第76話:再びのジャンヌ・ダルク祭り
それから2日、GWの最終日前日、中止していたジャンヌ・ダルク祭り(復活祭と称された)が再度開催される運びとなった。
とはいっても、大きなダンジョン災害の後なのでダンジョンは進入禁止となった。その為規模は小さくなりパレードとコンサートだけになっている。
「ユウキさん、本当に私も出ないと駄目なのか!?」
可愛らしいアイドル衣装を着たジャンヌが顔を真っ赤にして詰め寄る。
「うん、約束だからね」
「私はそんな約束した覚えが無いのだが!?」
「えっ……したよね?」
「はい! 私とも約束しました!」
「ジャンヌちゃんまで!?」
特に示し合わせた訳でも無い息の合い方でジャンヌを追い詰める、ここまで来てるしもう逃げれないのには変わらないんだけど、まだ回避しようとしているらしい。
「ほらほら~二人ともそれくらいにしてあげなさい。ジャンヌももう逃げれないんだから諦めて」
「「はーい」」 「んなぁ!?」
リアさんが手を叩きながら入って来る、そのまま二人の手を引いて歩き出す。
「それじゃあユウキ、先に行くわね~」
出て行った三人とは違いテントの裏手から出て、そのまま皆の居る来賓席に戻る。
「あ、優希おかえり~」
耀の隣に座りステージに目を向ける、急造のフォーメーションだけどジャンヌを入れたダンスは上手く嚙み合っている様だ。
「それにしても、大変だったよなぁ……」
「そうねぇ……って言っても今回の旅行も神様のいたずらみたいなものだったし、結果的には沢山の人を救えたし、良かったんじゃない?」
「そうだね……もう少し救えたかもしれないのは悔しい事だけど……」
「そう言ったら、全部の世界で優希が頑張らなくちゃいけないし。そんな事したら今度は優希が過労で倒れちゃうわよ」
「そうなんだけどね……」
強くなったし、もっと上手くできたんじゃないかと思ってしまう。
「少しは優希が楽できる世界にしたわよね……」
「それは……どうなんだろう」
「良いに決まってるじゃない、それに優希……今月の中頃は進学者向けの共通テスト模試に月末は学校の中間テストよ?」
「あっ……、そういえばそうだった!」
いくら探索者やその他の仕事で稼げると言っても流石に大卒の経歴はあった方が良いし、経営以外の専門分野を学ぶにも大学はうってつけだし。
「優佳さんにも言われてるんだからね、優希の勉強の事……」
「うっ……、全く勉強してない……」
「仕方ないわね……テストまでは勉強の面倒見てあげるわよ……」
「うぅ……ありがとうございます……」
丁度その時、音楽が止まり三人が自己紹介を始めていく。
それにしても、色々言ってたジャンヌが割とノリノリなのを見ていると頑張って正解みたいだったね。
舞台の上で笑顔を見せるジャンヌ達を眺めながら祭りを終えるのだった。
◇◆◇◆
「では、この度はありがとうございました。皆様のお陰で私達の国は救われました」
フランソワさん達政府の方達と握手をする、朝も近くなり外は未だに騒がしい中、ホテルの一室に集まった俺達はここから日本へ戻るのだ。
「是非、我が国に来られる際はまたおもてなしさせていただきますので。いつでもいらしてください」
「ありがとうございます、とは言っても次これるのはオルレアンの再建が終わったくらいになってしまうかもしれませんが……勉強もありますし……」
「わかりました、その際は再度こちらからお呼びしたいと思います。それと、私達があまり話してもお邪魔になってしまうので……」
そう言って政府の方々は笑顔で部屋を出て行った。
「じゃあ次は私達ね。ユウキ、今回のフランスの公演、貴方達のお陰で退屈しないで済んだわ! それに可愛らしい友達と仲間も出来たもの!」
そう言ってジャンヌちゃんを抱きしめるリアさん、ジャンヌちゃんは進学してなかった高校へ行ってからリアさんと同じ事務所に所属して歌手活動を本格的にするようだ。
他の皆と話しへ向かっていくリアさんを見ていると目の前にティナさんがやって来た。
「この度は、助かりました。カミナギさんが居なければ、リアも私もアグネスも皆無事では済まなかったです」
そう言って丁寧に頭を下げるティナさん、これからも付き合いはあるし畏まった感じでなくて良いんだけどなぁ……。
「いえ、俺達が出来る事をしただけですし、それにリアさんには無理を言ってしまいましたしね。それに、これから神楽組とのイベントもありますし硬くならないでもらえると嬉しいです」
笑いながら応えるとティナさんの顔に朱が差す。
「そ、そうですか!? で、ではユウキさんこれからもよろしくお願いいたしまっしゅ!」
思い切り噛むティナさん、ちなみにツッコミ役のアグネスさんは激務だったので今はすみっこで燃え尽きている。
「あはは、よろしくお願いしますね。さて、名残惜しいけどさ来月には日本で会えるしそろそろ帰ろうか」
そろそろ帰って時差調整を行わないと……。
「もうそんな時間なの? 残念ね」
「皆さん! ありがとうございました!!」
「あはは~皆さんまた東京で~」
アグネスさんを肩に担いだ3人が部屋を出て行く、残ってて良いと言ったのだがいい時間なので自分のホテルに戻るそうだ。
最後に残ったのはジャンヌちゃんとジャンヌのジャンヌコンビとなった。




