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君は今日から家族だ!  作者: 秋元智也
32/107

31話

先生が点呼を取ると、肝試し大会は開始されて行く。


「伊東と、荒川は居ないか?」


出席を取ると、順次説明から入る。


「よーし、お前ら〜道は真っ直ぐだ。たまに分かれ道はあるが矢印

 があるからそれに従えよ〜勝手に別のルートに行くなよ〜。最初

 のグループ行っていいぞ〜。奥にある祠から御守りを持ってこい

 よ〜。」


至極単純なコースだった。

女子と一緒に先に出た亮太は途中で女子を気絶させるとコースを外

れる。


物陰に隠れて、怪しい動きの者を探す。


するとコース上に木の影に人がいるのがわかる。近づいて行くとド

クドクと殺気を感じた。カタギの人間ではない。


真後ろに回り込むと一気に距離をつめてサイレンサー付きのチャカ

で素早く打った。


パシュッ。


急所に命中するとドサっと茂みに倒れて行った。

近づくと絶命しているのを確認してから身元が分かるようなものを

探すが、何も持っていなかった。


「こちら、A地点。怪しい者発見。即座に無力化したが身元は不明」

『わかった、こちらも2名発見。引き続き捜索にあたる』

「了解」


やり取りだけならどこかのエージェントみたいだが、やっている事

は人殺しだった。


亮太はまだ気づいていない。

静雅がこちらに向かっている事にも、学生の中にも仲間がいると

いう事実にも…


今は木々に隠れながら殺気を放ってる人物を探して回る事を優先し

ていた。


他の場所では衝突があったらしい。

気づかれて激しい抵抗にあった挙句に仕留めたが怪我を負ったら

しく数人が離脱を余儀なくされた。


「チッ…使えない大人ですね…早く戻らないと静雅くんの腕にロ

 ープの痕が付いちゃうじゃないですか!」


気遣うところはそこだった。




順番に二人づつが肝試しで歩いて行く。


一番最初に行った亮太に追いつこうと女子二人が慌てるように通

り過ぎて行く。


もちろん、亮太は茂みに隠れているので追いつけるはずもない。


スタート地点には遅れて伊東と荒川が到着していた。


「あ!荒川くんやないか?遅刻やぞ?」

「すいません、ちょっと予定外の事があって…」


先生には出席に○をつけて貰うと最後に並んだ。


ちょうど静雅の前のグループは波戸崎とクラス人らしい。


「俺ら以外にも男子ペアがあってよかったわ〜。みんな女子と

 やったし場違いかと思うたわ」


いつもつるんでいる生徒らしい。静雅より先に出発すると奥か

らは悲鳴が聞こえていた。


「へ〜、幽霊出ではったんかな〜」

「そんな事はないでしょ?」

「なんや、現実主義なん?まぁ、ええわ。お先にな〜」

「う、うん」


やっぱり分からない人だった。

波戸崎は飄々と歩いて行く。


途中で茂みをじっと眺めてきたが、ふっと視線を外した。


ガサッと音がしたが振り向きもしない。

まるでそこにいるのが人間である事を知っているかのような動き

だった。


途中にあった矢印を剥がすと別の道へと向ける。

後ろにいるのは二人だけだ。


ニヤッと笑うと口笛を吹きながら歩き出した。


「いいんですか?こんな事して…」

「大丈夫やろ?だってたかが肝試しっやし?遅れたバツってや

 つ?」

「波戸崎くんは怖いっすね」

「えーーー!俺ってそんな怖くないきぃーするけど…ほらっ、

 お茶目なだけやで?」

「はははっ、退屈はしないっすね」

「そやろ?」


伊東くんと一緒に最後のチームが出発した。


コース通りに行けば問題ないはずだった。

ところどころに印がついている。

分かれ道には必ず矢印が付けられていた。


「こんな真っ暗だと夜目が効かないと怖いね〜」

「確かに…でも、夜空は凄いね、こんな星の数見た事ないや。」

「だよね〜、来てよかったかも」

「うん、確かに…」


ほんわかしながら歩いて行く。

途中の矢印もちゃんとあったし、迷う心配もないはずだった。


そう、問題はないはずだったのだ。


「あれ?ちょっと待って…」

「どうしたの?」


いきなり伊東くんの服を掴むと止めさせた。

おかしい…ずっと上りになってからの目の前が開け過ぎだ。


すぐに足を止めるとゆっくり歩き出す。

茂みを抜けた瞬間開けた場所に…足元が消えた。


そのまま何の気なしに歩いていたら落ちていただろう。


「どうして?ちゃんとコース通りに歩いたよね?」

「うん、そのはずだけど……どこかでおかしいかったのかも…戻

 ろう…」


引き換えそうとすると目に前に黒ずくめの男が立ちはだかった。


「あの〜すいません、この先は行けないですよ?」

「あぁ、知っている、だが、お前にはそのまま進んで貰う」

「あの、言ってる意味が…」


言葉を発する前にいきなり殴りかかってきた。

伊東くんを押すと静雅は木の裏に回った。


男は考えもせずに静雅の方だけを狙ってきたのだった。


「伊東くん、早く逃げて!お願い誰か呼んできて!」


叫ぶと静雅は必死に走って逃げ出していた。


後ろにはちゃんとこっちを追ってきていた。

もし、伊東くんの方へ行ったらどうしようかとも思ったが狙いは

静雅だったらしい。


亮太が静雅を行かせたくなかった理由。

多分、これが答えなのだろう。


向こうで大声で叫ぶ伊東くんの声が聞こえていた。



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