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君は今日から家族だ!  作者: 秋元智也
68/107

67話

あっという間に修学旅行当日になった。


今見ている景色は新幹線の中で、通り過ぎていく景観は色とりどり

の色合いを見せていた。


山は全体的に色づき、京都に近づくとその分色合いを濃くしていっ

た。


「もう紅葉すごいね〜」

「そうだな…やっぱり京都はこの時期いいかもな〜」

「うんうん、絶対にいいタイミングだよね!楽しみだな〜全部回れ

 るかな?」


伊東のそわそわした雰囲気に飲み込まれるように、自分も落ち着か

無くなってくる。


そっと手に温かいお茶を握らされると顔を上げた。


「これでも飲んで落ち着いて下さい」

「あぁ……ありがと」


何の気なしにやってくる亮太の気遣いが余計に気になってしまう。

目的が果たされたら…亮太をも裏切るつもりなので、そこまで親し

くなりたくはないし、ましてや興味を持ちたくない。


離れるのが辛くなるなんて…絶対になってはならない。





2年が修学旅行で去っている間に学校では一つの噂が一人歩きし始

めていた。


荒川静雅がヤクザの息子だという根も葉もない噂だった。


強面の男の横に並ぶ写真や、荒川組の門を通り姿などが張り出され、

明らかに組員ではないのは和泉先生が確認した。

が、誰かと言われると、そこらのごろつきだろうと判断できる。


いつも一緒にいる亮太がいない事から、明らかに合成写真であると

判断できるが、知らない人から見たらそうは見えない。


「厄介な事をしてくれましたね…」


学校側も事実を知っているだけに判断を見送りつつある。

校長は事情を知っている。

が、他の職員は知らない。


だからといって事情を話すわけにもいかなかった。

もちろん学力に問題はない。


自力で稼いだ点数で入試も合格したし、毎回の試験も高成績を収め

ているし、授業態度もいい。


問題など何一つないのだ。

問題といえば、これを騒ぎ立てている生徒の方が問題が多かった。

石田健大。


「こんなヤクザの息子なんて一緒の学校にいるなんていいのか?怖

 くねーのか?みんなで追い出そうぜ!」


この生徒は親の権力を傘に、何度も女子生徒に手を出したりと問題

ばかりだった。この前も男子生徒をいきなり暴言を吐くと殴りつけ

るという強行に出たせいで半年間の自宅謹慎を言い渡した。


学力もなく、すぐに留年が決まった。

親からはいくらばかりの金銭が届けられたが、それで留年を取り消

せるほど高校教育は甘くはない。


女子生徒には数日の謹慎を言い渡したが、これには反感もあった。


言いなりになっただけという意見もあったが、問題はその相手の生徒

の方だったのだ。


ヤクザの息子と噂される人物への嫌がらせだったのだ。

本人からは全く抗議すらなかったが、保健の先生から詳しく事情を聞

き、生徒も反省していると言われ…自白とも取れる音声が出た為判断

が難しくなったのだ。


なので、2年生の修学旅行中にこの問題は学校側が解決しないといけ

ない、重要な案件となったのだった。


頭を抱えながら校長が席を立つと、全校生徒へしっかり伝達すべく動

き出したのだった。


「校長!ちょっといいですか?」

「分かっている。荒川くんの事だね…」

「はい…教育委員会にいって事情を話して退学にしてもらうべきでは?」

「それはいかん!それに彼は、いつも態度が悪いとか素行が悪いとか

 あるのかね?」

「いえ……いたって真面目な生徒でした……ですが……」

「それが答えなんじゃないですか?その生徒を見て、判断すべきじゃな

 いのですか?あらぬ噂など、誰が流したら突き止めて、そっちを対処

 すべきでしょ?教師なら、生徒をしっかり見て判断すべき事ですよ?」

「あ…はい……」


教職員の前で言うと、他の職員も納得したのか、それ以上はいってこな

くなった。


判断は正しかった。

次の日、石田健大の父親が乗り込んできたせいで、はっきりと言えそう

だったからだ。


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