No.20、三人寄れば
番外にするか結構悩みました。
こぷこぷこぷ、グビッグビッグビッ、ドン!
「すげーー!あいつらもう何杯目だよ!」
「ぷはぁ!ねぇバーン!?飲れば飲むほど代金上がってくけど、そろそろ降りたほうが良いんらない?」
「うるせぇ、呂律回ってねぇぞ。」
「ううぅ…ごめんよぉ凜。一人お酒飲めなくてハブるようなことにして…」
私が一応臨時参加という形で入ったパーティ文殊。
その四人の内三人、つまり私以外の人はお酒を大量に流し込みそれぞれの酔い方を見せる。
ことの発端は部屋に荷物を整理しに行く前。
ナイトさんの今回はバーンさんの奢りという発言が原因だ。
最初に潰れた人が奢り、次に潰れた人は後日3000円までなにか好きな物を奢ることになった。
最初こそ三人だけの戦いだったが全員が10杯を超えたときから周囲の客が勝敗の賭けを始めたせいで現在ウィンドさんが16杯、バーンさんとナイトさんが21杯目でウィンドさんはほぼ潰れている。
「おじさん!もういっらいおかわりぃ〜!」
「俺も頼む。」
ナイトさんはあからさまに酔っているがバーンさんはいつもより静かだ。しかし淡々と飲んではいるが顔は赤の絵具を垂らしたように赤く染まっている。
「「「「ハイ!一〜気一気一気一気一気!!!!」」」」
グビッ、グビッ、グビッ!と22杯目とは思えない速度で飲み干していく。
「ぷはぁぁ〜〜!」
「そろそろビール飽きてきたな。」
このまま永遠に飲み続けるのではないかと思ってしまう。
「あの、明日は帰還するだけですがそれでもあまり飲みすぎるのは支障が出るのではないでしょうか?一応村の結界を出れば魔物は居るんですし…」
「にゃにいっれんのよ、まだまだ飲みたりな…い」
ぐがぁ〜ともう少し女性らしい寝息を出せないのかと思ってしまうほど豪快ないびきを鳴らしながらナイトさんは夢の世界に行ってしまった。
「ようやく寝たか。凜、俺はウィンドを部屋に運ぶからお前はナイトをよろしく頼む。」
「分かりました。でも会計はどうしますか?」
「ウィンドの財布からだな。おっちゃん、いくら?」
「28000円だ。」
「なかなかだな。凜、一応お前も最後まで残ってるんだし一緒に払っとくぜ。」
言葉になっているかわからない寝言を吐くナイトさんを担ぎ私は部屋に戻った。
さっき少し寝てしまったせいで眠気は殆どない。
「少し夜風に当たることにしよう。」
外はかなり冷えていた、これも延々雪林の異常気象が原因だろう。宿の近くにあったベンチに腰掛けたが尻が冷たい。
「黄昏れるならもう少し暖かいところにしたらどうだ。」
「バーンさん。かなり飲んでいましたが大丈夫ですか?」
「親父の遺伝だろうな酒には強いんだ。」
隣良いか?そう聞いてバーンさんは私の隣りに座った。
「なぁ凜、一つ聞きたいことがあるんだ。」
「何でしょう?」
「試験で言ってたが恩人に恩を返すってのとギルドに入ることに何の関係性があるんだ?」
綾命に襲われたと聞いたがその時点では既に復帰できていたらしい。
「私の師匠が、もうそろそろ子供は望めなくなるから家計の人でなくても剣術を継いでほしい。そう私に言ったんです。だから私は剣術を極めるためにギルドに入ることにしました。勿論その人の家に居候させてもらっているので家賃や食費を払うためでもありますが。」
「お前の師匠ってやっぱり夢幻なのか?」
何やら神妙な面持ちでそう問いかけてきた。
「ご存知でしたか。はい、そうです。」
「少し長いかもしれないが、俺の俺達の話を聞いてくれないか?」
同意を伝えるまでもなく私は耳を傾ける。
「俺達が最初に出会ったのは学園卒業後の入団試験よりも後のことだった。俺とウィンドは学園からの友人だがナイトとの面識は双方無かった。
入団試験が終わっても俺とウィンドはどのパーティからも勧誘を受けなかった。パーティの最低人数は三人でパーティには毎月ギルドから補助金がでる。死にものぐるいで三人目を探したよ。そんな中で出会ったのがナイトだった。
面識はないと言ったがそれでもナイトの事は知っていた。俺等の世代じゃそれぐらいには有名人だった。
でもウィンドは歴史書ばかり読むせいか今のことにはかなり疎いからそのことを知らなかったんだよ。
知っている人からすれば無駄な機嫌を損ねれば自殺行為にもなり得る行動だった。
あいつ当時一匹狼やってたナイトにパーティを組まないかって誘ったんだよ。
で俺はウィンドの後ろ姿しか見えなかったから、あいつが珍しくナンパでもしてんのかなって思って話しかけたんだ。
よぉ、ナンパ失敗中か?って。
ナイトの顔を見たときは背筋が凍ったね。同級生の天才が居たんだから。でもそんな感情はすぐに消えたんだ。
ナイトの奴、すっげー可笑しそうに笑ったんだよ。
それで気に入られてそのまま三人でパーティを組んだ。
補助魔法でのサポート専門のウィンド
魔法の遠距離攻撃専門のナイト
近距離専門の俺って感じで今までやってきたんだ。今はその中に凜、お前がいる。要するにあいつらスゲーいい奴なんだ。こんな仕事してるんだから俺が先にポックリ逝っちまうかもしれねぇ、それでもそん時はお前にあの二人を任せたい。」
「ええ、一緒に支えていきましょう。」
「そうだな…一緒にだな。」
この約束を私とバーンさんの両方が破ることになるのは今の私には知る由もない。
結局その日も普通に寝ることができた。
案の定あの夢も見た。
雪の道が真紅に染まり視界は逆に白んでゆく。
「お前の名前は…」
リンッと鈴の音が聞こえた。
思った以上に時間が取れない。




