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君は今日から家族だ!  作者: 秋元智也
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15話

当時、組同士の抗争が絶えなかった。

そのせいでとばっちりを受ける民間人が多数出ていた。


組の事務所へは若い連中を特攻させて自爆させるなんてザラに

あったほどだった。


その犠牲になって片足失ったり、失明したり、運が悪ければ命

を落とした組員もいた。


まだ無数の組が存在した頃、小競り合いを止めるべく動いてい

た警官が殉職した事件が起きた。


その警官は荒川組とは懇意にしていて、過激な動きを察しては

仲介に入っていた。

まだ若いのに正義感が強く、何度も久茂の元に怒鳴り込んでく

る事もあった。


怖い者知らずとよく言われていたが伊東巡査長。

彼は直茂と仲が良かった。

友人の親に会いに来たと言いながら抗争を止めて欲しいと言っ

てきた。

もちろん止めれるなら止めたかった。

が、激化するばかりで手をこまねいているしかなかった。


そしてとある組員同士がぶつかり合って一つが飲み込まれた時、

その機を見逃さず他の組が動き始めた。


揉め事とはその渦中にいない方が漁夫の利を得やすいとはよく

言ったものだった。

潰しあったあと、それを束ねたのが、この荒川組を取り仕切る

久茂だった。


そしてこの近隣には荒川組とその傘下にある岩井組が残された

のだった。


最近少し不穏な動きがあると報告があったが、昔の組員の残党

かもしれないと噂されていた。


「まぁ〜恨みを買うのはこのわしだけで十分なんじゃがな…」


久茂は出て行った息子を亡くし、やっとの思いで見つけた孫を

手元に置く事にした。

手元に置くことが一番安全だと考えたからだった。


「直茂…お前からも静雅を見守ってやってくれ…」


いくら護衛を付けても完璧ではないのだ。

次の日、月曜が始まるとケロッとした顔で朝飯にきていた。

組員も静雅が平然としている事にホッとしていた。

なぜなら、彼が居ない時の組長のイラつき具合が半端なく恐ろ

しかったらしい。

そんな事を知らない静雅は、至極普通に振る舞った。


亮太と一緒に車に乗り込むと学校の裏に停める。

そこから正門に回り込んでなかへと入る。


昼の食事はいつもと同じように亮太と伊東くんと取った。


「もう暖かくなってきたね〜、もうすぐ臨海学校があるの知っ

 てる?」

「臨海学校?」

「荒川くんは知らないかな〜、学校案内のパンフレットに書い

 てあったでしょ?海の見える家で2泊3日のお泊まり旅行だよ」


そう言えばそんなような事も書かれていた気がした。


「その前に試験があるのでちゃんと勉強もしてくださいね」

「雅くんってお母さんみたいな事言うんだね」

「まぁ〜サボってたらすぐに成績なんて落ちますからね」

「はいはい」

「そうだね、今度一緒に勉強しない?学校終わった後でさ〜」

「お、いいね」


伊東くんの成績はクラスで上位、学年でも二十位くらいだった。

一緒にやっててデメリットは全くない。

即答した静雅に亮太が止めに入った。


「ダメです。すぐに家に帰るので休みの日にしましょう」

「なんだよ、少しくらい…」


キッと睨むと、それ以上の反論を止めた。

前に交差点で起きた事故のせいだろう。


暗くなればもっと危険度は高まる。

夜に外に出るのを許さない理由が、この過保護な保護者がいるせい

でもあった。


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