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君は今日から家族だ!  作者: 秋元智也
92/107

91話

科学準備室に入ったままこっそり顔を出す。

窓の外では救急車が去って、今度は警察がやってきていた。


引き渡されていく石田健大の手は真っ赤に染まっていた。

怖くなって震えだす静雅を安心させるように後ろから亮太が

抱きしめてきていた。


「大丈夫ですよ…」

「亮太………さっき運ばれて行ったのって……誰なんだ?」

「…」

「言えないのか?」

「言ったら飛び出ないと言えますか?」

「…やっぱり…そう……なんだな…」


ある程度は予想していた。

保健室の和泉先生が捕まえたと知った時。

血まみれの生徒が運ばれていく時。

どうして、考えなかったのだろう。


あいつの狙いは自分で、自分の行動範囲といったら…

少し考えればすぐに分かる事だったではないのか?


「伊東くんはどこ?」

「ダメです、今はここにいてください。どうしてもって言う

 なら…」

「言うなら?」

「ここで静雅くんを犯して人前に出れないように…足腰立た

 なくしてあげます」


真顔で言われると、流石にドキッとしてしまう。

きっと本気だろう。

静雅を守るために言っているというのもわからなくはない。

わかるけど……それでも…


「俺は本気ですよ?」

「なんで…なんでこんな事になるんだよ。僕が居なかったら…

 伊東くんは巻き込まれずに済んだの?僕が生きてるからなの?」

「違うっ……貴方のせいじゃない!」


抱きしめる力が強くなる。

亮太の腕の中で強く抱き止められると、涙が止まらなかった。

自分のせいで誰かが傷つくのを見ていたくなかった。


あたりが薄暗くなるまで、じっとしていると時折り亮太が誰か

にメールを送っているようだった。


騒がしかったのも落ち着くと、いきなりガラッとドアが開いた。


「雅くん。まだ居ますか?」

「あ、遅いじゃん」

「色々と事後処理があるんですよ」


和泉先生の声がするとやっと解放された。

警察の事情聴取やら何やらがあって遅くなったらしい。


まだ校内に残っている生徒にも行われたらしく、ここにずっと隠

れていた亮太と静雅は疑われる余地もないはずだった。


のだが、なぜか静雅に疑いの目が向いたのだった。

それは、石田健大の父親が持ってきた一枚の手紙にあった。


父親の会社を倒産に持ち込む手法が事細かに書かれていた。

それを書いたのが荒川静雅であると言っているのだ。


が、学校側からは健大の態度の悪さと、学校での揉め事。

写真の捏造や、暴力行為や、後輩へと嫌がらせなどを指摘

した事で、どっちの正当性があるかが議論されたのだった。


もとろん、荒川静雅の家がヤクザということも調べは付い

ている。

周りの話からもおとなしく、真面目な生徒であることも確認

が取れてもいた。


「一応、これも仕事なんでね。昨日どこに居たか聞いてもい

 いかね?」

「えーっと…それは、ゴミしててから、図書室へいって…そ

 れから……」

「俺とずっと一緒にいました。」


横から割入って来る亮太が笑顔で答えた。


「君は後で聞くから、少し席を外してくれるかな?」

「いいえ、俺が答えた方が早いでしょ?だって………」


亮太がいきなり立ち上がるように言うとなんの事だろうと訝

しむ。

そしていきなり抱きしめられると静雅は慌てるように動揺し

たのだった。


「亮太っ……ちょっ…やめて……」

「ほら、おとなしくしてて…」


警察の前で大胆にもシャツをめくりあげたのだ。

驚いている静雅を無視して腰のあたりを指す。

何を言いたいかがわからない静雅はあわてて暴れ出す。

が、風呂の時に付けられたキスマークを思い出すと亮太の手か

ら逃れようと暴れた。


「これが、証拠ですよ。俺たちこういう事してただけなんで…」

「離せっ……ばかっ、めくるな!」

「いいじゃん、どーせ怪しまれてるんだし?こういう事してた

 って言ったて大丈夫だって…」

「大丈夫じゃない!」

「まぁ、若い子は……性別を気にしないのかね〜、まぁいいだろう」


呆れるような視線にいたたまれない気持ちだった。

昨日風呂に入った時に執拗に痕をつけられたのはこういう理由を付

ける為だったらしい。


こんな事を堂々というなんてと思ったが、今は誰かに広まるわけで

はないので少しホッとしている。



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