表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君は今日から家族だ!  作者: 秋元智也
87/107

86話

まるで犬のような視線だった。

飼い主に褒めて欲しくてワクワクするような感じに見えてしまう。


咄嗟に亮太の頭を撫でると、にっこりと笑いかけて来たのだった。


「荒川くん?」


それを見ていた伊東は訝しげに聞いて来たが、嬉しそうにしてい

る雅を見るとなんとなく納得した気がする。


「ご褒美をくれてもいいんですよ?」

「ご褒美って?」

「そうだな〜抱きしめてくれるとか?そうだ、夜一緒の布団に入

 れてくれるとかですかね〜」

「なっ……」

「ずっと我慢してるんですからそれくらいは譲歩して欲しいです

 けどね〜」


じっと見られると仕方なく承諾した。


「手は出さないので安心してください。今は…ですけど」

「…」


その今は…が気になるところだった。

一応、岩井組のことも色々と仕込んでいる最中らしい。

詳しい事は聞かされていないが、順調だと言っていた。


組の動向や、構成員の名簿まで取り寄せているらしい。

これまでずっと牽制され続けているのでここいらで護りから攻

めに行っておくのも悪くはないだろう。

久茂の許可も取っていると言っていた。

全面攻勢をかけるには色々と証拠が足りないらしいし、準備にも

時間がかかるという。


まずはボスの久喜を刑務所にぶち込むのが先だ。

その後で出所する前までに組員を全員潰せばいい。


ボス一人なら怖い事はない。

散々静雅を狙ってくれた仕返しは派手にいかなければ気が済ま

ない。

亮太が本格的に動くのは後一年経ってからだった。

今は、勢力を裂いておくことが目的だった。


岩井組傘下の店や店舗を逼迫させていく。

金がなければ組員も動かせない。


何をとっても、やっぱり金がものを言うのである。


この前頭をすげ替えた石田建設はいい餌になりそうだった。

手広くいろんな職種に手を広げていたおかげで、何処の職種に

も対応できた。


その日の夜は、学校から帰った後から、亮太はずっと静雅の側

を片時も離れなかった。


寝る寸前までそばにいると、ベッドに入る時でさえも一緒に潜

り込んで来たのだった。


「狭くないか?やっぱりさぁ〜」

「ダメです。約束しましたよね?」

「そうだけど…」

「大丈夫ですよ、こうやってくっついて寝れば問題ないですか

 ら…」


後ろからぎゅっと抱きしめられると肌が擦れ合う。

もちろん服は着ているが、ここまで密着すると呼吸さえも聞こ

えてしまうし、心臓の鼓動も聞こえているのではないかと言う

ほどに煩い。


「緊張してるんですか?」

「べ……別に……」

「そう…ですか…」

「当たり前だろ…だって、男同士だし…どうにかなるわけ……」

「…」


どうにかなるわけない。

そう思いたかっただけなのかもしれない。

いつかこの男に抱かれるとしても、今じゃない。


なら、今はひとまずは安心だと言うことだった。


目を瞑ると自然と眠気が来る。

背中にかかる息遣いや、暖かさに心地よささえ感じる。

今はまだお尻に当たる硬いものは眠った静雅の股の間に挟ま

れるとビクビクッとしながら震えながら性を吐き出していた

のだった。


本人は預かり知らぬことだった。

今は起きない。

それもそうだろう。さっき寝る前に飲ませておいた物の中に

は睡眠導入剤が入っていた。


多分本にも気づいていないだろう。

眠気に襲われると言うよりは、ゆっくり眠たくなって行った

はずだ。

今しているのは静雅の手で自分自身を握らせているだけの虚

しい行為だ。


起きていたら絶対にやってくれないだろう事だった。


「本当は起きてやって欲しいけど…きっと触る事もしてくれ

 ないよな……俺はいつだって静雅の味方だよ。組を裏切れ

 っていえば裏切るし、殺してこいと言えば、誰だって殺す。

 きっと、信じられないだろうけど…静雅さえいれば他はど

 うだっていいんだ。」


こんな事、静雅本人には言えない。

きっと罪悪感から逃げてしまうかもしれないから。


「俺から逃げないで…静雅……」


ちゅっと唇にキスを落とすと布団の中に潜り込んだ。

眠っているせいか心地いい温かさが全身に伝わってくる。

さっき出した分を綺麗に拭くとパジャマを着替えさせる。


朝起きて気づかないといい。

まだこの気持ちをはっきりさせるのはまだ早い。

徐々に気づかせていけばいい。


そのうち、離れられないようにしてしまえば、それでいい

のだから。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ