94話
授業が終わると、真っ先に病院へと向かった。
最近ではタクシー扮した組員が送り迎えをしている。
一見どう見てもタクシーに見える外観に穏やかそうな顔つきの
組員が運転している。
和泉先生はしばらく帰るのが遅いせいで送迎は無理になったのだ。
電車で帰ってきてもいいのだが、亮太が頑なに否定した。
前の事もあるので、安全を期したいと言ったのだ。
それに警察にだされた証拠の事もある。
静雅は何も知らないが、裏で色々動いていた。
それを見透かしたように、石田健大に送りつけたのだ。
まるで全てを仕組んだのは荒川静雅で、怒りの矛先をわざと向けさ
せたのだ。
こんな事をして得のある人間など、組の人間でしかない。
そうなると最近ちょっかいをかけてきている岩井組そしてそのバッ
クの公明会といったところだろう。
「全く、煩い連中だ…目障りなんだよな…ほんとに……」
静雅は病室に入っていている。
その後を追うように中に入るが、入り口から奥には入ろうとしなか
った。
亮太にはどうでもいい事だったからだ。
毎日見舞いにくる事も、学校の連中と話す事も。
静雅が普通の高校生活を送る為に必要だと思ったから波風立てずに
やってきたつもりだった。
が、最近のクラスの雰囲気は非常に悪い。
荒川静雅という一人を避けているせいもあるが、わざと距離を置く
ようになったし、女子なんかは露骨に陰口を叩く。
それ以上に我慢ならないのは静雅から雅亮太を離そうとする趣旨が
見て取れるからだった。
「俺から静雅くんを奪う事は誰だって許さない」
一番大事なのは静雅であって、その他大勢の人間ではない。
誰がどうなろうとどうでもいい。静雅さえ無事ならそれでいい。
亮太には静雅しか見えていないのだった。
「亮太この後稽古いいか?」
「ええ、いいですよ。帰ってからにしましょう」
「…うん」
最近はずっとこんな感じだった。
病院へ寄ってから家に帰ると道場での稽古。
もちろん柔道、空手、その他なんでも出来る亮太が教えられる事は
いっぱいあった。
護身術は少し齧った程度なので本格的に教え始めた。
ゴンッと床に叩き止められると、蹲る静雅にすぐに立ち上がるよう
に指示した。
「そのくらいで蹲ってたら相手の思うツボですよ?それとも…もっ
とその先があった方がいいですか?」
「いったぁ〜い」
「それじゃ〜これだったらどうします?」
蹲ったのをいいことに床に押さえつけらえた。
腕を固定されて足を絡められると全く身動きがとれなくなった。
「たんま!亮太って……マジで無理っ〜」
「だからいったでっしょ?このままだと本当に終わりですよ〜どう
したいですか?」
「離して〜」
「嫌です。」
ぎゅっと絞られると身体が悲鳴を上げる。
痛いし、辛いし、ミシミシと響いている。
「ギブ、ギブだって〜」
「…」
「亮太っ!」
「静雅くん。知ってますか?服を着ている相手にはこういう事もで
きるんですよ?」
「へっ……」
そういうと、いきなり静雅のシャツをまくり上げる。
ぐるっとひっくり返すと肘くらいまで頭から持っていくとそこで反転
して回すと簡単に拘束具として活用できたのだった。
「おい、マジで外せって」
「このくらいは抜けれなくてどうするんですか?」
「お前っ……」
「では、こうしましょう。今の状態を抜けれたら今日はここまでにし
ましょう。でも、抜けれなかったら………どうなりますかね?」
「どうなるって……ひゃっぅ!……亮太?」
上半身が直に出ているせいか直接触られると反応してしまう。
「男でも、ここって感じるって知ってました?」
「やめっ……亮太ァッ……」
「早く解かないでいいんですか?」
「うぅ……」
慌てても全く解けない。
その間も執拗に乳首を弄ばれる。
指で弄って、弾いて、時に押し込んでみる。
舌のざらざらした感触が触れた時は身体が跳ね上がる気さえした。
亮太が言っていた通り、感じ始めていたのだった。
自覚などしたくなかったけど、今はそうもいかない。
「あれ?ズボンが苦しくなってきちゃいました?」
「なってない!」
「意地を張って………でも、そういうところが可愛いんですけど…」
「やめっ……もう、やだっ……」
「なら、ちゃんと解いてください」
ズボンのチャックを開けると中に手を入れてくる。
同じ男だからか触られると気持ちがいい。
いや、気持ちがいい場所を知っていると言った方がいいだろう。
これ以上は限界だと思うと、ぐったりする静雅を抱き起こすと解い
てやった。
投げ技もかわせない、その後の寝技からも抜け出せない。
そして、簡単な拘束技にも手こずるようでは全く進歩がない。
「貴方には向いてないんですよ」
囁きかけるように言うと風呂場まで運んで行った。
汗を流して気がついた時には暖かいお湯の中だった。
湯船の中でも抱きしめられているのには多少の抵抗はあったが、心地
良さにそのまま背を預けたのだった。
「貴方は無防備すぎるんですよ。全く、あんな約束するんじゃなかっ
たですね…俺の方が我慢するのが限界になりそうですよ」
首筋にちゅっとキスをして強く吸い上げた。
真っ赤な痕がつくと機嫌良く静雅を介抱したのだった。




