに討伐した魔物の魔石だ。」
「はい、お疲れ様でした。こちら任務達成の報酬です。魔石は鑑定してもらうので少々お待ち下さい。」
「とりあえず、なんか食うか。」
194という番号が書かれた紙を受け取り私達は外で昼食を取ることにする。
そういえばまだ朝食も食べていなかったな。
外に出ると蝉が一日で一番五月蝿くなる時間帯になっていた。およそ15分ほどで休憩は終了することになる。
キンコンカンコンと近くにあった出店で昼食を済ませていると放送のチャイムが鳴った。
「194番の団員の方、魔石の鑑定が終了しました。
換金を行いますので受け取りに来てください。」
「お、呼ばれたな。」
「あぁよく聞こえてきてましたが、このチャイムギルドの放送だったんですね。」
「凜、俺この二人家に送るから金受け取りに行ってくれ。」
まだ入って三日目の自分を随分信頼してくれているようだ。
「分かりました、行ってきます。」
「今回の魔石の分、43,460円です。」
「ありがとうございます。」
今回の任務自体の報酬は12,000円、合計55,460円だ。
報酬を受け取り三人の下に向かおうと城を出ると棘さんとノートさんが話しているのを見つけた。
「あ、凜くん!ヤッホー。」
「す…すっかりギルドに馴染んでるみたいだね。」
「お二人共元気そうでなりよりです。今は何をしてたんですか?」
見てわかることは棘さんが魔石を持っているって事だけだ。
「今はいーちゃんに魔石の鑑定してもらってるんだ。」
「鑑定でしたらギルドで行ってもらえればいいのでは?」
チッチッチッと人差し指を振る。
「ギルドは普通に調べる鑑定だけど、いーちゃんは鑑定眼を持ってるから評価がきちんと出るんだよ。」
鑑定眼、真実の神トュラーの恩恵で半田家ではほとんどの人が持って生まれてくる。この眼を持つものはその物や者の情報を偽り無く見定める力を得る。
「眼だけじゃなくて知識と相場も使ってるからね。」
初めて聞く話だ。
「魔石って相場あるんですね。」
「あるよ、ランクで基本的に値段が決まる
s 100000円〜上限なし
a 10000〜99999円
b 5000〜9999円
c 2500〜4999円
d 1500〜2999円
e 1000〜2499円
f 1 〜999
で、その値段に対して松竹梅粗の品質で倍率が変わる。
松 ×10
竹 ×5
梅 ×2
粗 ×0
その上でサイズを特大中小で値段をプラスする
特 +1000
大 +500
中 +100
小 +0って感じだね。ちなみに必要のない知識だから忘れていいよ。」
好きなことにはテンションが上がるタイプなのだろうか?
かなり饒舌にそうつらつらと語った。
「そんな母国語の紹介は良いから、で、で?いくらで買い取ってくれるの?」
おそらくノートさんに対してもも言っていたであろう言葉を受け流しているようだ。
「まぁ13,000円くらいかな。」
「くらいって何よ!便利な眼を持ってんだからちゃんと値段を出しなさい!」
「これは陰属性でランクはb、鑑定の結果はインビジヴァーの魔石。この時点で相場は7000円だよ。」
「でも!普通のより魔力量が多いのは私でも分かるよ!品質は良いはず!」
大声を出し続けるノートさんに辟易してか少し棘さんは顔をしかめた。
「大声出さないでよ、君声高いんだから。さっきも言ったけどこの魔石は陰属性なんだよ。陰属性は抽出できる魔力量も使用方法も少ない、ついでに今私は必要としてない。この理由で-1000円。品質は梅だから×2だよ。」
「あれ?でもそれなら12,000円では?」
棘さんが計算ミスするタイプには見えないが。
「そこは私の優しさだよ。合計から1,000引いてあげたんだ。ノートとは敵対したくないし多少の接待だね。」
「じゃあもうちょっと良い値で買ってよ!」
まだノートさんは怒り心頭のようで頬を膨らませている。
「なら遥夏のとこに売ってくれ。」
言われた通りにノートさんは遥夏さんのお店に魔石を売りに行くようだ。
元々魔石は魔力を抽出して魔道具を作ったりそれぞれの魔力の性質を使うものだ。特に必要とされているのは炎、水、陽属性だ。
どう考えても魔道具を専門に扱っている遥夏さんの方が良いと思うのだがあの人に論理的な思考は求めるべきではないのか、それとも棘さんに鑑定してもらってから遥夏さんにふっかけに行くつもりなのか。
そんなことを考えていると事前に伝えられていた一軒家に辿り着いた。
「お邪魔します。」
「おぉ凜、すまねぇなありがとう。」
「あ、凜お帰り。ごめんねぇ迷惑かけて。」
ナイトさんは復活したようだがウィンドさんはまだ体調が優れないようだ。
「これ、貰った報酬です。」
貨幣は全て紙でできている為持ち運ぶのはかなり楽だった。
「43,460円か、そこそこあるな。」
「分前は四等分にする?」
「いや、今回はサポートのお二人さんが二日酔いで使い物にならなかったからな-200円ずつだ。ということで凜、世話になったしなボーナス400円だ。」
家は三人で住んでいるようだが貯金は別なんだななんて思いながら今日は夢幻さんに呼び出されていたのを思い出したため、私は帰ることにした。
挨拶を済ませ家に繋がる道を歩いていると
「自分は今日も今日とて元気してはんなぁ。」
ゾワッとする感覚が右耳から全身に巡る。
しかし右を振り向いても誰もいなかった。
「どこ見てるん?うちはこっちやよ。」
移動した気配もなく無則真名は私の眼の前に現れた。
「真名さん、こんにちは。そちらも元気そうでなりよりです。」
「相変わらずええ子やなぁ。うちみたいなおばはんに可愛い顔してそんな態度してたらどこぞの際どいアラサー魔法使いに襲われるで。」
まるで見てきたようにそう言ってくる。
「あまり同じ場所に滞在しないそうですが、忘れ物でもしたんですか?」
「いや、自分にちょっと伝えたいことがあってな。」
私の名前のことだろうか。いやきっとそれで合ってるんだろう。
「うちの妹、仮名って言うんやけどな。自分、仮名に会ったことあるんかなぁって思って。」
妹?夢幻さんから話すら聞いたことがない。
「妹さんとすれ違うなんて事があるかもしれないので、そこは無いとは言い切れませんね。」
「カカカッ、そこは心配要らへんよ仮名は双子やから。強いて言うならうちの目の色は白色やけど、あの子は黒目が異常なまでに大きいから区別がつくのはそこくらいやね。」
この人と話していると何故か頭が痛くなる。
「まぁ会ったことないんなら別にええんやけどね。」
そう言って彼女の姿が曖昧になっていく。
音もなく現れて何か言い残して消えるのはもしかして本当に流行っているのだろうか。
「あぁそうや一つ言い忘れてしもたわ!」
不意の大声に少し驚きつつも耳を傾けると鳥肌が立つような声で彼女はこう言うのだった。
「自分、名前は?」
「私は…」
言い終わる前に彼女を認識することはできなくなった。
「私は、凜です。」
今は虚空に話しかけることになるがいつかこれを彼に伝えよう。
チリンチリンと近くの飲食店のドアについてあるベルがなる。今の時期冬の国では国教で唯一神と崇める真冬の顕現祭 (神が生まれたとされる日に開かれる祭り)を行っているそうだ。
次回は多分番外




