53話
名護がなぜここにいるのか?
ただのバイトというわけではなさそうだった。
「お前こそなんでこんなところにいるんだよ…」
「静雅坊ちゃんの安全確保のためだ」
「はぁ?まさかこの会場に来てるのか?」
「あぁ、もうそろそろ入場時間だな」
「…だめだ……入れさせちゃダメだ…」
名護の反応からして只事じゃなさそうだった。
「これはガソリンだよな?何をする気なんだ」
「それは……」
「坊ちゃんに何かあってからじゃ困るのはお前もだろ?」
「あぁ〜!計画が台無しじゃねーか!ここには岩井組の幹部が来る
手筈なんだよ!それでいっそ全部爆破してしまおうって計画だっ
たのによ〜」
「そんな事して言い訳ないだろ!この辺りの建物や住民に被害が出
たらどーするつもりだったんだ?」
「そうすれば、未来の組長の片腕は俺だけだ!そうなるはずだった
んだ…」
「バカが……」
本当に浅はかな考えだった。
この会場は岩井組の傘下が運営しているらしい。
そして、最近下っぱとして名護は潜入したと言うわけらしい。
会場のあちらこちらに置いてあるポリケースには満タンになった
ガソリンが入っている。
仕掛けた爆弾が爆発するそのまま一気に炎上するように仕組んで
いたらしい。
が、まさか静雅が友人と来ているとは思ってもいなかったらしい。
外では会場が開くのを待ち侘びながら列に並んでいる伊東と荒川
がいたのだった。
中では先にバイトとして潜入した名護や、雅はどうしたものかと
悩み始めていた。
このまま爆破をしてしまえば、周囲に被害が及ぶ。
そしてその犯人として荒川組の組員が捕まればそれを指示したと
久茂をも引っ張ろうとするだろう。
この前の孫の静雅の怪我の報復と見られる可能性だってある。
それは非常にまずい。
今ここで捕まれば、同時に潰す計画が台無しになってしまう。
「まぁ、いいから今回はやめておけ。もし爆破したら大事な静雅
坊ちゃんが怪我だけでは済まない上に、組にも迷惑がかかるん
だからなっ…」
名護だってそんなにバカではないはずだ。
これだけ言えば理解するだろうと考えると立ち去ろうとして、足
を止めた。
後ろから殺気がして振り返りざま反転し蹴りかえす。
名護の持っていたナイフが顔を掠めるが、大した傷ではない。
「おい、どういうつもりだ!」
「俺にも手柄が必要なんだよ。荒川組の組員を捕まえて岩井組に
売るチャンスだろ?おとなしく掴まれよっ!」
「はぁ〜、いい加減にしろっ!」
思いっきり吹き飛ばすと壁に激突して蹲った。
亮太はその場を離れるべく、仲間にも連絡を入れる。あとは外に
待機させておいたメンツにも事情を話さなければならない。
だが、今は静雅をすぐに非難させるべきだろう。
客の間を通りながら静雅を探した。
「静雅くん、よかったーすぐに出ますよ。伊東くん、君も今すぐ
に出てください。」
「あれ?雅くん…どうしてここに?」
「亮太、お前なんでここにいるんだよ!」
「事情はあとです。まずは安全ま場所まで行ってからです」
静雅の腕を掴むと客とは逆に入り口へと向かう。
「なんでだよ、おい!亮太っ!」
「緊急事態です。貴方が無事なのが一番なんです」
「雅くーん、今からライブ始まるんですよ?」
「今日はダメです。早くでますよ。」
あまりの真剣な顔に伊東くんも後をついてきた。
楽しみにしていただけにショックだったのだろう。
それでも、ちゃんとついてきてくれた。
これにはしっかりと説明しなければならない気がした。
そんな時、大きな音がして会場の方で火の手が上がった。
多分亮太が静雅を連れて逃げる事を悟ってそのまま実行に移し
たらしかった。




