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君は今日から家族だ!  作者: 秋元智也
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55話

大きな敷地に平家のせいか広く見える。

門の前には表札代わりに大きなお文字で『荒川組』と書かれている。


これを見て、堂々と入っていく人など滅多にいない。


「うわぁ〜すごーい!入っていいの!」


興味津々で聞く、伊東くんの声に圧倒された。


「いいよ…でも、怖くないの?」

「怖くなんかないよ。だって荒川くんの家族でしょ?」

「あ……うん」


そうか、これが信頼というものなのだろうか。

信用できる相手の家族だから。

それだけで、周りも信用されるのだということを知った気がした。


「こちらへどうぞ」

「そう言えば、先生はどうしてここを知ってるんですか?」

「それは…私もここの一員だからですよ、これが学校では秘密です」

「分かりました。そういう事なんですね、庭がありますね!見ても

 いいですか!」

「構いませんよ…この後、客間にお茶とお菓子を運ぶのでそこで待っ

 ていてくださいね」


庭が一望できる大きな客間はあきらかに広すぎる。

中央に机があるが、畳と襖で遮られている。


「本当に和風って感じなんだね」

「そうだね、料理も全部和風だから…」

「あれ?でも、弁当は結構今どきだったよね?」

「あれは、永瀬さんが気を利かせてくれてるんだ」

「いつも僕もお世話になってるし挨拶したいな〜、お弁当いっつも

 美味しいし!」

「わかる!僕もここに来て、こんな美味しいものが食べれるんだっ

 て思ったもん!それにね、僕たまに料理を教えてもらってるんだ」

「そうなんだ〜すごいね」


伊東くんとおしゃべりしていると和泉先生が戻ってきた。

和菓子とお茶を手に持っている。


「本当にお茶菓子って和菓子なんだね〜」

「嫌でしたか?」

「いや、違います!なんか、雰囲気的にあってるな〜って思って」

「そうですか、そうですね。ここに行き来している人の年齢的にはそう

 なってしまうのでしょうね。因みに私は洋菓子のが好きです」

「あぁ〜!」


なんとなく聞いた言葉に笑いが溢れる。

和泉先生がこんなに砕けた事を言うのも家だからだろう。

伊東くんの前であっても、今は学校ではない。


だから、普通に話しているのだった。


「そう言えば和泉先生ってマッサージ得意って聞いたんですけど…」


伊東の言葉に和泉先生は頷くと「やりましょうか?」と返したのだった。


組員の体調管理も和泉の仕事だった。

組長がいい年のせいか毎晩マッサージを施している。


前に静雅にも保健室でやっていた事がある。

腕はたしかだった。




数時間後、スマホに連絡があった。

事件が落ち着いたとの連絡だった。


今から帰って報告すると言っていた亮太だったが、その日帰ってきた

のは夕方頃だった。

あの後、混乱した会場内で名護の姿を見る事はなかった。


「おい、出口はどこだよ!」

「こんな事聞いてねーよ!ただ会場にいればいいって話だっただろ!」

「私バイトで雇われただけよ!早く帰してよ!」


口々に言う言葉から、単純にこれは罠だった事を知った。


では、この罠は誰に向けたモノなのか?

考えればわかる事だ。

内通者がいれば、この機会を逃すはずはないだろう。


内部ではこの会場に岩井組の重役も来ていると言っていた。

が、そうではないとなると、簡単な事だった。


名護は思惑通りに動いてしまったのだ。

捕まれば生きてはいないだろう。


一緒に育ってきた仲間ではあったが、この失態は見過ごせない。


始末するまら、自分の手でとも思って戻ってきたが、もう手遅れ

だった。


火災報知器が鳴り響き、パニックになった会場は人の群れで溢れ

返っていた。

これ以上の捜索は無理と判断して帰ってきたのだった。


一番大事な事は静雅坊ちゃんの命。

その次に犯人確保、情報収集だったが、それは今回無理としか言

えなかった。


名護のやった事は正しい事ではない。

が、将来を見越すならいつかはやらなければならない事でもあった。

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