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君は今日から家族だ!  作者: 秋元智也
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87話

朝目が覚めると、温かい温もりに包まれていた。


「あれ……ん?」

「おはようございます」

「亮太っ!」

「静雅くんは抱き心地最高です」

「離せって…もういいだろ?」

「はい、昨日は堪能させて貰ったので、満足です」

「…」


何か言いたげだったが首を傾げたがすぐに思い直したらしい。

多分パジャマが変わっている事に気がついたのだろうか?


いや、それでも何も言わないと言う事は気づいていないのかも

しれない。


「もうすぐご飯の時間ですよ。俺は一旦部屋に戻りますね」

「あぁ……」


昨日は本当に何もなかった。

ただ抱きしめられて、眠くなっただけだった。

起きても何処も痛くないし、無理矢理されたわけでもない。


温かい人のぬくもりが心地よかったい気がする。


「ないない。絶対にないから…」


首を振ると否定したのだった。

食事を済ませると、和泉先生の車で学校まで行く。

亮太と二人、裏の駐車場に停めると表の校門まで歩いていく。


「またご褒美貰えるように頑張りますね」

「あぁ…そうだな……」


今日の亮太は特に機嫌がいいらしい。

もうすぐ学期が変わって、3年になると思うと少し憂鬱だった。

もう、そんな時期なのかと…


桜が咲く頃には卒業前にと雅の下駄箱には多くのラブレターが

届く。

その対応で静雅のそばからしばらく離れる事になる。


この時期は断りの返事の為に、何度も呼び出されるのである。


「今日も雅くんはラブレターの返事?」

「あぁ…」

「荒川くんは寂しいんだ?」

「別に……今に始まった事じゃねーじゃん。毎日のように入っ

 てるよりはこの時期だけって方が楽そうだけどなぁ〜」

「いっそ、荒川くんが付き合っちゃえば?」

「…はぁ?」


伊東くんの言葉に一瞬耳を疑った。


「何を言って……」

「だって好きなんでしょ?」

「そんなわけ……」

「だって、雅くんを見てれば分かるよ。すっごく大事だって」

「それは僕が……」

「多分だけど、立場とかそんなんじゃないんじゃないかな〜き

 っとさ〜どんな風に出会ったとしても、好きになるのは変わ

 らなかったんじゃないかな〜って思うんだ」


伊東くんは惜しげもなく言ってきた。


「だって…僕は男で、あいつだって……」

「そんな事関係ある?別に性別によって結婚はできなくても、好

 きって気持ちは変わらないと思うよ?僕はその気持ちに気づい

 ていく事の方が一番大事だと思うけどな〜」

「…」


多分、気づいてるでしょ?

と言いたげな顔だった。


わからにわけはない。

あれだけ家でも学校でもアピールされれば、いくら鈍い静雅でも気

づく…だけど……それだけでは終わらないのだ。


静雅が亮太にさせようとしている事。それは…静雅の復讐そのもの

なのだ。


好きな相手に、失敗したら死ぬような事を命令したのだ。

そんな事、普通ならやらないし、やらせたくないと言うのが普通な

のだろう。

でも、静雅はあえて頼んだのだ。

亮太もそれを承知で了承した。

この関係がある限り、好きだと言っても、きっとただ気持ちを利用

しているだけだと思われるに決まっている。


なら、あえて言わない方がいい。

無難な恋人にはなれなくても、契約という名で縛ればいい。

その方がよっぽど楽だと思ってしまっていたのだった。


ガラッと音がして亮太が帰ってきた。


「どうかしました?」

「うんん、なんでもないよ。今日の分は終わったの?」

「えぇ、昼の分はですが…」

「あ〜、帰りもあるんだぁ〜」

「そうですね。静雅くん、どうしました?」

「なんでもない…」


そっぽを向くと食べ終わった弁当をしまった。

亮太は弁当を駆け込むとチャイムが鳴る前に保健室を出る。

最近は寒いので保健室で食事を済ませていた。

もちろん保険医の和泉先生の許可も取っている。


「先生、ありがとうございました」

「はいはい、また帰りにおいで」

「はーい」


帰りの待っている時間を保健室で勉強しながら過ごす。

これが日課になっていた。病人がいる時は奥にこっそり行っては

静かに過ごす事もあった。


今日も無事何事もなく終わるとホームルーム後に掃除当番だけが

教室に残った。


「先に言ってるね〜」

「うん、すぐにいくから先に勉強してて。あ、そうだ!図書室で

 この前借りた本返してからいくから」

「分かった。」


伊東に自分の行動を言ってから掃除当番に戻る。

外を歩いていく亮太とその横の女子を眺めながらため息を漏らした。

静雅にはまだ春は訪れそうになかったのだった。

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