第65話:元気付ける方法。
「うーん、不味いですね……」
朝食を食べ終えた俺達は今日の戦いの作戦会議に赴いていた。その会議場でジョルジュさんはジャンヌを見て口を開いた。
「へ? どうしたんですか?」
「ジャンヌさん、貴女顔色が悪いですね……作戦の要たる貴女がそんな事では今日は攻略戦が出来そうにないですな」
そう言われ、慌てるジャンヌ。
「い、いえ! 大丈夫です!!」
「いえ、看過できません、今日の戦闘は無しです。それと一日休みにしますので体調回復に努めて下さい」
「は、はい……、すみません……」
萎れていくジャンヌ、それから手早く確認事項を済ませ会議は修了した。
◇◆◇◆
作戦会議の終了後、俺はジョルジュさんに呼ばれ司令部に残っていた。
「ユウキさん、すみません残っていただきまして」
ひっそりと静まり返った司令部で向き合う。
「いえ、大丈夫ですよ。こちらもすみません悪役みたいな事をやっていただきまして……」
「いえいえ、損な役割を受けるのも私たち大人の仕事ですから。後は任せました、色男さん」
「止めて下さいよ、俺だって女性の扱いは得意じゃないですし……」
「はっはっは、あれだけの綺麗どころを妻に迎えておいて御冗談を」
「ホントなんだけどなぁ……」
笑うジョルジュさんにぼやく、正直俺は奥さん達から好いていてもらえるから問題が無いだけで、女性の扱いが凄く手馴れてるとか、女性を口説きまくるチャラ男じゃ無いんだけどなぁ……。
そんな事を思いながら司令部を出た、とりあえずジャンヌを探すか……。
探知でジャンヌを探し出し向かう、その途中リアさんが待っていた。
「やっと来たわね」
「あーごめん、ジョルジュさんと話してた」
「それにしてもやる事が大胆ねぇ……」
「あはは……やっぱりそう思う?」
「そうよ。一国の軍隊を思いつきで一日足止めするなんて……」
「あー、それはジョルジュさんとの意見が合致したからね」
昨晩の襲撃で準備出来てない包囲網の一部を今日一日かけて塞ぐ予定なのだ。それで、俺が現場に居ると再度敵を引き寄せる可能性があるかもしれないとの事で今日は待機するという判断になったのだ。
「でも、ジャンヌも幸せ者ねぇ~弾丸日本旅行なんて……私もしてみたいわ……」
「日本に来た時って自由時間無いの?」
「あるわよ? でも、外に居ると人に囲まれるのよ……」
肩を竦めてやれやれといった顔をするリアさん。
「そうなの?」
「えぇ、良く日本人はスターが歩いてても関わって来ないとかあるけどアレは嘘よ。特にテーマパークとか無理ね……」
「そうなんだ……じゃあ、今度日本に来たら対策するし遊んで来たら?」
雛菊さんの魔法鎧で使われている技術を使えば回避できそうだし。
「ほんと!? 絶対よ!!」
喜びを露にするリアさん、先程まで落ち込んだ顔が嘘のようだ。
「うん、すぐには無理だけど前もって連絡をくれれば良いよ」
「わかったわ! 楽しみにしてる!!」
そう言ったタイミングで、アグネスさんがキャンピングカーから出てくる。
「終わったわよリア、それとお久しぶりねカミナギさん」
「お久しぶりです、その後の調子はどうですか?」
髪をかき上げて傷のあった場所を見せてくるアグネスさん。そこは傷痕も無く綺麗な額があるだけだ。
「うん、前より元気になったわありがとうね」
「いえいえ、それなら良かったです」
「それじゃあ、ジャンヌちゃんの準備は出来てたし早く連れて行ってあげなさい、色男クン」
「そんなんじゃ無いですって……」
「「えー嘘だぁ~」」
くすくすと二人に笑われる、それを背に受けながらキャンピングカーの中へ入るとキョトン顔のジャンヌが待っていた。
「えっと……ユウキさん?」
最近よく見たカジュアルルックの服装と違い、リボンとフリル多めのワンピースを着てしっかりとメイクをしている。
「うん、似合ってるね」
「これは……どういう事です?」
困惑しているジャンヌちゃんに今日これからの事を説明をする。
「えっ、でも……」
「大丈夫、ジョルジュさんに許可は貰って来たし。いざとなれば皆の所に転移すればすぐにでも帰れるしね。それにジャンヌが楽しい気持ちになる方がもう一人のジャンヌの力も弱まるからね」
食事中にアマテラスさんから受けた改善方法の一つに、ジャンヌ自身が楽しい気分や気持ちといったプラスな気持ちになれば向こうのジャンヌに引っ張られ辛くなるという事らしい。
「で、でも……」
「はいはい、抗議は後でね」
そう言ってジャンヌちゃんの手を握り、急遽日本へ転移する。
「へっ!? えぇぇぇぇ!?」
「うん、到着したね。さぁ、行こうか!」
「こ、ここは!?」
「時間無いし、急がないとね!」
夕暮れのパークへ向けて、ゲートを潜るのだった。




