第70話:夢の終わり③
「主、こっちだ」
少年の鬼一に先導され教会の裏手に向かう、ぐるっと回る間に詳しく聞くと出る際にに一部を壊してしまったようだ。
「い、いや弁明をさせてくれ。壊してしまったというのは偶然でな、地下道から出た際に暗くて見えず躓いてしまったんだ……それで額を打ち付けた所がそのまま崩れてしまったんだ……」
鬼一が指で示す所はぽっかりと穴が空いていて、根元のレンガが崩れたみたいだ。
「あー、地面が崩れてるのか……どれどれ……」
土魔法で土をどかして整地をする、すると明らかに隠された地下室っぽい場所が出て来た。
「これは……ジャンヌちゃん、さっき送り届けてくれた軍人さん呼んで来れる?」
「は、はい!」
「与一、警護お願いね」
「かしこまりました」
二人に軍人さんを呼びに行ってもらう間に風魔法で流れ込んだ土と砂埃を外へ出す、鬼一も大人モードになってもらいながら木箱を外に出していく。ちょっとこれは世紀の発見になりそうだ……。
「主よ、どうしたのだ、いやに慎重だが?」
「あぁ、鬼一が発見したものが凄いもの過ぎてね……」
「ふむ……これは絵か?」
壊れた木箱から品物を出しつつ綺麗なレジャーシートの上に並べていく。
「あぁ、そしてこの見覚えのあるマーク……」
布に包まれた石像から鉤十字の木箱に入った金銀食器や絵画、ここにあるものだけでちょっとした個展が出来そうな量だ
「価値とかわかんないけど、ここに隠していくのは後で取りに来るつもりだっただろうしね」
「そうなのか、確かに宝物と言った様相でもあるな」
丁寧に整理しつつ汚れてしまった部分や漏水してしまった物は別にする。
「ユウキさん、連れてきました……って凄いですね……」
ジャンヌちゃんが目を丸くする、後ろに居た軍人さんも開いた口が塞がらないと言った感じだ。
「すみません、まだ中にありまして、美術品を補完できる場所は無いですか?」
「は、はい!! 至急、応援頼む!」
慌てふためく状況で俺達は運び出しつつ道を開いて行く、目的はこの下のダンジョンなので余計なものを早くどかさないといけないのだ。
◇◆◇◆
「と言う事で、後は頼みました」
「「「「「はい!!」」」」」
美術品の移動や木箱の開封、重すぎる石像は俺達が移動したりしてやっと地下へと潜る準備が出来た。
「しかし、大変だったね。隣が市役所とは知らなかったのもあったけど、職員さんが大量に出てきた時はびっくりしたよ」
「はい……それにまさか地下室の深さがあそこまで深いなんて、知らない人が居たら落ちてしまう所でしたね」
今は俺が土魔法で作った階段を降りながら下へと降りていく。
「主よ……この者、先程からピクリとも動かないのだが大丈夫だろうか?」
鬼一がもう一人のジャンヌを指差す、背後に回って顔を覗くとスヤスヤと寝ていた。
「あー大丈夫。寝てるみたい……」
「そうか、起こさないで大丈夫か?」
「大丈夫、寝てる方が運びやすいだろうし」
そして一番下に到着して鬼一の案内で進んで行く。道中の分かれ道で鬼一の置いたケミカルライトを見つける。
「ここまでですな、これ以降は進めなかったのだ」
「うーん……特に違和感ないけどなぁ……」
先頭に変わり進む、しばらくするとまた分かれ道が出て来た。
「とりあえず……『——探知』」
探知で周囲を調べながら進む、地形の把握は出来ないけど魔力の濃度的に左側の道が正解っぽい。
「よし、左かな」
「そういうのもわかるんですね……てっきりモンスターの位置だけかと」
「うん、まぁ魔力を感じてるからその中で強い所を進んでれば良い訳だからね」
そう説明するとジャンヌちゃんが「へぇ~」と感心していた。
◇◆◇◆
ほどなくして地下には思えない様な広い空間が現れた。
「うっ……」
「趣味が悪いな……」
「居るだけで気分が悪くなるな……」
俺達の視線の先には祭壇があり、女性が一人磔にされている。そしてこの空間の壁一面に腐敗した人が磔にされている。
「縺ッ縲∵叛縺幢シ�シ�(は、放せ!!)」
「おおっ!? 急に生きが良くなったな」
鬼一に捕らえられていたジャンヌが暴れ始める、何か嫌がっている様な……。
―――—パチパチパチ。
「「「!?」」」
突然の拍手に驚き、音の方へと向く。
そこには騎士の格好をした奴と片眼鏡を着けた老紳士が居た、どうやら拍手をしていたのは老紳士の方だ。
「まさか、ここが見つかるとは思いませんでした! しかも鍵たる実験素体1号を持ってくるとは!」
大仰なポーズをしながらこちらを指差す、なんか動きが役者みたいだな……。
「実験素体……? ジャンヌの事か?」
正直気持ち悪いけどそれを抑えながら問いかける。
「えぇ! えぇ!! この世界の住人は頭が悪くて辟易してたんですが! アナタは!! 洞察力が優れている様だ!!!」
いい加減鬱陶しい……斬っても良いかな?
「斬っても良いですよ? 私には届きませんから……」
「じゃあ、お言葉に甘えてっ!?」
――――ガギンッ!!
鈍い金属音が響く、傍にいた騎士の男に止められたのだ。




