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君は今日から家族だ!  作者: 秋元智也
63/107

62話

朝から、クラス替えが発表された。


入り口の側に張り出されたクラス表には、各クラスの女子と男子の

名前がずらりと書き出されていた。


「荒川くん!一緒だったよ!」

「本当?よかった〜、今年もよろしく〜」

「こちらこそ、雅くんも一緒だったよ!」

「…それよりも早くクラス行こう」

「うん…」


伊東の視線が後ろにいる雅をチラリと見る。

静雅には完全にシカトされたままなのが少し気のどくにさえ見えて

きていた。


「荒川くん、本当に許してあげたら?さすがにちょっと……」

「僕は別に怒ってないって〜。僕には伊東くんっていう友人が一人

 いれば十分だよ。」

「僕には荒川くんも雅くんも友人だよ?」

「そう?あいつを友人だと思わない方がいいよ。嘘ばっかだし……」

「静雅くん……」


少し子供っぽいとは思うが、事情を知っているだけに、自業自得でも

あるせいで、何も言えない。


ごめんとでも言うように会釈すると伊東は静雅と一緒にクラスへと向

かった。

新しいクラスでも、やっぱり雅の周りを取り囲む女子は変わらなかっ

た。


顔がいいだけの男のどこがいいのか…

そう思うのは静雅だけだろう。


周りから見たら運動も勉強も出来る優良株なのだ。

問題は誰にも靡かないという点だけだ。


「あぁやって見てると雅くんってモテるよね〜。顔もいいし…」

「顔だけだろ?」

「荒川くん……まぁいいけど、今のままでいいの?」

「別に……」

「家では気まずくない?」

「…」


伊東の言う事も満更ではない。

家での方が一番気まずい。


一緒に飯を食って、一緒にお風呂に入って、と身の回りの世話も亮太が

するので、どうしても視線が合うし、無視してても触れられる事は多い

のだった。


学校ではクラスが一緒といっても、周りの目があるし、どうしても女子

が放っては置かなかったおかげであまり近づかない事ができるのだ。


高校2年となって変わった事はほとんどなかったように見えたが、少し

違うと言えば、荒川静雅の靴箱にラブレターが入っていた事だった。


「これって……荒川くん!」

「なんで僕に?」

「そんな事言ってないで誰からなんです?気になるじゃん!」

「うん……隣のクラスだ……」


伊東くんのが嬉しそうにはしゃいでいた。

横目で見てくる亮太は不機嫌そうだったが、いつもは自分が貰っている

くせに、こう言う時は苛立ちを隠せないらしい。


「静雅くん、一人で会いに行くのは危ないから…」

「なんでそんな事を言われなきゃいけないの?僕は亮太以外とは一緒に

 いちゃいけないの?」

「そう言うわけではないけど……何かあったら……」

「何もない。それでいいでしょ?行こう伊東くん」

「うん…」


ただ気まずくなるばかりだった。


放課後待ち合わせの場所へと行くと一人の女子生徒が待っていた。


「待った?これくれたのって君かな?…ごめん名前も知らなくて」

「うんん、私ね荒川くんの事、すっごく気になっててね…それでよかっ

 たらお付き合いできないかなって……」

「うん…僕のどこがよかったの?」

「えっ………優しそうな…ところとか?」

「そう?そっか……だったら僕と付き合うなら亮太…雅亮太には絶対に

 口を聞かないでくれる?もし話しかけられる事があっても絶対に……

 目があっても笑っちゃダメだけど出来る?」

「えっ!な、なんで?だって仲がいいって……あっ……」


じっと眺めると自分の言葉を訂正しようか迷う様子が見て取れる。

目の前にいる子が好きなのは雅亮太であって、静雅じゃない。


亮太にいってもダメなら代わりに静雅をと思ったのだろうが、そんな手

に乗るほど女子に飢えちゃいない。


本当に呆れるほど、浅はかな考えをするものだと思う。


「僕と付き合えば亮太に近づけるとでも思ったの?」

「だって…いつも雅くんには荒川くんが側にいるし……だから私も見て

 貰いたくて……」

「それは本人に言うべきでしょ?」

「…うん」

「はぁ〜、亮太はやめておいた方がいいと思うよ?きっと付き合ったと

 しても後悔しかしないから…」


あんな人生を送っている人が、一人前の幸せなんて掴めるはずがないの

だから。




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