69話
紅葉の都、京都。
網の目上に敷かれた道は分かりやすく、地図を見ればどこに行くか
が分かりやすかった。
「こっちのバスですね」
「うわぁ〜、天気もいいし、最高の観光日和じゃん!」
「一日乗車券ってあっちで売ってるらしい」
「いきましょうか!」
3人で行くと、後ろからいくつもの視線が来る。
女子達のグループだった。
わざわざついて来るつもりらしい。
「うざいですね…」
「それをお前がいうか!」
「言うでしょ?静雅くんと二人っきりを邪魔するんですから」
「おーい、雅くん?僕の事忘れてない?」
「そう言えばいました…伊東くんは邪魔しないので安心かと…」
「邪魔ってなんだよ!僕は亮太のものになった覚えはないけど?」
「でも、いつかはそうなるでしょ?俺だけの静雅くん…楽しみです」
全く聞いていない。
しかも伊東くんの前で堂々と言っているのが一番ムカつく。
「愛されてるね…」
「そうじゃないと思うけど?」
こそっと言われた言葉に、反論してしまう。
伊東くんは多分意味を履き違えている。
静雅が亮太と約束した事は、人殺しをしてくれと言うものなのだ。
普通だったらなんでもする代わりにと言って頼むことではない。
人生を変えてしまうような事なのだ。
捕まれば数十年は出てこれない。
そのうちに静雅はどこか遠くへ行くつもりなのだ。
捕まらなくても、亮太の好きにさせたとしても、いつかは出てい
くつもりだ。
結局は逃げる事には変わりないのだ。
亮太は約束を守るような奴だ。
だから逆に心配などしていない。
もし、全部が終わって静雅がいなくなって…それから見つかったら…
あいつは何をするだろう?
裏切ったからと殺すだろうか?
それもいいかもしれない。
家族全部を無くして、再び手に入れた家族を裏切って…そして死ぬ
のならそれもいいかもしれない。
結局は家族の手で死ねるのなら…それで…
「ほら、バス出ちゃいますよ」
「あぁ…そうだな」
今はよそう。
未来の事など考えるだけ野暮というものだ。
まずは今を考えなければならない。
早く復讐を遂げる為に作戦を考えなければならないのだから。
まずは一番先に向かったのは清水寺だった。
長い坂道を抜けて、その先の奥にあるのが清水寺だった。
寺の奥に行くと木造で作られた橋桁がある。
「ここがあの有名な清水の舞台かぁ〜」
「まぁ〜確かに高いし、落ちたらヤバそう…」
「あまり前に出ないでくださいね。一緒に落ちたら助からないで
すよ?」
「あぁ、亮太と心中は嫌だな…」
「それは…ちょっと傷つくんですけど…」
「僕の本心だから…。伊東くん、次行こう!」
「あーー!おみくじ買わなきゃ!」
ここでのおみくじはよく当たると言っていた。
伊東くんが引いたのは小吉…あまりいいわけではないが、悪くもない。
「二人も引こうよ!」
「まぁ、せっかく来たし引くか!」
荒川の手にあったのを開くとさっと閉じた。
「何があったんです?」
亮太は自分のを見てから必死に静雅のをみようとしてきた。
「見るなっ!別にいいだろ?」
「なんだった?荒川くん?」
「…おみくじだし……別に当たるわけないし」
ひょいっと取り上げると亮太が開く。
そこには「凶」という文字が大きく書かれていた。
待ち人来ず、災い来れ。
何事にも注意されたし。
いい事など書かれていなかった。
「これは…静雅くん、すごいもの引きますね…じゃぁ〜はい、交換!」
「なっ…なんでだよ!」
「いいじゃないですか!俺が交換したいんですって」
そういうと、大吉と書かれたクジを静雅に握らせてきた。
何をやってもできて、運もいい。
そんな亮太が羨ましかった。
「大吉は財布に入れておくといいそうですよ!それ以外はそこに
巻きつけるそうです」
「でも、俺は持って帰りたいかな…だって静雅くんが引いたもの
だし…俺のものですよね!」
勝手に喜んで鞄にしまっている。
「何かあってもしらねーぞ?」
「いいですよ!俺は静雅くんさえ無事ならそれでいいんで」
「ばっかじゃないの!」
「そこ、夫婦漫才はもういいですから!次行きますよ!次っ!」
伊東くんを放っておいたせいで、少し拗ねているらしい。
このあとは新撰組の軌跡を辿ってから機嫌を直してもらおうと画策
したのだった。




