27話
臨海学校も間近になるとしおりが配られた。
ハメを外さないようにと忠告されつつも、女子達は密かに男子の
テントに潜り込む計画を立てているのだった。
「アクシデントは付きものよね〜」
「そうそう、夜一緒に布団にいれば間違いだって起こるわよね〜」
「夜は2回よ!チャンスはたったの2回ってわけね」
聞こえているのだが、それは放置しておこう。
まぁ、楽しめたらいいなと思いながらしおりに目を通した。
「荒川くんは夜の肝試し、参加するの?」
「あーどうしようかな…」
「僕は楽しみなんだ〜夜に森の中を…しかも街中じゃないからきっ
と星も綺麗だろうし…」
「そっか…星も見えるんだな…参加してみようかな…」
「一緒に行こうよ!」
「うん」
伊東くんと気が合うと参加に丸を書いて出しておいた。
参加人数次第で決行が決まるらしい。
それまでは何事もなく平穏な日常が続いていた。
臨海学校当日、荷物を纏めると背中に背負った。
「今日から静雅は出かけるのか?」
「うん、おじいちゃん行って来ます」
「あぁ、気をつけて行ってくるんじゃぞ」
「はい」
組員からは亮太の方が色々と言われていた。
「静雅坊ちゃんに怪我でもさせたら、同じように怪我させるぞ!」
「絶対に目を離すなよ!分かったな?」
「何かあってみろ!お前の居場所はないからなっ!」
「分かってますって、くどいな〜」
「しっかりせい!お前しかそばにいられないだからなっ!」
もう出る時間になっている。
話はまだ、終わらないのだろうか?
「お前ら、そろそろ解放してやらんか!静雅が出かけられんじゃろ
うが」
「へいっ!」
みんなに見送られ車に乗り込む。
和泉先生は笑いながら荷物の確認と注意事項を運転中に言ってきた。
「ですから〜、海には流れがあってですね〜」
「もう知ってるからいいだろ?」
「雅くんは知っていても静雅坊ちゃんにも知っておいてもらわないと
ですね〜、今回は私はついていけないのですから…」
そうなのだ。
学校に潜入している和泉先生は荒川組の構成員なのだ。
だが、担任を持っているわけではないので、一年生だけが参加する
この臨海学校にはついていけなかったのだった。
一応現地にも数名人を送ったと聞いている。
バスの座席はランダムだったが、最近の夢のせいで亮太は静雅から
距離を置いている。
「まだ雅くんと喧嘩してるの?」
「いや、そう言うわけではないんだけど…」
最近、亮太の方が距離を置いているのだ。
それもあの時の後くらいだから、よっぽど止められたのが気に入ら
なかったらしい。
だからと行って喧嘩を容認するわけにもいかない。
波戸崎が何を考えてあんなことをしたのか不思議ではあった。
が、それはおふざけの一環だろうと軽く考えていたのだった。
海が見えてくると生徒たちの声のトーンが一段と上がった。
海での自由時間は昼からとなった。
ライフセイバーの人の話や、現地の人の話が終わると全員が海へ
と向かった。
伊東くんと一緒に静雅は釣り道具を借りると岩場まで来ていた。
「釣りってやった事ないけど…どうやってやるの?」
「えーっとね、ちょっと待っててね。」
伊東くんは大きめの石をひっくり返しては何かを探していた。
「何を探してるの?」
「餌だよ、こう言うところだと……あっ…いたいた!」
虫を手に取るとうねうねと手の中で動いていた。
ギョッとすると、伊東くんが笑いながら説明してくれた。
魚を釣るのに、この虫を針の先に付けるらしい。
虫ってだけで触りたくないという顔で見上げると伊東くんがさっと
針に刺してくれた。
「こんなので釣れるの?」
「あーー、信じてないな〜?まぁ、やってみればわかるよ」
そう言って数匹捕まえると袋に入れて持っていく。
最初は半信半疑だったが、面白いように魚がかかったのだった。




