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君は今日から家族だ!  作者: 秋元智也
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89話

自主退学をして毎日が嘘のように退屈な日々が待っていた。

中卒ではどこに行っても雇ってはくれなかった。


両親は事業が思わぬ展開を迎えていた。


石田建設。

手広く建設業界に名を馳せ、近くの飲食店なども大型ショッ

ピングセンターにも幅を利かせていた。

そのせいかこの近隣では誰もが融通してくれて顔色を伺うと

いうような経営ができた。


横暴な態度もそれを助長していたのだ。

石田夫婦の間には子供ができなかった。


施設から野心があって誰にも騙されないような強い子を探して

たまたま目に入った健大を養子に迎えた。


だが、高校で暴力事件を起こした挙句、健大の親の事件までも

知った。


両親は追い出す事も考えたが世間体が悪いと部屋に閉じ込めた

のだった。


しかし、それだけでは済まず経営は一気に傾いた。

内部告発が気を見ていたかのように増え、株価は下落した。

幅広く手を出していたせいで、破産し借金を背負ったまま会社は

大手に買い叩かれてしまったのだった。


もう地元での横暴な態度は取れなくなったのだった。





それを知って、健大は親の力を失った事を理解した。

すると、部屋の前に手紙が置かれるようになった。

そこには静雅の写真と一緒に告発文を促す計画のあら回しが書か

れていた。


「これって………静雅のやろう。全てはあいつがやったのかよ……

 おとなしそうな顔しといて裏ではこんな汚ねー手を使いやがって」


憎しみが湧くのも一瞬だった。

引きこもりだった健大は小遣いを手にホームセンターへと向かった。

刃渡り30cmほどの包丁を購入すると、そのまま学校へと向かった

のだった。


家に侵入できたのも、慌てて出て行った父親を見たからでもある。

会社を乗っ取られ、そして賠償金ふっかけられてはどうにもならない。

助けてくれる昔ながらの子会社へと連絡を取ったものの、誰も繋がら

なかったのだ。


直接出向いたものの、失敗に終わった。

家に帰ると開けっぱなしのドアが音をたてて揺れていた。


「まさか…健大!健大はいるかぁ!!」


大声で叫ぶと二階の階段を上がっていく。

部屋はガランとしていて誰もいない。


机に残されていたのは石田建設が倒産に追い込まれるまでの計画書が

風に舞って足元へと落ちた。


「これは…まさか……」


すぐに警察署へと向かうと、さっきの手紙を見せたが、取り合っては

くれなかった。

なぜなら、普通の高校生がこんな事をしたとしても、成功しないと言

われたからだった。


「だが、現実に起こっているんだ!この荒川静雅という男を調べてくれ」

「よく考えてください。もし本当だとしても本人がこんな事を教える

 わけがないでしょ?貴方の自作自演としか思えませんがね…」

「おい、事件だってよ!石田健大容疑者を拘束。今こっちに向かってい

 るらしいぞ」

「分かった。では、お引き取りください」


警察署では慌ただしくなってきていた。

健大の名前に反応するかのように一人の警察官を捕まえた。


「健大って、石田健大で間違いないのか?」

「そうですが、貴方は?」

「…私の……息子だ………一体何をやったと言うんだ」


恐る恐る聞くと、空いている部屋へと通された。

そこで今日昼に起きた事件のことを聞かされたのだった。


今から連行されて来ると言っていた。

妻はこの前の事で気分を悪くして眠っている。

これ以上はもう、限界だった。

すぐに養子縁組を解消する書類をとってくると再び戻ってきた。


警察に面会を求め、健大に会うとまるで別人のような顔をしていた。


「健大…お前………何をしたのか分かっているのか!」

「親父………俺は悪くない!あいつが全部悪いんだ!施設での恨みを

 こんな形で返しやがって!絶対に殺してやるっ、あいつを庇う奴も

 みんな、みんな殺してやるんだ!」


話にならなかった。

大きなため息を漏らすと、養子縁組解消の書類を机の上に出した。


「健大、座りなさい。これにサインしなさい。金輪際、私は関係なし、

 お前の責任も取る気はない!これからは一人で生きていきなさい」

「なっ…あいつに言われたのかよっ……全部あいつの仕業かよ……」

「そんな考え方をするようなら引き取らなきゃよかったと思わざるを

 えない…最初は今後のことをとも、思って我慢していたが…それも

 もう、終わりだ。早くサインしなさい」


有無も言わさなかった。

健大も意地でもサインしないと意地を貼りたかったが、周りからの視線

に耐えられなくなると、すごすごとペンを動かしたのだった。


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