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君は今日から家族だ!  作者: 秋元智也
26/107

25話

再び殴り掛かろうとする亮太を静止させたのは他でもない静雅

だった。


「亮太!もういい…」

「でもどうして静雅くんはそんなに無防備なんですか!もっと

 危機感を持って行動してくれないとこっちが……」

「誰もそんな事頼んだ覚えはない」

「静雅…くん……」


亮太の怒りは波戸崎へと向いていた。


「うわぁ〜怖〜い!そんなに怒んなさんなって、たかがキス

 したいって思っただけやろ?まさか初めてってわけじゃな

 いんやろ?」

「…始めてだよっ!」

「冗談のつもりやったんやけど…おもろっ!いっそやっとけ

 ばよかったかな?」

「なっ……」


驚きはしたが、別になにか大事なものを失うわけではない。

男同士なのはノーカンだろう。


それなのに、飛びかからんばかりに殺気出している人が約

1名いるのだった。


「亮太落ち着け、別に何もなかったんだから…」

「俺だってした事ないのに…」

「はぁ?何言ってんだよ。冗談にも程があるぞ?」

「へぇ〜、イケメンくん、まだだったんだ〜ウブだね!」


伊東くんはあまりにびっくりして固まってしまっていた。

軽口を言って出ていく波戸崎を亮太は終始警戒していた。

横を通り過ぎるときに笑いながら出ていったのだった。


完全にモテそばれた感がいなめない。


「ちょっと意外だったよ…女子にモテてたから経験あるんだって

 思ってた」


平然と言ってのける静雅に亮太は苛立ちがおさまらなかった。


「なぜ止めるんですか?あんな奴…」

「喧嘩したらそれこそ向こうの思う壺だろ?」

「…」


黙り込む亮太の頭をポンと撫でると横の固まったままの伊東くんを

呼び起こしていた。


「伊東くーん、大丈夫?」

「ハッ!さっきのはなに?え、荒川くん、大丈夫なの?」

「あぁ、多分おふざけだと思うよ?」

「はぁ〜びっくりしたぁ〜、押し倒されてキスしてるように見えた

 んだよ〜、心臓が止まるかと思ったよ。波戸崎くんってゲイだっ

 て噂もあるから気をつけてね」

「へ〜そうなんだ。それでも僕を選ぶ事はないでしょ?」

「そんな事ないっ……静雅くんはもっと自分を自覚すべきだっ…」

「顔のいい奴に言われたはねーはな…」


静雅が嫌味を言うと、伊東くんも納得していた。


その日の夜。

亮太は眠れなくて部屋を抜け出していた。

夜の街に来るのは久々だった。

学生服を脱げば優等生ではなく、ただの荒川組の構成員だった。

まだ酒は飲めないが、集金で店に顔を出す事はある。


「ちーっす」

「あら、今日は可愛い子が来てくれたのね〜、でも〜ここは高いわ

 よ?」


スタッフの女性が言うと奥からママが寄って来た。


「その子は別よ。今月の分よ」

「はい、確かに…」

「えーーーー!お客じゃないのぉ〜残念。こんな可愛い子なら大歓迎

 なのに〜」

「俺は興味ないんで」

「つれないわね〜成人したら楽しみにしてるわ」

「その頃には、婚約者を連れて来ますよ」

「あらっ、ませてるわね〜」


今夜も揶揄われながら仕事を終える。

こんな生活をしながら学校での勉強にも目を通す。


ノートは適当に使える女子に取らせている。

一見真面目そうな子だが、ノートの見やすさとまとめ方が上手い。

なかなかに使える人材だった。


帰るとつい静雅の部屋の前に来てしまう。

別に用があるわけでもないし、電気が消えているのでもう寝ている

だろうと思っていた。

だが、そうではないらしい。

中から微かに声が聞こえる。


側から見たら怪しく見えるが、壁に耳をつけると息を止めた。


静かな部屋の中で影が蠢く。


「んっ…んっ…ふっ………ハァ、ハァ、ハァ…んっ…んっ」


「…/////」


亮太は顔を真っ赤にしてそっと離れたのだった。

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