第74話:戦いの終わりと、シド様からの依頼。
耀の「オルレアンの街が吹き飛んだ」という発言に呆然とする、そしてその中で向かっていた皆の事が頭を過る。
『優希? おーい優希? 聞こえてる~?』
能天気な耀の言葉、街一つ吹き飛んだというのにどうして平然としているのだろう。
『あーえっと……先に言うわね。フランス軍と私達、全員無事よ』
「えっ?」
『やっと戻って来た……もう一度言うわね。私達は一応全員無事、じゃなきゃこうして落ち着いて話をしてないわ……』
「た、確かに……」
落ち着いた耀の声に俺も平静を取り戻してくる。
『それでなんだけどね……皆は今リーベルンシュタインに居るわ』
「リーベルンシュタインって……そんなに魔力を使って大丈夫なのか?」
『いや、もうクタクタよ……それとリリアーナが小さくなったわ』
「えっ?」
本日二回目の硬直、どうしてだ?
『えっと……、詳しい事は後で話すけど……私に魔力を譲渡してくれたからね』
「そっか、わかった。それじゃあそっちに合流したら補充してあげないとな……」
『あっ、ずるーい! 私も!』
バタバタと音が聞こえる、この様子であれば大丈夫そうだ。
「わかったわかった、先に敵の確認をして来るから……って耀はどこにいるの?」
『私? オルレアンから少し離れた所……ジョルジュさんのビデオメッセージを届けた所よ』
「了解、じゃあここを出たらすぐにそっちに行くね」
『はーい、待ってるわね~』
通話が切れたので二人の元に戻る、それから事情を説明して先に戻ることにした。
「与一・鬼一。後は頼んだよ」
「はっ! 主殿!」
「おう! 任せてくれぇ!」
「それじゃあ、『——転移!』」
視界が一気に明るくなり地面に着地する。
「あっ、優希きたー」
椅子に座り看護師さんに支えられジュースを飲んでいる耀が居た。
「耀……大丈夫?」
「だいじょうぶ~魔力がもうすっからかんで、くらくらしてるだけ~」
「わかった、すみません。後は引き継ぎますね」
看護師さんに断りを入れて耀を連れてリーベルンシュタインへ戻る。
「お待ちしておりましたユウキ様」
「メイド長……こんにちは」
「メアリーさんよりお話は聞いてます、それと国王様にはお話は通してありますので、こちらのお部屋をご利用下さい」
「ありがとうございます」
通された部屋は簡素な部屋で簡単なお風呂とベッドがあるだけだった。
「という訳で、リリアーナを連れて来るね」
「うん、いってら~」
それからリリアーナを連れて戻り、魔力補充を行うその後は二人をリーベルンシュタインの自室に戻し使った部屋の後片付けをする。
「御主人様」
「びっくりした!? メアリーか……」
「はイ、お手伝いに来ましタ」
「ありがとう、手配とかも助かったよ」
手を止めてメアリーの頭を撫でる、触り心地の良いメアリーの頭を撫でていると半歩寄ったメアリーに押し倒される。
「あのーメアリーさん?」
「後が控えてますのデ……」
「後……?」
メアリーの肩越しに扉を覗くと他の皆が隙間から覗いていた。
「ひえっ……!?」
「それでハ、いただきますネ……」
メアリーの柔らかい唇を押し付けられ、何かを流し込まれたのだった。
◇◆◇◆
「あぁ……腰が重い……」
「大丈夫か?」
「あ、大丈夫です……すみませんこんな格好で」
見えるとこの噛み傷や吸い後は治したのだが体が重い、あの後とことん搾り取られた俺はシド様の晩酌にお邪魔しながら、今回のフランス軍の転移についての話をしていた。
「良い良い。いやぁ、先んじて場所を用意しておいて正解だったな」
「ありがとうございます、お陰で皆を無事に避難させられましたよ」
ワインをシド様のグラスに注ぎながら言う。
「しかし、お主の嫁達はもの凄いのう……同時に転移してきた残敵も瞬く間に倒してしまったし」
「あーあはは……おれもびっくりする事ばかりですよ。皆の成長は著しいですから」
「そうじゃのう……ところでそろそろエアリスとの子供は出来そうか?」
いきなり舵を切った言葉に、飲んでいたジュースをむせる。
「ゲホッゲホッ……シド様、いきなり何を!?」
「いやいや、さっきまで滅茶苦茶盛り上がってたじゃろ? それに孫の顔を早く見たいしのう……」
「あーそうですね……そこら辺は話し合ってませんが、エアリスが進学をしたいかどうかによって考えようかと……」
その内しっかりと話し合わないといけなさそうだよな……。
「そうか、ユウキの世界はもう一つ高等教育機関があるんじゃったな」
「はい、エアリスが何をやりたいかという事になりますが……」
「そうかそうか、うむむ……我が国も導入すべきか……」
「大学をですか?」
「それの前にもう少し専門的な事を学ぶ教育機関じゃよ、この国の教育については知っておるじゃろ?」
「そうですね、俺達の世界で言う中学校までですもんね」
「そうなんじゃよ、魔国の者達は寿命の長さもあって長らく様々な事柄を学ぶ学舎が多いと聞くのでな」
「そうなんですね……あまり気にした事無かったけど、確かに魔族の皆は寿命長いもんなぁ……」
「という訳でな、お主の領地に〝新しい教育機関〟頼んだぞ?」
ニヤリと笑うシド様。
「えっ……マジですか?」
「マジじゃよ、エアリスにまだ子供が出来んのであれば、時間もあるじゃろ?」
「うっ……いやでも俺も学校に行くんですが……」
「ふーむ、それもそうじゃな……」
「じゃあ……」
「その内に魔国の学都へ大使として行ってもらおうかの?」
「へっ?」
「と、言う事で、計画はしばらく先になるじゃろうが頼んだぞ!」
「うぐっ……わかりました……、はぁ……」
なんか納得いかないけど、色々と融通してもらったし受けるしか無いか……。




