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君は今日から家族だ!  作者: 秋元智也
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58話

あの日以降、名護を見かける事はなかった。

家にも戻っていない。


これ以上の捜索は野暮というものだ。


雅はそのまま帰ってきた。

夜の世界に生きるという事はそういう事なのだ。

しっかりした準備もなく突っ込んでいけば命を落とす。

そういう世界に生きている事をひしひしと感じる。


出来る事なら、静雅には安心できる生活を送ってほしい。

命を狙われるような不粋な生きたかはしてほしくない。


祖父のせいで命の危機を感じるのはあまりにも理不尽過ぎるからだ。


「あなたには…この世界は似合わない……」

「ん?何か言ったか?」

「いえ、何も……そうだ、駅前に新しいお店ができたそうですよ?行

 って見ますか?」

「あぁ………いや、いい……」

「どうしてです?甘いもの好きでしょ?」

「…」


じっと眺めてくるとふいっと視線を外した。


「僕が居たら迷惑だろ………」

「そんな事は……」

「最近起きている事…全部僕のせいだろ?僕が狙われてるから……だ

 から…」

「違います!静雅くんのせいじゃない……あなたはもっと自分に素直

 になっていいんだ…我慢なんてしなくていい。俺が命に変えても守

 るから…」


真剣な亮太の視線を受けるといたたまれなくなる。

いつか亮太を犠牲にしてしまう日が来るのではないか?

もし、そうなった時、自分は耐えられるだろうか?


「それでも……僕はいいよ。」

「そう……ですか……」


人が多い場所には極力いくのをやめよう。

そう考えていた。


最近は伊東くんにも静雅の素性がバレたが、嫌厭される事もなく、変

わりなく友人でいられている。


昔だったら考えられなかった。

おじいちゃんがヤクザだからと、誰も話しれくれなかったし、わざと

陰口を叩く割に集団で無視してきた。

そのせいで中学時代はいい思い出がない。


小学校の時は施設の出身として差別にあい、中学では嫌厭される。

それでも側に常に亮太がいてくれたのが唯一の救いだった。


絶対に裏切らない、自分だけを守る護衛兼友人だった。


今では友人というよりただの護衛だった。


「なぁ〜亮太は怖くないのか?…僕と居たらさ………」

「怖いですよ。毎日怖いです」

「それなら……やめてもいいんだぞ。僕なんかの為に………」

「違います。静雅くんが居なくなるのが怖いんですよ。怪我しないか

 とか、傷ついていないか…とかね。いつも気がかりなんですよ」

「なんだよ…それ…」

「俺の事心配してくれました?大丈夫です、俺は死なないので。せっ

 かく静雅くんを抱けるっていうのに、死ぬわけにはいかないですよ」

「なっ!」


一瞬言葉に詰まった。

あまりにも当たり前のように亮太が言うものだからこれ以上聞けない。


自分を抱きたいという事はそういう事なのだ。


「好きなやついたんじゃねーのかよ」

「いますよ?すっごく可愛いくてすぐに拗ねる子がね」

「だったら……」

「目の前にいるじゃないですか?……いい?」


家の門を潜ると何人かの組員がうろうろしている。

腕を掴まれると陰に連れて行かれた。


みんなから死角になっていて、見えない場所。

そこまでくると壁を背に目の前まで迫ってきた。


「おいっ……ここでかよ……」

「いいじゃないですか……ここなら見えないでしょ?キスだけなら

 いいんでしょ?」

「……あぁ、でもっ………んっ……っ……」


急に唇を塞がれると乱暴な手つきで口内をかき乱された。

息が苦しくて涙目になるが、やめない。


何度もしている事なのにその度に亮太に翻弄される。


もっと……、もっとしたい……。


力が抜けると崩れそうになるのを腰を引き寄せられて支えられていた。



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