48話
別にどうって事はない。
何をされようが両親の仇を打てるなら、構わない。
風呂を終えると家着に着替えさせる。
亮太は手慣れたものでいつもと何も変わらない仕草で湯冷めしない
ようにと着替えさせ終わると部屋へと抱き上げる。
「…」
「何か言いたい事でもありますた?」
「いや……なんでもない」
「あぁ、指詰めの事なら、なくなりましたよ。誰かさんが無茶した
せいで…何人かは反対したらしいですけど」
「そうか…」
「来週にはそろそろ学校にも行かないとですね」
「あぁ…」
素っ気ない返事に亮太はそっと背中に触れるとそのまま肩口へと触
れていく。
「うっ……」
「痛いですか?」
「それはお前がっ……なんでもねーよ」
「そうですよね。静雅くんが付けさせてくれた痕ですもんね。俺に
何をして欲しいんです?」
「何をって……」
「して欲しい事があるからこんな真似をするんでしょ?俺が自分の
思い通りになるように…と」
ハッと顔を上げるが、唇を噛み締め言おうか迷った。
今言ってもいいのだろうか?
言ったら、動いてくれるのだろうか?
ずっと、自分の味方でいてくれるのだろうか?
「言ってください。俺がなんでも叶えてあげますよ。静雅坊ちゃん
の全てを俺にくれるなら…」
ゾクっとするような…まるで背筋に悪寒が走ったような感じさえす
るその目線に、唾を飲み込むと何も言えなくなった。
「静雅くん、なんでも命令していいんですよ?この組を潰せでも、
俺に誰かを殺して来いでも…なんでも…」
本気なのか冗談なのかわからない。
ただ、一番近くにいたこの男は人を殺めた事があると言うのだけは
事実だった。
この前の目の前で……
そう言えば、波戸崎はどうなったのだろう。
「そいだっ、亮太!波戸崎は?あいつはどうなっ……んっ……」
一瞬何が起こったのか理解するまでに時間がかかった。
いきなり唇を塞がれると亮太が覆い被さって来ていた。
背中をバンバンっと叩くと舌が口内を蹂躙する。
苦しくて本気で引っ掻くとやっと離れた。
「おまえっ……」
「他の男の名前なんて聞きたくない…それも静雅くんにあんな事を
した奴の名前なんて…」
「違う!そうじゃなくて、あいつはどうなったのかって聞いてんだ
よ!警察だって調べてるだろ?」
「それなら心配無用ですよ。始末しましたから。死体すら見つかり
ませんよ。今回の事はあいつの死で手落ちですかね〜」
「ダメだ!そんなのダメだ…あいつが言ったんだ。僕を犯してか
首を切り落として送りつけるって…昔の復讐だって…」
「波戸崎には復讐相手なんて…いや、あいつの親代わりって…」
「岩井久喜…電話で話してたんだ…僕の親を殺した時の事……」
「…」
なんとなく理解した気がした。
亮太にして欲しい事。
それは岩井組の崩壊。
いや、潰してくれてと言うのだろう。
「岩井組と潰し合わせようと考えているんですか?」
「…父さんが死んでもおじいちゃんは動かなかった。なら、同罪で
しょ。」
「しかし、今揉め事を起こすのは得策じゃないですね…相手も警戒
してますし…それに、警察が動いている以上は、今は動けません
よ?」
「なんでもしてくれるって言ってたよな?だったらいいよ。僕を好
きにしていい。なんでもするから…あいつらを潰したい…」
亮太は一瞬驚いた顔を見せたが、スッと真顔に戻った。
ベッドに静雅を押し付けたままの姿勢でじっと見つめられるとドキ
ドキしてくる。
いつも見慣れている顔なのに、近いせいだろうか?
亮太の手が股を弄ると足を掴むとグイッと持ち上げられた。
「うっ……ぃっ……」
まだ傷口に障る。
それでも、亮太はやめなかった。
無言で両足を抱えると下着越しに触れて来る。
「りょ………りょうたっ……」
「こんな事されても平気だって言えますか?全裸にして尻の中を
何度も掻き回して泣き叫んでもやめませんよ?全身に俺のだっ
てわからせる為に毎日、毎日ここに俺にを捩じ込んで…貴方を
何度も泣かせることになっても…それでも、いいんですか?」
言われた言葉を反芻すると、顔が熱くなる。
そんなにはっきり言われると、決意が鈍りそうになる。
でも、それで…仇が取れるなら…
自分の身体一つでなんでも言う事を聞く、駒が手に入るなら安い
ものだった。
「いいよ…今からでもするか?僕にだって譲れないものはあるんだ」
威勢のいい事は言ったものの、下着越しに尻を撫でられれば、不安
にもなる。
割れ目に指が触れると覚悟を決めたはずなのに、怖くなってくる。
亮太から見ても強がりだってわかる。
ただ脅すつもりでこんな真似をしたのだが、逆に挑発されたのだ。
いっそ、犯してしまおうか?
そう思ったが、身体に触れる度に小刻みに震えているのが分かる。
最近こ事を思えばわからなくもない。
足を下ろすとそのまま起き上がった。
「卒業まで待ってください。静雅くんがそれでもまだ復讐したい
なら手伝います。そして…その時にその身体を抱かせてくださ
い…それまで処女じゃなかったら一晩中抱くので覚悟しておい
てください」
それだけ言うと部屋を出て行った。
取り残された静雅は呆然として天井を眺めたのだった。




