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君は今日から家族だ!  作者: 秋元智也
106/107

105話

静雅が目を覚ました時には、看護師たちが大騒ぎしていたのを

聞いていた。


視界に映るのは真っ白な天井。

そして消毒液の匂いだった。


誰の声かも分からない人の声に耳を傾けたが、聞こえてくるの

は雑音がかかった声だけだった。


「静雅くん……」


はっきり聞こえたのはその日の午後だった。

検査、検査で、何度も運ばれて異常がないか検査されて疲れた

頃に聞き慣れた声に顔を向けると今にも泣きそうな顔でこちら

を見る亮太の姿があった。


どうして…そんなに泣きそうなんだよ……


まだ声が出ないながらに口を動かすと、近づいてきて頬を撫で

る。


温かい……。


「目が覚めたんですね……良かった……」


そんなに心配させたのだろうか?

どうして?


静雅は自分の状況が思い出せない。

どうしてこうなったのだろう?

確か、卒業式の後に伊東くんのお見舞いに行って…それで家に

帰ってから…?


すっぽり抜けた記憶…なにかを忘れているような気がするけど

…何だったのだろう?


その日から亮太はずっと一緒にいるようになった。

朝から晩まで、面会時間ギリギリまでいた。


帰ったかに見えたが、すぐにどこかから入ってきたのか狭い

ベッドに潜り込んできた。


「亮太っ…狭いって……」

「温かい…静雅くんが生きてる…良かったぁ〜本当に良かっ

 た…」

「僕は大丈夫だって……それよりどうして僕はここにいるの

 か知ってる?」

「覚えて…ないんですか?」

「え…っなにかやっちゃった?」

「いえ……何も……」


唇を噛み締めると亮太はただ笑って言った。


「なんでもないです。俺のせいで命を落とすところだったん

 です」

「亮太のせい?」

「そうです。昔の約束覚えてますか?」

「あぁ、両親の仇を取ってくれって奴だろ?覚えてる…僕は

 一体何をすれば良い?」

「側にいてください。ずっと、死ぬまで俺の側に……愛して

 います」

「なっ…/////…何を言ってんだよ!」

「事実ですけど?ヤクザはやめて田舎に行きましょう。一緒

 に住める家を買ってのんびり暮らすんです。犬でも飼いま

 しょうか?静雅くん好きでしたよね?」


未来の話をする亮太は初めて見た気がする。

もう、自分の気持ちを隠さなくてもいいのかもしれない。


亮太が捕まるような事さえなければ、田舎なら…誰も知らな

い土地で二人っきりなら誰にも文句言われずに済むかもしれ

ない。


平穏な日常を願ってしまっても良いのだろうか?

こんな自分でも幸せになれるのだろうか?


両親や弟の分まで、生きていて良いのだろうか?


「僕は生きていて…良いのかな?」

「何を言ってるんですか!これから幸せになるんです。俺が

 絶対に幸せにします」

「ぷっ……なんだよそれ……プロポーズみたいじゃん」

「プロポーズですよ!いつも言ってるでしょ?俺は一途なん

 です」


唇にするキスはどれだけぶりだろう。

目が覚めるまではおまじないとばかりに額に毎日キスをして

いた。


起きてから相手の反応があるというのがこれほど嬉しいとは

思わなかった。


まだ上手く身体を動かせないし、しばらくはリハビリが必要

だった。

だが、ここを立つのはそう遠くないだろう。


毎晩横で眠る青年のおかげで順調に回復していったのだった。


そして自分一人でも歩けるようになったその日の夜。

いきなり亮太がある提案を持ちかけてきたのだった。


「今日ここを出ましょう。良いですか?」

「はっ?でも医療費は?」

「組長が支払い済みです。十分に払っていると言ってました。」

「でも、ここを出てもお金もないだろ?この身体じゃすぐには

 働けないし…」

「それも考えてあります。だから…今から俺に攫われてください」

「もう呼び捨てでいいよ。一緒に連れてってくれるんだろ?」


両手を開いて差し出すと抱きかかえられた。

体重もだいぶんと減ってしまった。


少しは筋肉をつけなければなるまい。

夜の見回りの後、荷物はすでに運び終わっているらしい。

あとは静雅だけだった。


暗い病院内を抱えられて連れ出されていた。

いつ免許を取ったのか、車に乗せられると首都高速を抜けてまっ

すぐに走っていった。

辺りは真っ暗で何も見えないが、朝になる頃には当たりは森林ば

かりの農村が広がっていた。


「どこにいくんだ?」

「もう家は見つけてあるんです」

「亮太………あのさ……ちょっと聞きたいんだけど……」

「なんです?」

「えーっと……ほらっ、身体もだいぶ良くなって来たじゃん?えー

 っと……それで……」

「夜は俺に抱かれる覚悟はできましたか?」

「……/////」


言いにくいセリフをすらっと言ってのけるのがなんだか悔しかった。


「俺はいつでもセックスしたいですよ。ですが…静雅の身体を思うと

 しばらくは慣らすだけの方がいいですね」

「慣らす?」

「俺のをいきなり入れるのは無理でしょ?」

「入れるって…やっぱり……尻にだよな?」

「他に入れる場所はないでしょ?大丈夫ですよ。俺上手いんで」


にっこり笑って言って来たセリフにバンバンと後ろから思いっきり

叩いたのだった。


「なんだよ上手いって!誰かとやったのかよ!」

「違いますって、もう何年待たされたと思ってるんですか?予習に

 は充分過ぎるでしょ?」

「あ……それは……」


そう言われてみればお互い抜く以外にはキスしかした事がなかった

のだ。

待たせすぎたのかもしれないが、やっぱり怖かったのも否めない。


その日から夜になると悲鳴じみた声があたりにこだまする事になっ

たのだが、近くに家はなく聞かれる事もなかったのだった。


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