47話
部屋に閉じこもって何日だろう。
学校へはまだ行けていない。
途中で帰ってしまったので、余計に顔を合わせずらい。
スマホは壊されてしまったし、新しいのを亮太が用意してくれたが
入っている連絡先は組の方と、亮太だけだった。
「はぁ〜せっかくできた友達なのにな〜」
「静雅くん、入りますよ」
「なに?」
「食事の時間です。起きれますか?」
「別にいい…」
素っ気なく言うと部屋にズカズカと入って来た亮太は近くの机にお盆
をおいた。
「だからっ…要らないって……」
「食べるまでここにいるます。それが嫌なら食べてください」
「…」
にっこりと笑うと箸を持とうとしない静雅に変わっておかずを摘むと
静雅の口の前に差し出して来る。
仕方なく、口を開くと今度はご飯を運んできた。
どの順番で食べるだろうと考えての事だろうが、ずっと一緒にいたの
で亮太のほうが静雅以上に静雅のことを熟知していた。
「はい、お茶飲みますよね?」
「あぁ……」
お風呂は早めの時間に入る。
怪我の事もあるのでいつも一番風呂だった。
亮太が呼びにくると、問答無用に抱えられて脱衣所の椅子に下ろさ
れると脱がされ再び抱き上げられた。
「いい…自分で歩ける…」
「まだダメです。トイレも俺を呼んでくださいね」
「呼べるかよっ!」
威嚇した猫のように毛を逆立てると、軽く撫でられあしらわれる。
「今日も組のしのぎに行くのか…」
「はい、今は学校も行っていないので、暇なら行くようにと…」
「なら、学校行けばいいだろ!」
「静雅くんもいないのに行っても意味がないでしょ?それに俺は…」
何かいいかけたが、言葉を濁して終わった。
身体を丁寧に洗われ湯船に運ばれる。
乱暴された時の痕は綺麗に消えたけど、亮太にはずっと残っている
かのように罪悪感だけが残っているようだった。
「病室で言ってた事…覚えてるか?」
「…」
「覚えてるんだろ?」
「なんの事でしたっけ…悪い冗談はやめてください」」
「冗談じゃ…ない。全身につけられた痕も消えてんだよっ!いつま
でも引きずってんじゃねーよ!」
「…静雅くんに俺の気持ちがわかりますか?大事にしてきたのに…
それをあんなやつに簡単に奪われる悔しさがっ………俺だって…
触るのに気をつけてるのに…大事な人なのに……」
悔しさが混ぜた言葉が搾り出される。
そんな亮太に腕を伸ばすと思いっきり顔を両方からパチンッと叩い
た。
そしてぎゅっと抱きしめた。
「そんなに悔しいなら、お前が痕をつければいいだろう?僕の身体
に付けたいって思ってるなら、付けさせてやる」
「静雅くんっ!…あなたは何を言ってるかわかってるんですか?」
「分かってるつもりだ…嫌ならいいが、もう二度と同じ事は言わな
いがいいのか?」
「…」
「んっ…ぁっ……少しは加減しろ…ばかっ……」
肩口にちゅっと吸い上げて鬱血をつけると次に噛みついていた。
くっきり残った真っ赤になった歯形。
これは亮太にとっては嬉しい所有印でもあった。
「毎晩風呂の度につければ一生残るだろ?全てが終わったら僕と
一緒にいてくれるか?組を追われたとしても、僕の側にいてく
れ…」
「はい…」
これはただの口約束だ。
ちゃんとした契約じゃない。
それでも、自分の味方でいるのなら、身体だって差し出しても
いい。
この命さえも捧げるから、今からやろうとしている復讐を手伝
って欲しい。
もう、誰かに守られているだけじゃない。
命の重みを償わせるのだと、覚悟を決めたのだった。




