20話
突然のプレッシャーに息ができない。
重苦しい空気がこんなに息が詰まるものだとは思わなかっただろう。
しかもイケメンの男子高校生に睨まれただけでこれほどまでに重圧
を感じるとは露にも思わない出来事だった。
近づいてくるたびに冷や汗が伝う。
手が震えてくる。
お互い繋いだ手が次第に冷たくなっていく気がする。
極度の緊張状態が続くと、心臓をも止めれるという。
「ねぇ〜、聞いてるんだけど?どうしてくれんの?」
「…ぁ………っ…」
「…なっ…………お…脅す気?」
「脅す?誰が誰を脅すって?…俺は静雅に危害を加えるような奴は
許さな言って言ってるんだけど?」
「………かはっ……あっ…………」
「凛ちゃん…?」
いきなり過呼吸にでもなったかのように苦しみ出した。
でも、そんな事はどうでもいい。
だって、自分の罪を認めないのだから。
また、一歩近づく。
「来ないでっ!」
持っていたものを咄嗟に投げつけていた。
真っ黒なインクが入った水風船は亮太に当たると簡単に弾けた。
「ふ〜ん…これをどうするつもりだったの?」
「あ…あんたなんかに言うわけないでしょ……」
「そっか…でもさ〜横の子苦しそうだよ?早く連れて行かなきゃね?」
「来ないでよっ!」
「そこで何をしているのですか!」
廊下の奥から駆け来る教師に女子はハッと安堵を覚えた。
来たのは保険医の和泉だった。
「先生、今日荒川くんの体操着を汚した犯人が分かりましたよ〜」
「それは…彼女達の事ですか?」
「違います!私達は何も…」
「それは偶然ですね〜証拠品から犯人らしき指紋が出てるんです。あとは
みんなの指紋を採取するだけだったので、お嬢さんがた、まずは指紋の
提供をお願いできるかな?」
「…」
「…」
言葉に詰まった。
真っ青になっていく顔を見れば犯人だと自供しているようなものだった。
「あ、それとこんなものもあるんですよね〜」
『ねぇ、本当に大丈夫かな?』
『大丈夫よ、だって体育の時だって誰にもバレなかったじゃない。』
『そうだけど…私達荒川くんにはなんの恨みもないよ?』
『あるじゃない!雅くんが凛ちゃんに靡かないように言ったのもきっ
と彼よ、モテないからって裏では色々言ってるのよ。だから雅くん
が、あんな事を言ったに違いないわ』
『そうかなぁ〜』
録音された音声はさっきの会話そのものだった。
これでは言い逃れはできない。
「もう一度聞くけど、これは誰にぶつける予定だったの?」
「…荒川よ!あいつが悪いんじゃない!守る価値なんてちっともない
んだからっ!」
「ねぇ〜せんせーこいつ殺っていい?」
「ダメです、さぁ、貴方は彼を迎えにいくのでしょう?早くしなさい。
これはこちらで処理しておきます。ついでに録音したやつ私のスマホ
に送っておいてください。」
「りょーかい。ついでに汚された体操着の写真もつけようか?」
「そうして下さい」
話はつくとそのまま女子を連れて和泉先生は職員室へと帰っていった。
帰るのはもう少し遅くなりそうだった。
「それなら、もう一人を始末しますか…」
ニヤッと笑うと来た道を戻っていった。
人気のないところにいてくれて本当に助かる。
そう考えると真っ直ぐに目的の人物へと近づいていった。




