表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君は今日から家族だ!  作者: 秋元智也
37/107

36話

…?


あれ?

この感覚、覚えている。

どこかで…覚えがあるような…確かに記憶の端に覚えている気がす

るのだ。


強く抱きしめられた感じと、この安心感のある胸板にすっぽり収ま

った感じが記憶にあった。


どうしてだろう?亮太に守られるのは今に始まった事ではない。

なのに、なんでこんなにドキドキしてしまうのだろう。

ただの護衛で、仕方なくやってるような奴にこんな気持ちをいだく

なんて一生の不覚だった。


でも、どこかで安心して抱かれていた気がする。

そんな気持ちにさせる亮太が恨めしく思ったのだった。


「離せよっ……」

「離せ?自分から俺の胸に転がって来たんだろ?それとも…女子みた

 いに抱いて欲しかった?」

「ばっ…ばっかじゃねーの!」


亮太の胸を押し除けるとさっきまでの自分を恨んだ。

何を考えているんだ…僕は。


少し手狭な空間に横になった。3人でもギリギリ入るような空間に3人

はきつい気がしたが、こんな体験は滅多にできないので、少しワクワク

した。


夕食は各自で調理する事になっていた。


食材は用意されている。

野菜を洗って切るとあとは煮込むだけのカレーが定番だった。


女子達とも合流すると、きゃっきゃっと亮太の横で騒ぎ始めた。


「私、料理は得意なんです〜」

「もちろん私もよ!」

「あなたは昨日雅くんと一緒に肝試しやったじゃない!今日は遠慮し

 なさいよ」

「あの時は平等にじゃんけんで決めたじゃない!それに途中で逸れち

 ゃったんだもん、ノーカンよ!」


よっぽど自分の腕を見せたいらしい。


「僕らはご飯を炊こうか?」

「そうだな…」


渡された飯盒炊爨の器に米と水を入れる。

あとは薪に火をつけて炊き上げるだけだった。


結局、じゃんけんで平井さんが主導権を握ったようだった。


カレーは誰でも作れてお手軽な料理だった。

失敗する方が難しいとまで言わしめた家庭料理の一種だ。


だからこそ、学生達に全部預けてしまっても問題はないはずだった。


そう、そのはずだったのだ。

どう考えても、食べれないほどの味付けにはなりようがない。

誰もがそう考えていた。


だが、しかし人によってアレンジを効かせる人間がいるというのが

問題だった。

アレンジに渡された食材以外の物を使ってしまうという強行に出た

挙句、食べれない物へと変貌を遂げる事例がここにあった。


「なぁ〜これって貰った食材だけで作ったんだよな?」

「うん…そのはずだけど、おかしいなぁ〜きのこなんて食材にあっ

 たっけ?」


もちろん見かけた覚えはない。

貰って来たもは伊東くんなので断固としてないと言い張った。


では、このきのこはどこから調達されたのだろう?

嫌な予感しかしない。


「出来たわよ!雅くーん、私の愛情たっぷりの手料理食べてくれる

 よね〜」


ご指名された本人は顔を引き攣らせながら食べるのを拒否したい

気分だった。


皮の剥き方も雑で、身が半分以上残っている。


「これを料理っていうのか?」

「女子からの使命だぞ?食べてやったらどうだ?」

「そうだね、雅くんなら食しても生きていけそうだね」


静雅と伊東の言葉に押されて、席についた。

が、スプーンを持つ手が口に運びたくないと拒絶反応を起こしていた。


「はぁ〜、ちょっとこれ使うね」


ため息を漏らすと、ジャガイモの皮をとるとお湯を沸かしその中に皮

を全部突っ込む。

そして湯だったのをいかきに上げるとほかほかのうちに薄い皮を手で

剥がした。

ボールに入れると叩きながらマッシュさせていく。

調味料は普通に揃っていたのでマヨネーズとケチャプ、チーズを取っ

て来ると飯盒の中にぶち込んだ。


ケチャップはマッシュした野菜に混ぜ、胡椒で味をつける。

そして均等にならすと上にマヨネーズをかけて、チーズを振った。

再び火にかけるととろ〜りと溶け出してきたチーズがいい匂いをさせ

ていた。


具はほとんどがご飯の上にかかったものしかない。

だが、危険な気がするカレーを食べるよりはマシなはずだった。


すぐに伊東くんが味見をすると、うんうんと頷いてみせた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ