101話
やっと帰ってきた家で、起こっていた事に一番驚いたのは久茂
だったであろう。
「これはどう言った了見じゃ?誰か説明せい!」
怒鳴った声が響き渡ると誰もが口を閉ざした。
先に口を開いたら、まるで死刑宣告を受けたみたいだからだ。
亮太は静雅に駆け寄ると脈を見る。
弱々しいが、まだ生きている。
どうしてこうなった?
ちゃんと和泉にはついているように言ったはずだ。
なのに……なぜ?
「どう言う事だよ?和泉…あんたちゃんとみてるって言ったよな?」
「それは…どうにもならなかったんですよ。貴方が組を裏切るから…」
「どう言うつもりだ?」
「現に裏切って組同士を消しかけたでしょ?それのお咎めに大事に
している人をここで皆で犯すつもりで彼には……」
「ふざけんなっ!」
和泉の胸ぐらを掴むと殴りつけていた。
「静雅に手を出したのか?お前ら、誰だか分かってやったのか!」
怒る亮太の顔には憤りがあった。
すると、もう一人怒りを覚えた人がいた。
「わしの孫だと分かって手を出したのか?なら、わしからの報復
も分かっててやったと言う事じゃな?」
「違うっ‥まだ何もしてないっ……」
「だったらこれはどう言う事じゃ!」
言い訳のしようがない。
自分で自殺したと言ったところで信じるわけはないのだ。
言い訳すればするほど余計に疑惑は深まっていく。
ただ項垂れるしかない組員におって沙汰を申し入れると言って今
は解散したのだった。
その後静雅は緊急で系列の病院に運び込まれた。
輸血の準備に看護師達が慌てて走りまわっていた。
『全部終わったら好きにしていいいよ』
思い出される言葉に頭の中がおかしくなりそうだった。
「なんでですか……どうして……」
初めから久茂は二人をこの世界から出すつもりだったらしい。
だが、それも安全を確保しなければいつまでも狙われて続ける事
になる。
徹底的に組織ごと、潰さなければならなかった。
これは亮太一人でやるつもりであった。
が、途中で武器の保管庫やそれに関わる武器の扱いを叩き込んだ
のも久茂だった。
どこからどこまでを分かっていたのかは定かではない。
だが、一つ言える事は…こんな結末を望んではいなかったという
事だけだった。
あれから着替える為だけに戻っているが、組の中は静かなものだ
った。
「雅の倅。戻ったのか?」
「はい…ですがすぐに病院の方へ…」
「そうか…すまんかったな。こんな事になって…」
「いえ……それより大丈夫ですか?」
「わしか?まさかこんなガキに心配されるとはな〜、伊達に長生き
しとらんわい。息子の時も急だったからのぉ〜」
「そう…ですね。ですが………静雅くんはまだ死んでない。絶対に死
なせない……」
「そうじゃな…あとはわしがケジメをつけさせる。そういえば部下に
使ってた奴らはどうした?」
「それなら全滅しましたよ。組を潰すって事は犠牲もつきものですよ」
「ふ〜ん、嘘が下手じゃな…静雅には優しくしてやれよ」
「当たり前です」
目が覚めたら、ずっとそばにいる。
絶対に片時だって離れない。
もう二度とこんなことのないように…。




