17話
何を言っても、亮太には敵わない。
そこでムキになればなるほど深みにハマる。
もう諦めればいいのに…
女子達の攻防も、先が見えていた。
泣き出す声に、それを呆れるような亮太のため息。
決着はすでに着いていたのだった。
「あんたがそんな性格だなんて…最低!」
「どうも、俺がどんな性格でもいいけど、そっちほど悪いとは
思ってないけど?」
「ぐっ………、凛ちゃん、行こう。こんなやつやめて正解だよ」
「…うぅ……うん……」
「自分一人で言う勇気のないやつに誰も魅力は感じないと思う
けど?」
ダメ押しのように言い放つと足音が遠ざかっていく。
亮太への告白を聴きながら、指圧してもらうと気持ちがいい。
「今度は足もやりましょうか?」
「足?」
「そうそう、結構効くんですよ?」
にっこり笑った顔が少し怖い気がしたのだった。
亮太が保健室に戻ってきた時にはもう、日も暮れかけていた。
そろそろ帰ろうと思いドアに手をかけたとき、中から声が聞こ
えてきた。
聴きなれた静雅の声だった。
「んっ……ちょっと……痛いです……」
「でも、ココがいいでしょ?気持ちよくない?」
「それはっ……ァッ……ひゃうっ……」
「声は我慢しなくていいからね」
「せん…せい………ぅっ……もう………むりっ…//////」
今まで聞いたことのないような声に思いっきりドアを開けた。
カーテンが閉まっているのを引きちぎる勢いで引くとそこには
涙目で見上げる静雅の姿があった。
「一体何をヤって……………はぁ?」
拍子抜けした声に、さっきまでしていた想像が恥ずかしくなっ
た。
服はちゃんと着ているし乱れているわけでもない。
素足に触れている和泉の手がしているのは足の裏にあるツボを
押しているに過ぎない。
それはよく組の中でもやっていた事だった。
がっくりと肩を落とすと、紛らわしさに苛立ちを覚える。
「和泉先生、早くして下さい。もう仕事は終わってますよね?」
嫌味っぽく言うと、大人の余裕なのだろうか立ち上がると上着
を羽織った。
「さっきまで告白されていた人の言う事ですか?」
「告白って…あれはただ……」
言い訳しようとしてハッとなって外を眺める。
そうだった、さっきの場所はこの裏手だったと気づく。
静雅も全部聞いていたのだ。
「盗み聞きとは趣味が悪いじゃないですか…」
「さぁー、青春ですね?静雅くん」
「いつもの事だろ?僕には関係ない事だし…」
興味がないというのはいつもの事だった。
前は嫌味を言えば突っかかってくるのに、最近はそれもなくな
ってしまった。
車に乗り込むとすぐに出発させた。
車に後部座席では亮太と静雅が座っている。
「お前にも好きな奴いたんだな…」
「そ、そんな事当たり前でしょ。俺だって男なんですから…」
「なら…俺の護衛から解放してもらえよ…その方が……」
「なんですか、その言い方は…!本当にムカつきますね、これ
は組長が決めた事です。勝手に口出ししないでほしいんです
が?」
「そうか…ならいい……」
勝手に解決するとすぐに視線を逸らした。
前は違った。
もっと、亮太を見ていたし、なんでも話してくれていた。
こんなに素っ気なくはなかったはずだ。
どこから変わったのだろう。
仲は良好だったはずなのに…。




