No.18変わらない日常に
「先にゆぅとくけど、うちの話し方は作者の適当やから本場の人は特に気になるやろうけど、堪忍な。作品の外に出てるのはまぁ無則やし目ぇ瞑ってくれや。」
「久方ぶりやね。元気してた?」
「相変わらず本場の人が聞いたら怒りそうな言葉遣いをするな。」
ふふと小さく笑いながら市松人形のような格好をしたおかっぱ頭の少女?(そう感じるほど背が低い、130もない)が居間で酔いつぶれたノートと夢幻の眼の前に現れた。
「そういう自分も上っ面だけはクールビューティーやってはんなぁ。」
「もう一度警告する。昔どこかの地域でのみ話されてた言葉を気に入ってるからってうろ覚えで話すんじゃない。多分まだその人たち生きてるぞ。そして生きていたらムカついてるぞ。」
夢幻は酒が入っていつもより饒舌になっていた。頬が少しだけ赤いのは酒の大半をノートに持っていかれたからだろうか。
「そもそも、ドアから入ってこい無法者め。」
「無則だなんて上名をもらってるんやから多少のおいたには目を瞑ってほしいんやがなぁ。」
無則という女性はそう言いながら酒を虚空から取り出し夢幻の隣に座った。
「なんや茶豆ちゃうのか、気ぃ利かへんなぁ。」
「文句があるなら食うな。文句がなくても人の家の物を勝手に食うな。」
「そないな堅いこと気にせんで、ちょいと付きおうてや。」
彼女は二人分の酒を注ぎながらちまちま枝豆を食べ始めた。
「あれ、夢幻さん。そちらの初めて見る方は?」
「凜、あぁそういや名前しか伝えてなかったな。こいつは」
「へぇ随分おもろいもん連れてるなぁ。」
ニヤけるような顔でこちらを見つめてくる。
「無則真名や口調が気になるなら早めに慣れてな。」
「貴女が真名さんですか。夢幻さんからお名前だけお聞きしております。はじめまして、私は凜と申します。よろしくお願いします。」
「ちゃんと挨拶できてええ子やなぁ、偽名なのは仕方ないとして。」
ニコニコしながら真名は話を続ける。
「なぁ、自分の本名ちゃんと自分で把握してるん?
そないなけったいでおぞましい名前してはるけど。」
「私の名前?」
頭が痛い、思い出すべきではないと理性が言っている。この人はどこまで知っているのだろうか。
「真名、それ以上は辞めておけ。」
「ん?なんでなん?」
「思い出さなくてもいいことくらいある。」
最初、夢幻さんは私と真名さんを会わせようとしていた。
やはり夢幻さんとこの人は私の事を知っているのだろう。
「まぁええよ。どうせ近い内に思い出して思い知るよ。
自分の運命っていうやつに。」
酒の残りはあげるよ。そう言った刹那、真名は視界から消えていた。
「で、凜。何か用か?」
「お風呂沸いたので伝えに来たのですが。」
「先に入っていてくれ。」
結局私の名前は何なのだろうか。凜という名前で名指しが使えるのなら私の名前は凜ということになる。
しかしこれは夢幻さんがつけてくれた仮名で、真名さんはこの名前を偽名と言った。
「凜。」
「はい?」
「名前に関しては本当に思い出せなくて良いんだ考えすぎないでくれ。」
呼び止められてそう伝えられた。
そうだ、今の私の名前はもうあるじゃないか。
「待っ!」
ハァハァハァと体の跡がシーツに残るほどの寝汗をかき、私は目を覚ました。
「体、洗わないと。」
桶に水魔法と炎魔法で作ったお湯を溜め体にかけ、お湯を溜め、体にかけてを繰り返した。
今日はギルドでの初めての仕事だ。
拾ってくれた夢幻さんに恩もとい家賃を返す為働かなくてはならない。
石鹸で体を清め、私は夢幻さんのお下がりである水色と白の和服を着て刀を今度は隠さず腰にさした。
「行っています。」
夢幻さんはまだ寝ているのか返事は無かった。
外には人が疎らに居た。その中に見たことのある赤髪の女性が居る。
「棘さん、おはようございます。」
「す、数日ぶりだね。」
何故か話しにくそうにしている。
「どうかしましたか?何か話しにくそうですが?」
「いや、呼び名決めてなかったなって。」
それは、なんというか。
「それってそこまで大事ですか?」
「いや、ね、ほら。凜って呼び捨てにするとなんか上からみたいになりそうだし、凜くんも凜ちゃんはあだ名っぽいし、さんと様は流石に無いしで。」
呼びかけ方が分からないからか会話はそこで止まってしまった。
「その、棘さんは朝早く何してたんですか?」
「あぁこの近くに臨時休業有り、年中無休二十四時間営業の魔法具店があるから買い出しに。よかったら一緒に行く?」
「いらっしゃい。」
少し寂れたドアを開けると黒い髪を床につくほど伸ばしっぱなしのローブ(ノートさんのと同じだからこの人もギルドの団員なのだろうか)を着た女性が出迎えた。
「遥夏、朝早くに悪いけど、魔石売って貰える?」
「良いよ、属性は?品質は?大きさは?量は?」
「属性は雷、炎、水。品質は竹で大きさは小十個、中十個大は良いかな特を炎を一個だけで。」
「了解。あれ?初めて、見る子だね。」
「あ、はじめまして。凜です。」
「はじめ、まして、僕は遥夏。よろしく、ね。」
眠そうな理由は目元のクマが無言の圧力で伝えてくる。
自己紹介を終えるとフラフラしながら奥に探しに行った。
「魔法で探せないんでしょうか?」
「遥夏はそこまで器用な魔法は使えないから。」
ドサドサーと何かが流れ落ちるような音を立てこっちにまでホコリが舞ってきた。
「ごめんごめん、おまたせ。はいこれ。」
会計中に遥夏さんは私に話しかけてきた。
「凜はギルドの団員何だよね?もうアイシスには会った?
多分アイシスは後輩に厳しいと思うけど、優しい人だから嫌わないであげてね。」
店をでてそのまま棘さんとも別れた。
アイシス、試験で絡んできた人がアイシス・ハルマと読んでいた。国王である春間輪回と関係が無いとは思えない。
「おい、凜。」
考え事をしていたからか気配を消していたのかアイシスが目の前に居ることに気が付かなかった。
「綾命から話を聞いた。ノートが弟子をとったのは三年ほど前に聞かされていたが、夢幻までとは思わなかった。」
「やはり、夢幻さんと知り合いなんですね。」
「知り合いは少ないだろうが、夢幻を知らない奴の方が少ないだろうな。」
綾命が言っていた四人、春間輪回、灰神楽夢幻、ノート・キーパー、そしてアイシス・ハルマ。全員が夏の国に居て、世界でもこの四人に勝てる者はいないとされている。
「そんなに気を張らなくていいぞ。伝えたいことがあっただけだ。」
アイシスはこちらの考えはお見通しと言わんばかりの対応をする。ここ最近はこんな感じの人にしか会っていない。
「お前は近い内にAランクまで上がるだろう。おそらく一年以内にだ。その時、俺を慕ってくれてる数少ない後輩
風雅と仲良くしてほしい。あいつも俺と同じで人付き合いが苦手なんだ。」
本当にそれだけらしい。アイシスはそのまま消えてしまった。何か言い残して消えるのが流行っているのだろうか。
およそ三時間程私は近くの店の開店作業を手伝っていた。
ギルドの間近にある薬屋のおばあちゃん、フィールさんの手伝いをそろそろ終えるときだった。
「ありがとうねぇ、贔屓にしてもらうだけじゃなく手伝ってもらって。」
「良いんですよ。普段お世話になってますから。」
フィールさんは30年前に夫を亡くしてから一人で薬屋を切り盛りしている。
薄紫色の髪を団子にして夫の形である向日葵のかんざしは少し汚れながらも咲き誇っていた。
私が後ろにある棚を整理しているとき誰かが店を訪ねてきた。
「フィー婆、傷薬三つ…じゃなくて四つ頂戴。」
「ちょっと待ってねぇ、最近の子はせっかちでいかんよ。」
「私ももう二十三よ?そこそこいい歳してるわよ。」
「あたしの四分の一程の人生で何達観してんだい。」
私が上の方を見ようと足場を運んでいたときににフィールさんは声をかけてきた。
「そういえば、凜ちゃんは今何歳だったけねぇ?」
「私ですか?最近十七になりましたよ。」
「あら、そんな若かったけねぇ。」
「良いわねぇ十七、青春ねぇ。」
この棚やけに高いな、フィールさんの腰が殆ど曲がっていないのはこの棚のおかげだろうか。
「ありゃ、傷薬何処にやったけねぇ?」
「何、フィー婆。遂にボケたの?」
「馬鹿言っちゃいかんよ、あたしゃ常に成長期さ。凜ちゃん、そっちの棚に傷薬ないかい?」
傷薬、確か下の方にあった気がする。
「ありましたよ、四つでしたよね…」
「あ、」
客人はナイトさんだった。
「恥ずかしぃ///」
「まずその言動を恥じれ。」
ナイトさんがギルドの面接を行った場所で三十分机に突っ伏して身をよじらしていた。
「取り敢えず、今回の仕事と内容と作戦の最終確認をしようか。」
今回の仕事内容は試験中の綾命によって継続不可能になった延々雪林での魔物の討伐と調査だ。
現在の延々雪林では原因不明の異常気象が発生している。
それによって大量発生したCランクの魔物であるアイスウィザードを始めとしたFランクのアイススライム等の魔物の討伐、異常気象の原因の調査を行う。
「じゃあ前衛は俺とナイトから俺と凜に変更って事でいいな。」
「うん、凜もそれで平気かな?」
「はい、尽力いたします。」
「うっし、じゃあ行こうぜ!」
「「「オー!!!」」」
「恥ずかしい〜///」
ナイトはまだ悶々としている。
今更気づきました。
一人称が代わり映えしない。
そして一度データが全て消えました。




