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君は今日から家族だ!  作者: 秋元智也
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44話

亮太には、これが夢であって欲しいと思っていた。

自分の腕に中で真っ赤に染まっていく静雅に現実味がない

からだ。


さっきまで暖かかったのが、だんだんと体温が下がっていく。

小刀を抜けば…


抜こうと手を添えると、いきなり腕を掴まれたのだった。


「今抜いてはいかん。刺さっておるから出血が少なく済んでおるが、

 もし抜けばすぐにでも死んでしまうかもしれん」


久茂の正確な判断は間違ってはいなかった。

が、久茂の判断のせいで、この事態が起きたと言っても過言ではな

かった。


救急車が到着するとすぐに運ばれていった。

付き添うように亮太が乗り込む。


亮太の指詰めは後日に延期される事になったのだった。

今はそれ以上に非常事態だったからだ。


組員も何が起きたのか正確には理解していない。


さっきまで元気だった、静雅坊ちゃんがいきなり刺されて運ばれた

のだ。


疑わざるを得ないのだが、顔面蒼白で付き添っている亮太には無理

な気がする。

では、一体誰が…?


この組でそれが出来るのはたった一人しかいなかった。


みんなには大事な孫だと言っていた。

必ず守るようにと何度も言って来た。


もし、今回の事をやったのが、亮太だったのなら、即座に殺されて

いる事だろう。


そうならない理由…

それは…犯人がその場にいる人間で、誰もが責める事のできない人物

だった時だけだったからだ。


亮太の表情からみれば、誰が考えても同じ答えに辿り着く。

静雅は初め、久茂の部屋にいたのだから…


組の中の空気は重く、静かだった。





病院へと運ばれるとすぐに手術室へと運ばれていった。


さっきまで握りしめていた手を離すと遠くに行ってしまうような気

さえしていた。


「俺は……どうしたらよかったんだよ…」


ちゃんと事情を話してればよかったのか?

そうしていいたら、波戸崎なんかについていかなかったか?


いや、向こうも後がなかったはずだ。

それならよけいに無茶な賭けに出るだろう。


それでも、俺が近くにいて安心させていれば…


身体中につけられた痕はあきらかに強姦されてできたものだと思う

だろう。

間違っていないだけに、自分のせいだと悔しくなったのだった。


手術室の点灯が消えると、静雅が運び出されていく。

病室では絶対安静で、廊下の椅子でただ待つしかなかった。


明日は学校も振替休日になっている。

が、それ以上に彼がこのまま命を繋いでいてくれる事を切に願わない

わけにはいられなかった。


「あの…ご家族の方は…」

「はい、家族です…」

「説明があるのでこちらに…」


動揺してしまって普通の病院へと運んでしまった。

本当ならかかりつけの医師に頼むのだが、それでは遅い気がしたんのだ。

担当医の前に出ると、怪訝な顔をされた。


多分年齢のせいだろう。


「家族…です」

「そうですか…状況ですが、極めて危ない状況でした。今はまだ麻酔で

 眠っているので明日には目を覚ますでしょう。今回はここに刃物が当

 っていた為…………………」


長々と説明が入る。

頭が全く働かない。

眠っていないせいか?

いや、それよりも、静雅はどうなんだ?結果だけ言えよ。

焦ったい思いを抱きながら最後まで聞いていた。


「というわけなので、今回の手術は無事成功しているので、傷も縫った

 あとは残るかもしれませんが、命は大丈夫でしょう」

「はい………あ…ありがとうございます」

「しかしですね……身体につけられた痕はごく最近に付けられたものだと

 思うのですが………」

「…!」

「これを言うのはどうかとも思うのですが…事件性があるないを含めて

 警察の方に提出させていただきました」

「…!!」


今、何をいっていた?

警察?どうして?


やった犯人はもう殺してしまった。

そんな奴を調べる必要はない。

調べられたらこっちが都合が悪い。


死体はどうした?

今日のうちには片付けてくれるはずだ。


なら、問題はないか?

咄嗟にいく通りもの回答を考えていたのだった。



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