表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君は今日から家族だ!  作者: 秋元智也
76/107

75話

雅亮太は今日泊まっている旅館から数軒先のホテルに来ていた。

そこには組員がと泊まっている。


「異常なかったか?」

「はい、今のところは…油断はできませんが、少し風呂借ります」

「坊ちゃんと一緒に入らなかったんで?」

「入れるわけないでしょ?他の学生もいるのに…見られたらまた彼

 を一人にさせるじゃないですか!」


中学の時もそうだった。

ヤクザの孫と知られていたせいで誰も近づかなかったし、組員の亮

太には普通に接するのに、静雅には遠巻きにコソコソと話すだけだ

った。

それがどれだけ彼を傷つけた事か。


ずっと一人でいる彼に側にいるとアピールしても、結局は組員だか

らとしか思われない。


高校に入ってやっとできた友人はヤクザと知っても離れなかった。

これにはありがたいが、それと同時に少し羨ましくもあった。


友人として仲良くなっていく姿を見ると、胸がギュッと痛む。


『お前は友達じゃないだろ…』


そう言われた時は一瞬イラッときたのも事実だった。

そんな風に思われていたのかと。


善意で尽くしているわけではないが、多少の下心はある。

男として、女を抱いた時のような高揚を抱きしめた時に感じていた。


この人を誰にも渡したくない。

いっそ俺だけの者にしたい。


そう願った時もあった。

運良く、彼の両親の仇を撃てば彼を自由にしていいと言われた時は胸

が踊った。


あの人を抱いてもいい。

まだ女も男も知らない、そんな人を自分が汚していいのかと思うとた

まらない。


名護が同じ事を言い出したらしいが、今はもう居ない。

多分あの爆破事件から姿を見ていないし、連絡もないらしい。

きっとどこかで死んでいるのだろう。


何も準備もせずに計画したのが運のつきだったのだろう。

亮太はそんなヘマはしない。


卒業までに準備をして完全に岩井組を潰してその後ろにいる公明会を

も、叩き潰す。


あとは彼を手に入れたらどうしようか…一緒に暮らして、そして……

ヤクザを辞めてもいい、もう街を出て田舎にでも籠もれば彼を側に置

いておける。

誰にも邪魔されない。

そうしよう。それがいい。


「忙しくなるな……」

「ん?何か言ったか?」

「いえ、なんでもないですよ。」

「坊ちゃんがいてくれるから荒川組も安泰ですね〜、高校卒業したら 

 一緒に店の集金回ったりするんすかね〜」

「そんな事はしない!あんな野獣ババアに手を付けさせてたまるか!」


敵意を露わにして風呂場から出てくると亮太は睨みを効かせた。


「おいおい、お前も童貞貰ってもらっただろ?お世話になっといてそ

 れはねーだろ?あそこのおねぇーちゃん達テクはいいんだよ。顔も

 いいけどよっ!」

「そうだよな〜俺もお世話になったわ」

「だろ?いいだろう?こいつの初めては女将だったよな?」

「知りません。覚えてないので…」


そっぽ向くと身支度をして出ていく。


「くれぐれも旅館には変な人を近づけさせないで下さいよ」

「はいはい、任せとけって」

「坊ちゃんのお世話係いってらしゃい」


やる気のない声にイラっとしながら部屋を出た。

旅館に着くと真っ直ぐに部屋に向かった。

他の学生は地下の遊技場で遊んでいるっぽかった。


「お〜い、雅じゃん、一緒に遊ぼうぜ〜、今から地下に行くんだよ」

「いや、結構だ。」

「いいだろう?もう子守もないんだろ?お前がいれば女子も釣れる

 しな〜」

「部屋に戻るから君たちだけで言ったらどうだ?」

「そう言えば荒川くんももう地下にいるぜ?それでも部屋に戻るの 

 か?」

「静雅くんが?部屋から出ないように言ったんだが…付き合ってや 

 るから案内してくれ…」

「そう来なくっちゃな!」


クラスの男子は浮かれながら地下の遊技場へと向かう。

カラオケや、ビリヤード、卓球場などが並んでいる。


女子達もくると、嬉しそうに寄ってきた。


「雅くんもいるの!私もいい?」

「いいぜいいぜ、一緒に遊ぼうぜ!朝まででもいいぜ!」

「もう、いやーん。雅くんは何をするの?私もそれがいいなって…」

「えぇーー、ずるーい抜け駆け禁止よ!」

「私も混ぜてよ〜」


女子の争奪戦が始まろうとしていた。


「静雅くん…いや、荒川くんはどこですか?」

「あぁ、やつならカラオケにいるぞ、まずは歌おうぜ。」


そう言ってカラオケ部屋へと入っていく。

が、どこを見ても静雅の姿などない。


「どこにいるんだ…」

「まぁまぁ、そう声を荒げるなって…女子が驚くだろ?」

「言ったよな?ここにいるって…」

「うるせーな。そんな奴いねーよ!」


さっきまで気持ちよさそうに歌っていた男子がいきなり言い出した。

さっき誘ってきた男子は慌てて訂正しようとしたが、亮太の寄って床

に転がった。


「嘘を言ったんですか?」

「いや…ほら、楽しんだ方がいいだろ?なんでかいつもあいつに振り

 かわされてんじゃん?可哀想かなって…」

「それを決めるのは俺だけだ…」


そう言って出ていく。

喧嘩していた女子も、それを見てすがりつこうと亮太に近づいたが、

ギロッと睨まれると足がすくんで動かなかった。


やっと部屋に帰るとそこにはカードゲームをしている伊東と静雅の

姿があった。


「あ、おかえり」

「帰ったのか、なら亮太お前もやれよ!」

「なんですか?」

「カードゲームだよ!なんか僕ばっかり負けてる気がするっ!」

「荒川くんは素直すぎるんですよ。しっかり相手を騙さないと!」


そういうとカードを切り始めた。

言われた通り部屋からは一歩も出ていない。

少し安心すると、亮太もカードゲームに加わったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ