エピローグ:日常へおかえりなさい
「ユウキさん、今回はありがとうございました。まさかこんな事になるとは思いもしませんでした」
ジャンヌが寄って来て頭を下げる。
「お礼を言われる事じゃないけど……」
「いえ、お礼を言わせて下さい。自分の感情と向き合う勇気が出なかった私がこうして向き合い、受け入れられてるんです望外な事ですよ」
笑顔を見せるジャンヌ、元の笑顔を知らないけど今みせている笑顔は凄く晴れやかな顔をしているのはわかる。
「そっか、でも俺はきっかけに過ぎないし。ジャンヌが自分の感情と向き合おうって意志があったからこそいい方向に変われたんだよ。後は……」
耀達とわちゃわちゃとしているジャンヌの方を向く、沢山の出来た友達との別れを惜しんでいる様だ。
「そう……ですね。ジャンヌちゃんの魂……心が私を変えた事は間違いないです。でもユウキさん、なんでそんなに及び腰なんですか?」
頬を膨らませるジャンヌ、なんだろう……自分の心で思ってた使命を遂げたからなのか、心と向き合ったからなのか、凄く幼い感じが……。
「あっ……今、子供っぽいとか思いましたね!?」
「イヤ、オモッテナイヨ~」
「嘘ですね、思い切り目を逸らしてますし。良いじゃないですか、皆さんから学校や青春の話を聞いたら羨ましくなったんですよ」
「青春って……俺もなんかかけ離れた生活してる気が……」
とは言っても、普通に過ごしてきて普通に高校生活を送ってたし……途中から異世界で戦ってたからなんか違う気がするぞ?
「子供の頃に神の声を聞いてから、ずっと使命感に追われてたんですよ?青春なんてあったもんじゃないですよ!」
力強く言うジャンヌ、そんな事言って良いのだろうか……。
「と・も・か・く!! 責任の一端……大多数はユウキさんにあります!!」
「え!? いやどゆこと!?」
身に覚えが無いんだけど!?
「まぁ、そこは優希だし、説明してあげないといけないわよ」
耀がやれやれと言った手振りで歩いて来る。
「ジャンヌ、優希はそういう部分すっごくおバカだからちゃんと言った方が良いわよ」
「そうみたいね……、この際だから言うわ……」
顔を赤くして強めな視線を向けて来る、なんか漫画とかで告白してくる雰囲気だが……。
「ユウキさん! また今度、遊園地に連れていって下さい!」
たっぷりと溜めた口から出たのは意外な言葉だった。
「へ? 遊園地?」
突拍子もない言葉に変な声が出た。
「はい! ユウキさんに連れて行ってもらったテーマパーク、楽しくて楽しくて。こんな世界があったんだと知ってしまったんです! その責任を取って下さい!」
耳まで赤くしたジャンヌの言葉を受け止める、確かにジャンヌはあの時行ったテーマパークであまり出てこなかった様な。
「あはは……実はあの時、内心とっっっっっても喜んでたんですよ」
話を聞いていたであろうジャンヌちゃんが笑いながら来る、その言葉にジャンヌが余計に顔を赤くする。
「や、やめて下さい!」
「えー良いじゃないですかー! 私も楽しかったですし!」
「————っつ!!」
まるで姉妹の様に騒ぐ二人、微笑ましくて何よりだ。
「それじゃあ、二人共。日本に来たらまた行こうか、まだまだ日本は色んな所にテーマパークや動物園や水族館があるからね」
「——約束ですよ?」
「ありがとうございます!」
◇◆◇◆◇◆◇◆
それからリアさんのイベントの時に再開しようとジャンヌちゃん達との約束をして日本へ戻る、皆は今各々の部屋で荷解きをしている。
「はぁ……今回も疲れたわね~」
「そうだね~」
耀と二人でリビングのソファーに座り沈み込む、いつの間にか手を繋いでまったりとし始める。
「お二人共、寛がれるのは良いのですガ、洗濯物を出していただけますと助かりまス……」
申し訳無さそうな顔でメアリーが言う、いつの間にか背後に居るんだけど……。
「えー、メアリーも休もうよ~後で私も手伝うからさ~」
「本日は晴天でしテ……出来れバ、本日中に洗濯物を済ませてしまいたいのでス。明日は天気が崩れる予報ですのデ。それト、夕方には綴様が外務省の方と共に来られますのでそれまでには済ませておきたいのでス」
フランスから直で帰って来たのもあって特別に入国手続きをしてもらうのだ。
「そうか……それだったらやらない訳にはいかないなぁ……」
「そうね……皆の家の洗濯機もフル稼働にしなきゃね」
耀の手を引き立ち上がる、見慣れた家の光景にやっと帰って来たと実感する。
「優希?」
「旦那様?」
ボーっとしてしまっていると二人が不思議そうに顔を覗き込んでくる。
「あ、あぁ……やっと帰って来たなぁ~と思ってね」
たった1週間ほどだけど凄く懐かしい感じがした。
「そうね、そんなに長い時間空けて無いけど、久々って感じがするわね」
「そうですネ、私も帰って来たーと感じまス」
二人も感じたのか頷く。
「メアリーさーん……ってどうしたのおにーさん達?」
「待ってー冬華……下着と落としてるよーってどうしたんですか?」
両手に洗濯物を抱えた春華と冬華がやって来た。
「いや、なんとも日常が帰って来たなぁ……って思ってね」
そして皆で笑い合いながら、日常へ戻るのだった。




