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君は今日から家族だ!  作者: 秋元智也
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79話

チラチラと男は裏口から繋がる方を見ていたが、望み薄なのを

察した。


「おいおい、俺の仲間はどうなったんだ?」

「仲間?ゴミなら今頃かいs回収業者に集められているんじゃ

 ないか?4人だったか?いや…お前を入れると5人か……」

「本当に嫌になるぜ…高校生のガキがチャカなんか持ってるな

 んてよっ」


一気に走ると雅に飛びかかる。

距離を詰めれば問題ない。

体格差なら自分が有利とでも思ったのだろう。


距離を詰められた瞬間拳銃を床に落とすとすぐさまナイフをど

こからか取り出していた。

避けるついでに脇腹に差し込むと勢いよく抜き去る。


「くっ…このぉ、クソガキがっ!!」


殴りかかるが隙だらけで亮太の相手ではなかったらしい。

軽く避けられ転ばされると床に倒れた瞬間上から抑えると首の

筋…血管が一番太い場所…頸動脈に向かってナイフを突き立て

ていた。


ブシャァァーーーと噴水のような血飛沫が上がると白目を剥い

て倒れたまま動かなくなった。


死んだ…のか?


目の前で人が死ぬのを見るのは初めてだった。

ヤクザという職業ならこれは当たり前の事なのだろうが、震えが

止まらない。


横を見ると、伊東すら言葉を失っていた。

亮太ぼ腕を血が滴り落ちている。


多分返り血だとわかっていても、それが自分の為にやった事だと

頭ではわかっている。

いるのだが…殺人という行為に慣れていないせいか震えが止まら

なかった。


「静雅くん、立てますか?」

「だ…大丈夫……大丈夫だから……」


少しため息を漏らすと、今度は腰を抜かした伊東の方へと向かう。


「伊東くん、たてますか?」

「雅くん……ちょっとこれはどう言う事なのかな…君は今…その男

 を…」


殺したのか?


と言いたいが言葉が出てこない。

これを言ったら自分も殺すのか?と聞きたくなってしまう。


静雅の事は手を出さないだろう、だが、伊東は違う。

部外者なのだ。


目撃者を始末するならきっと自分もだろう。

雅とは一年以上の付き合いで、仲はいいと自分でも思っていた。

が、今の彼を伊東は知らない。


こんな残忍で容赦のない、冷たい目をした男と仲良くなんて…で

きない。できるはずがないのだ…。


差し出された手を掴む事なく立ち上がると足がガタガタと震え出

していた。

さっきまでの恐怖か、それとも目の前の人殺しに対しての恐怖だ

ろうか。


「ちょっと待ってくださいね」


スマホを取ると誰かに電話をかけた。


「そうです、裏口に一体。回収お願いします。今回は派手に血痕が

 残っちゃいましたかね〜、はい…そうです、はい…では、お願い

 します」


電話を切ると静雅を抱え上げる。


「自分で歩けるっ…」

「怖かったですか?首に痕が残ってますね…痛かったですか?」

「べ…別に………どうして殺したんだ?」

「静雅くん?何を言ってるんです?生ごみに生きてる価値はない

 ですよ?蚊がいたら叩くでしょ?それと一緒ですよ。貴方に害

 をなす者は要らないでしょ?」

「なっ……」

「貴方はもっと強くなるべきです。そうしないとこの世界では

 生きていけない」


静雅はその意味をまだはっきりと理解できていなかった。

覚悟さえも…まだ持てていない。


腕に血のついた亮太を見ると先生達が大慌てで騒ぎ立てた。

腕にべったり血のついた生徒が、怪我のない生徒を抱えてきた

のだ。

普通なら反対だろうと聞きたいところだったが、何も言えなか

った。

その理由は亮太に一瞬睨まれた瞬間、咄嗟に道を開けて声が出

せなかったからだ。


たかが高校生に…

されど、顔がいい高校生のはずなのに、どうしても聞けない。

抱えられていた生徒はなんの取り柄もない、目立たない生徒だ。


首には赤い痕が残っており、大人しくしていた。

後ろをついて来た生徒が寄り添うようにその生徒の横に座った。


「み…雅くん……あ〜、大丈夫なのかい?」


勇気を出した担任が呼びかけたが、作り笑いを浮かべられた。


「大丈夫です。少し手を洗って来ます」


戻って行くのは危険だと言いたかったが、言える雰囲気ではな

かったのだった。


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