プロローグ:帰って来た神様とテスト
◇理映side◇
「うん、うん……おおよそはわかったよ……」
戻ってきた僕はアマテラス達から渡された報告書を見て、大きなため息をつく。
「うぅ……すみません……」
「いや、大丈夫だよ。大神様からも今地球で凄く大変な事が起きてるけど君達の成長の為に戻らない様にって言われてたし」
とは言っても今回の被害の大きさは著しい、代わりにこの子達の成長も著しいけど……。
「ともかく仕事がいっぱいだね……、一つづつ確認をして行こうか」
「「はい!」」
「それじゃあ……まずは疑似世界の調子は?」
「はい、急ぎだったのでニュクス一人での対応になってしまっています……」
「ちょっとだけ、私が補佐してますが、手が足りません~」
「わかった。じゃあもう一人くらい任せれる子を作るかな……」
二人に仕事を任せ素体の並んでる倉庫へ入る、ニュクスと同じくらいの歳の身体は……。
「うん、この子にしようか」
素体を選び見た目を調整していく。
「これが終わったら……あっちの世界も発展させないとなぁ……」
溜まってる仕事を考えながら作業を続けていく。
「あぁ……優希君のマッサージでも受けてこようかなぁ……」
そうぼやきながら、コンソールを操作するのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
◇優希side◇
「はい、そこまで。解答用紙を裏返して筆記用具を置いて下さい、回収に回りますので解答用紙を回収された方から昼休憩に入って下さい」
監督官の先生に言われ教室の空気が弛緩する、解答用紙を回収された後、みんなが大きな深呼吸をしたり伸びをしたりする。
「ふぅ……」
俺も周囲と同じ様に伸びをする、フランスから帰国して早1週間ちょっと。蔵間先生の課題や耀と共に里菜と鈴香に教えてもらいながら模試の対策勉強をこなしていた。
「優希ぃ~どうだったぁ~?」
疲れた顔をしている耀が現れた、俺と一緒に里菜と鈴香にしごかれてたからなぁ……。
「あぁ、手応えはかなり良いよ。やっぱり里菜と鈴香に教えてもらった効果が出てるよ」
「そうだねぇ、あれだけみっちりと勉強したもんねぇ~」
そう言って垂れている耀の頭を撫でていると4限終了のチャイムが鳴った。
「さて……今日のお昼はどうするんだっけ?」
「えっと……エアリスとユフィは生徒会に行くみたい、春華ちゃん冬華ちゃん巴ちゃんはクラスの友達と一緒にお弁当持ち寄りの昼食会だって……」
「そっか、それで朝、あんな豪華なお弁当渡されたのか」
お刺身とかユッケとか普通じゃ入ってない物が入ったの渡されたのを思い出す。
「それじゃあ、ここで食べるか。というかエアリス達が生徒会って……何で?」
さらりと聞き流してたけど、どうして二人が生徒会に行ってるんだろう?
「あぁ、そういえば言ってなかったわね。あの二人、学内の生徒機関に興味があったみたいで半期の間……夏休みまでの間は手伝いに行ってるみたい」
お弁当を出しながら耀が答える、俺は隣の空いた机を合わせて除菌シートで手早く綺麗する。
「マジか……知らなかった……」
「言ってないからねぇ、それに前期にある生徒会の大きな仕事って文化祭だけだからね」
耀に言われて思い出す、こっちの学校は文化祭が7月にあって、体育祭が10月にあるんだよな、去年は設立直後って事で両方無かったけど今年からやるって蔵内先生が言ってたのを思い出した。
「あっ……思い出した……」
「まぁ、優希の事だし忘れてるとは思ったわよ。まぁ、春休みから滅茶苦茶に濃い生活してたし、当然と言えば当然よねぇ……はい、お箸」
「ありがとう、まぁ京都行ったりフランス行ったり……合間合間でリーベルンシュタインやフィルレイシアに顔出しや簡単な公務をしに行ったりと……このテスト期間まで何も起きなかったの凄いな……」
いつもは生活してるだけでトラブ……仕事が舞い込んでくるのに。
「それは、皆が頑張ってるからよ。特にテスト1週間前はなるべく問題を持ち込まない様に、トラブル対応や公務頑張ってたし……」
「そうなの!?」
「そりゃそうよ、みんな優希の事好きなんだし、自分に出来る事を頑張るのは当然でしょ?」
しれっと言われる、いや確かに皆からの愛情は日々感じてるけどさ、こうして返されるのは予想外だった。
「帰って来たら甘やかしてあげなさい」
ニヤニヤと笑みを浮かべながら耀が言う、そういえば耀も忙しい中俺の勉強を教えててくれてたな。
「耀は良いの? 自分もテストに勉強教えてくれたし」
「私? うーん……じゃあ、あーん」
耀が口を開ける、まるで雛鳥が餌を待つみたいだ。
「ここで?」
「ん(こくり)」
頷く耀、周囲の視線がこちらに集中してるのがわかる。
「わかった……どれでも良い?」
「ん(こくり)」
耀が頷いたのを確認して新鮮なお刺身を摘まみ、醬油をつけ口へ運ぶ。
「ん~美味しっ! 次はご飯をお願いね」
そう言って再度口を開ける、ご飯といっても小さめのおにぎりなので手で取って耀の口へ運ぶ。
「流石春華ちゃん……絶妙な塩加減……ほら、優希も食べないと。」
耀に急かされ残りのおにぎりを口へ運ぶ、それと同時に黄色い歓声が上がる。
「じゃあ次は、お肉ね」
そう言って口を開ける、流石に限界だったのか男子から怨嗟の声が聞こえてくる。
「あの……まだやるの?」
「えぇ、今日は一日優希から食べさせてもらうわ」
「マジか。それは……優羽の前でも?」
「えぇ、〝一日〟だもの」
ニヤニヤとしつつも嬉しそうな部分が表れた笑顔を前に俺も覚悟を決める。
「わかった、それじゃあ精一杯甘やかしましょう!」
それから耀の隣に座り食べさせ続けるのだった。




