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君は今日から家族だ!  作者: 秋元智也
99/107

98話

卒業式当日、やっぱり亮太は姿を見せなかった。

家にも帰ってきていない。


「あの〜雅先輩は居ないんですか?」


一年の女子が荒川に声をかけてきた。

悪い噂は一年には届いていないのか、話す程度にはビビらない

らしい。


「僕も知らないんだ…ごめんね」

「いえ…大丈夫です」


今にも泣きそうな顔をしていた。

きっと最後なので告白でもしようとしていたのだろうか?

そんな事、こっちが聞きたかった。

どうして、居なくなったのか…と。


あれほど過保護に心配していたのに、一切連絡がないのだ。


あの日…何があったのだろう。

静雅には何があったかしつこく聞いてくる癖に、自分は何も言

わない。

友人もいないのですぐに迎えの車に乗り込むと家に帰ってきた。


久茂はまだ帰ってきていない。

やけに長い気がする。

もう1週間も経っている。


「おじいちゃんはまだ警察署に拘留中なの?」

「静雅坊ちゃん…すいません。」

「ん?」


優しかったいつもの組員達が殺気だっているのがわかる。

だが、理由がわからない。


いきなり捕まれると腕を拘束されて乱暴に引きずられた。


「ちょっと、一体何があったんですか!」

「静雅坊ちゃんには大変失礼かと思うんですが…これもしきたり

 なので」

「なにを?」


居間にいくと、幹部連中が勢揃いしていた。

数人欠けている気はしたが、それでも食事や会合以外には来ない

人まで集まっている。


真ん中に転がされると何がなんだかわからなかった。


「坊ちゃん、裏切り者には制裁を加えるのは当たり前なんですよ」

「何を言って……」

「雅亮太が裏切ったんですよ」

「えっ……」


今聞いたばかりの言葉に耳を疑った。

亮太が…組を裏切った?


仲が良かったはずの組員が静雅の姿を見下ろすと髪を鷲掴みにして

顔を上げさせた。


「うっ……痛っ……」

「これも仕方ないんですよ…組長がいなくて良かったですよ」


言葉の意味がわからない。

だが、あまりいい事には思えなかった。


「数ヶ月前に岩井組の事務所は何者かに襲撃されたんだ。そして、

 その数日後、岩井組で無くなった拳銃などが今度は別の組の襲撃

 で使われたんだ。それが俺らわ荒川組の事務所だった。その後、

 岩井組の残党が襲撃してきた時、もう一つの事務所が壊滅した。

 それは坊ちゃんには内密にしていた事だ。」

「それって……誰か死んだって事?」

「坊ちゃん、襲撃されたって事の意味がわかりますか?皆殺しって

 事ですぜ?」

「えっ………うそっ………」

「知らない様だからそのまま続けますが…次に公明会の幹部の一人が

 自宅の庭先で眉間を貫かれて死亡。その後、今日出所した岩井久喜

 が何者かの発砲により死亡。」


殺気の意味を知ると怖くなった。

こんなに自分のそばで何人もの人が死んでいくのだろう。


いや、まさか……


心あたりが一つだけある。

でも…そんな事………一人でできるはずは……


思いたったことをハッと顔に出したせいか、全員の視線が集まった。


「意味がわかりましたか?雅亮太の仕業だと確信を持ったのは前から

 でしたが、彼には女もおらず大事な人は全く思いつかなかったんで

 すよ…本当なら大事な人をここで全員で犯して見せしめにするんで

 すが……」

「大事なって……」

「坊ちゃんの事ですよ?まさか雅のやつが自分の遣える相手を性的対象

 に見ていたとはね〜」


最悪だった。

好きだとは何度も言われたが、別に恋人でもない。

卒業したら抱かれるとは言ったが、男を受け入れる勇気はまだない。


しかも亮太以外など考えたくなかった。


「冗談でしょ?だって僕…男だし……亮太とは仲良かったけど……別に

 何もないよ……」

「坊ちゃん、嘘はいけませんよ?」


差し出された写真にはしっかりと抱き合ってる姿が載っている。

しかもキスしている様子まで撮られていたのだった。


「これは亮太が無理矢理……」

「無理矢理の割に乗り気ですよね?殺しはしませんよ。大事な跡取り

 ですからね〜でも、本当なら薬で意識を飛ばすんですが…もし戻っ

 てこれなくなると困るんで痛い思いは覚悟してて下さいよ?」

「おい、やれ!」


もみくちゃにされるように服を引きちぎられる。

ロープも全く解けない。

このままいいようにされたくはない!

そう思うと意を決して腹を括ったのだった。

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