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君は今日から家族だ!  作者: 秋元智也
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100話

数ヶ月前。


「ちゃんと大人しく休んでいて下さいね」

「だったら他の組員に頼むからいい」

「だから、休むことも大事なんです。勝手に外に出歩く事もし

 ないで下さい。出歩くなら和泉先生に言うように!」

「分かったって!」

「本当にわかってますか?」

「分かってるって、全くしつこい!」


少し不安は残るが、他の息のかかった組員には知らせておく事

にした。


「で?どうするつもりですか?」

「どうするって、岩井組をぶっ潰すつもりだけど?」

「そうですか、静雅坊ちゃんには言わないんですか?」

「今は言わない。終わったら攫いにくるさ」

「分かりました、ですが私まで巻き込まないで下さいよ」

「分かってるって、和泉先生。あいつの事絶対に目を離さない

 で下さいよ」

「岩井久喜を殺したら組長連れて帰ってきますよ」

「そうですね、それまではちゃんと見張っておきますよ」


和泉は雅亮太を見送ると奥に消えていった。


その頃から組内部では不穏な空気が流れていた。

帰ってこない雅、岩井組の崩壊。


組長が出所するまであと、数日に迫っていた。




静雅は何も知らずにただ平和な毎日を過ごしていた。

組員達が集まり何度も話し合いをした結果、卒業式から帰って

きたら決行する事になった。


その間、雅亮太はと言うと数人の組員を連れて他の組の事務所

を襲っていた。


大きなビルの一階を占拠すると、上から降りてくるであろう組

員を煙で燻す。


エレベーターを停めてしまえば非常階段と中央に続く階段だけ

となる。

同時に煙を焚き降りてくる人全員に鉛玉をお見舞いしてやる。


一般人などこのビルにはいない。

静かになればあとは爆破の準備を整えて退避するだけ。


大きなニュースにもなった。

が、それと同時に朝忍び込んで荒川組の重役の家で幹部の遺体が

発見された事も取り上げられて、混乱をきたしていた。


「雅さん、これ大丈夫なんですか?」

「大丈夫だ。これが終わればあとは組長を迎えに行って、新しい

 組の幹部に据えてもらえるぞ?」

「マジですか!がんばります!」


本当に単純で良かった。


一般人の被害もなく、害虫を駆除できた。あとは出所してくる岩井

久喜を仕留めると、少し早いお祝いと言って車の中でビールを振る

まった。


そこに薬が入っているなど考えもしないだろう。


「終わったな!これで安泰だ。あとは久茂組長を迎えにいくか!」

「もう祝っちゃっていいんですか?」

「あぁ、あとは俺が運転するからいいよ。酔っても大丈夫だぞ」

「マジっすか!俺たちの、これからの未来に!」

「俺たちの出世に!」

「なら、雅さんは次期組長の片腕っすか?」

「あぁ、そうだな。あいつを俺の嫁にするかな」

「嫁って、あれ?好きな女っていたんすね〜俺ってきり女嫌いだ

 って思って……あれ……」


うるさく騒いでいたのがパタンっと倒れると静かになる。


薄暗いがここは人通りが少ない。

だから多少物音が聞こえても誰も気づかないのだ。


草むらに運ぶと心臓を貫いていく。

血が飛び散らないように気をつけて息の根を止めるとその場に残し

て置いたのだった。


そして夜に出てくると連絡があったので久茂を迎えにいった。


「おう、お前一人か?」

「えぇ、ちょっと今ごたついてて…」

「分かっとる、話は聞いてる。早く家に帰るぞ」

「はい…」


組長は年齢もいい歳だが、食えない男だった。

簡単に人質に出来るような男ではない。


運転しながら悩んでいると久茂の方から話をし出した。


「雅の倅だったな。お前は静雅の事をどう思ってるんだ?」

「どうって?大事な坊ちゃんですよ」

「それだけか?」

「それだけって……一体何を……」

「あいつはヤクザには向いてない。優しすぎて、この世界じゃ生

 きていけない。きっと精神的に壊れてしまうじゃろう。じゃか

 らな………あいつを連れ出してはくれんか?」

「連れ出すって……」

「あいつの事好きじゃろ?だったら攫って行ってくれって言っと

 るんじゃが?分からんか?」

「…」


一瞬言葉に詰まった。

本当にいいのか?

自分が攫って行っても?

それを言って、実はカマをかけただけと言う事もあるだろうか?


「疑うでないわ。最近度胸はついてきたが、あいつはヤクザには

 むかんでな…」

「はい…」

「これを渡しておく……持っていけ」


通帳と印鑑だった。

それは静雅の名義で作られたもので、中の金額はゼロがいくつも

ついていた。


「これは……」

「それだけあれば困らんじゃろ?」

「そうですが……」

「持っていけ、さぁ〜懐かしの我が家じゃな」


家に着くと入り口には誰もいなかった。

いつもなら出迎える組員が挨拶してくるのだがおかしな事だった。


久茂についていつもの居間にいくとそこには血まみれになった静雅

を処置する和泉の姿があったのだった。


「静雅……くん……」



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