65話
家に帰ると食事の前に風呂へと入る。
いつもあまり前のように一緒に入ってくる亮太にはもう諦めた。
「背中流すので座ってください」
「自分でできるんだけど…」
「いいえ、俺の楽しみですから…」
「また刺青増えたんだな……修学旅行中どーすんだよ、それ…」
「え?ダメですかね〜」
「ダメに決まってるだろ!」
「ふふふっ、冗談ですよ!別に部屋を取ってるのでそっちで入って
きます。くれぐれも一人にならないでくださいよ」
「はいはい。分かってるって…前だってちゃんと言ってくれれば…」
「それは…まぁ、俺のミスですね。後で解きに行くつもりだったん
ですよ?この真っ白な肌にロープの痕がついてるのを眺めるのも
また楽しみだったんですけどね〜」
「変態か!」
「そうですよ〜男はみんな変態なんです。よーく覚えておく事ですよ」
「なっ…誰が男にそんな感情持つんだよっ……お前くらいだろ…」
ふんっとそっぽを向くと湯をかける。
泡を洗い流すとスッと立ち上がり湯船に入っていく。
じっと眺める亮太を見るとまるで忠犬に見える。
ただ命令を待つように座ったままだった。
「入らないのかよ…」
「えぇ、すぐに行きます」
そう言ったのはいいが、一緒に入るには広いはずの風呂なのだが、亮太
が入ると狭く感じる。
その理由は静雅の真横にピッタリくっつくように入ってくるからだった。
「向こう空いてるだろ…」
「いいえ、俺はここがいいので…触るくらいならいいんでしょ?」
「はぁっ……ちょっ……//////」
亮太の手が湯船に浸かる静雅の細い腰を引き寄せる。
背中を洗われる時とは全く違う触り方に触れられる度にのぼせてくる。
「ちょっと……マジでやめてっ……」
「キスはいいでしょ?それ以上しないから…逃げないで……」
「…うっ……」
そう言われると弱い。
キスだけならと許したのが悪かったのかもしれない。
舌を入れられると息が苦しくなるほど激しく吸われ、苦しいのに、頭が
ぼうっとなってくる。
苦しいだけじゃない。
ふわふわした感覚とでもいうのだろうか。
まだしていたいとどこかで思ってしまう自分がいたのだった。
まるで抱きつくような姿勢で抱き寄せられると何度も唇を重ねた。
「んっ……ちゅっ……ちゅっ……んんっ……」
鼻にかかった吐息に息が上がる。
熱いせいだろうか目の前がくらくらしてくる。
亮太の手がいつのまにか尻を摩り太腿を撫でていても気づかないほど
夢中になっていた。
唇が離れた頃には目の前がくらくらしていた。
「静雅坊ちゃん!」
「あれ?…目が回る……?」
うっとりとした表情より、のぼせた事を察して抱きあげるとバスタオル
で身体の水気をとるとすぐに部屋に運んだ。
亮太自身調子に乗りすぎた。
最近ずっと触らせてもらってないせいで、こうやって一緒に風呂に入る
のも久しぶりなのだ。
だから調子に乗って静雅にエロい事を自覚してもらおうとした。
が、それも失敗だったかもしれない。
途中まではよかった。
キスだけで気持ちよさそうに自ら、亮太の首に腕を絡めてきたのはよか
った。
だが、その後が間違いだった。
もっとと、亮太が欲を出したせいで湯船の中だという事を忘れていた。
キスに夢中になる静雅をよそに、身体をゆっくり触れていく事はできた。
静雅も触れられても気づいてもいなかった。
いや、意識していなかったのだろう。
「本当に、無防備なんだ……あなたは……俺が狼だったら襲ってますよ」
眠る静雅の額にキスを落とすと部屋を出て行ったのだった。




