第7話:長くて長い一日の始まり【改稿版】
目が覚めると枕元で耀が顔を覗き込んでいた、やたら顔が近いな。
「おはよ、昨日ぶりだな」
「うん……おはよ」
耀の元気が無い、落ち込んだ様子なのはわかるが、そこまで女心を察する力は俺に無い……。
ちらりと時計を見ると3時を回ったところだった、結構長く寝てたな。
「耀……いつからそこにいた?」
「1時間前……」
「そんなに……起こしてくれて良かったのに……」
「声掛けたし、揺すっても起きなくて……何か変な病気かとおもったら……」
「そ、そうか……あーうん、寝入ってたのかな!? ははは……」
(うん! めっっっっちゃ気まずい! さっきは平然としてたから耀の意志が読めない。それに、俺の方も神様のとこで話を聞いてたなんて言えないし……)
とりあえず、ごまかす様に耀の頭を抱きかかえる、いつも耀が落ち込んだ時にやってる方法だ。
「どうしたんだ耀? 元気ないじゃん」
あくまで穏やかにそしてやさしく頭を撫でながら問いかける。
「優希はやっぱり、探索者になるの?」
(あーその話か、あんな光景見たばかりだもんな)
恐らく掃除をしながら考えていたのだろう、さっき見たら割と無心でやってたっぽいし。
「まだ考え中かな? でも、俺の力で人が守れるならと思うと。やりたい方向に心は向かってるよ」
「そっか……優希は昔からそうだよね。人が困ってたら助けちゃうし、自分の身なんか省みずに助けちゃう……」
「いや、そこまでじゃ無いぞ? でもまあ、昔から父さんに言われてたからね『人を助けるのには勇気がいるし大変なこともある、助けた人に心無い言葉を言われることもある。でも誰かを助けることが出来るのは優しい人だけなんだ、だからお前は優しくそして、たくさんの人を助けれる人になれ』って」
「出た……優希のお父さんの人助け理論」
耀が微笑む、少し元気が出て来た様だ。
「まあ、その後に続く『もし人を助けてればそれが巡り巡って自分に帰ってくるからな!』ってのが無ければ最高なんだけどね!」
「でも、優希はそこまで考えてないでしょ」
「これでも、考えてるよ!? そんな無計画じゃないし!」
そう言うと、耀はひとしきり笑ってから胸に顔を埋めて深呼吸する、恥ずかしいからやめてほしいんだよなそれ。
「うん! 元気になった!」
たっぷり5分ほど深呼吸した耀の顔はすっきりした顔をしていた。
――――ぐううううううううう。
それと共にお腹が鳴る、昼前から寝てたのでいい音だ。
互いに顔を見合わせ笑うと、耀は立ち上がり俺を引き上げようと手を差し出してくる。
「まったく、いつから寝てたのよ?」
「最後に時計見たのがお昼くらいだから、3時間かな?」
「仕方ないわねぇ……、優佳さんは仕事でしょ? 私、何か作るわね」
「おっ、金曜日に続きの耀の飯だ。久しぶりだし、これは嬉しいな」
5年も向こうに居た記憶があるから、久々感がすごく強い。
「久しぶりって……、一昨日も食べたじゃない、それに私のお弁当のおかずも結構食べた癖に……」
「良いじゃないか、耀の味が好きなんだから。それに俺好みだし毎日食べたいよ」
そう言うと耀が真っ赤になる、今のなんかプロポーズっぽいな。
「ゆ、優希ぃ!? 今のって?」
――――ぐううううううううう。
再び鳴り響く俺の腹、タイミングが良いのか悪いのか……。
「あ、すぐに作るね」
「あぁ頼む」
それから耀の作る遅めの昼食(パラパラなチャーハンと卵スープ)を食べ終えると、リビングのソファで御互いに寛ぎながらなんとなくテレビを眺める。
すると、丁度今日より始まった能力検査会場が映し出されていた。
「ねえ、優希あれ行ってみない?」
耀はテレビの中に映る能力検査会場を指差す
「あれって、能力検査? 耀も探索者になりたいの?」
「うーん、なるかどうかは優希次第なんだけど、受けといて損はないかなーと思ってるの。ほら、探索許可証自体の発行は自由で無料らしいし」
「でも、めっちゃ混んでそうだよな」
「あれは東京だし、うちのところはそんなに混んでないでしょ。それにそのまま夜ご飯も食べてこようかなって思ってるのよ。優佳さんの帰り遅いし」
「あーそうか、今日母さんの帰り遅かったの忘れてた……」
「自分のご飯の事だし、ちゃんと覚えておきなさいよ」
そういって耀は膨れっ面になる。
「あーごめん、耀にご飯作ってもらう事くらいしか頭になかった……」
「まったく……もう少ししたら出ましょう、私デートの支度してくる」
その言葉にびっくりして、耀を送る為に浮きかけた腰がソファに落ちた。
その様子を見て耀は悪戯が成功した子供の顔をしてリビングから出て行った、廊下から「早く準備しなさいよー」と声がする。
「了解、じゃあ俺も支度してくるか」
腰を上げ、シャワーを浴びるため俺もリビングから出る。
それから30分後、耀を迎えに行く、チャイムを鳴らすと耀はすぐ出てきた。
出てきた耀は、髪をハーフアップにし決して大きくないが目立つフリルをあしらったブラウス、ロングスカート風パンツにアンクルストラップのローヒールサンダルを履いていた。
今まで見ることなかった、死ぬほどかわいい耀の姿を凝視する。
うん死ぬほどかわいい。
「ちょっと…優希そんなにじろじろ見ないでよ」
少し恥ずかしいのか少し身をよじる耀。うん死ぬほどかわいい。
「いやぁ耀が、死ぬほどかわいいから意識が飛んでた」
「なっ―――――」
あ、耀が瞬間湯沸かし器並に赤くなった。うん死ぬほどかわいい。
「いや、マジで『死ぬほどかわいい』以外の語彙なくなるわ……」
そう褒めると耀は「あうあうあうあうあうあう」しか発さなくなってしまった。なんか目もぐるぐるしてね?
「おい耀大丈夫か?」
「あうあうあうあうあう」
駄目っぽいな……どうしよう……。
作者です。
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