第61話:後顧の困惑と尋問
翌朝、トロアを出発した俺達はパリの主力との合流に向けて大きく迂回して進む。
「そういえば、トロアに関してあんなゴツイ城塞にして良かったんですか?」
「えぇ、大丈夫ですよ、それよりも無理を言ってすみませんね……」
「いえ、あれ位の作業ならそこまで大変じゃないんで大丈夫なんですが……本当に塞いじゃって大丈夫でした?」
「はい、首相からも許可はいただきましたし大丈夫ですよ」
俺が心配してたのは城塞化したトロアから伸びる主要道路の完全破壊だ。
包囲戦と言う事で道を破壊して無人となった小さな町から家や瓦礫を拝借して高い壁を作り。一部の低地は川をせき止め水没させるというハチャメチャな作戦だ。
「流石にこれ位しないと完全に殲滅できませんからね」
「確かに、今回は数が多いですからね……」
西は今耀達が、南は今晩俺がやるので完全包囲できるだろう……。
「という事で、頼みましたよ、英雄さん」
そう言って笑うジョルジュさん、俺は今フランスの新聞やテレビで滅茶苦茶持ち上げられてるのだ。
「あー、そこまで仕事はやって無いですし……恥ずかしいですよ……」
「いえいえ、ジャンヌさんと貴方の映った一面は飛ぶように売れてますから……」
そう言ってインターネット配信を見せて来る。
「うわぁ……なんですかこれ……」
なんかCGやら映像効果でド派手に俺が敵を倒してるシーンばかり映る、正直ここまで凄いことしてないのにエフェクトが凄い……。
ジャンヌの方も光りを纏って周囲へ威光を振りまいてる様な感じだし、凄いな……。
「ははは、プロパガンダとしては最高じゃないですか。それにジャンヌさんの権威もここで付けておけば何かあっても守りやすいですし」
「確かに、そうですが……というかなんですかこの円卓の騎士とか……」
しかもこれ、先日、宣材写真の撮影会してた時のじゃん……。
「トモエさんが張り切って、インタビューにも応えてましたよ」
昨日一昨日から別行動してると思ったら……。
「こう言う時は日本語で……ドンマイ? でしたっけ?」
「あーあはは……、あってます……」
大きくため息をつくのだった……。
◇◆◇◆
その日の夜オルレアン南側、ブロア周辺をからの作業をしていると、いつの間にか周囲に敵が増えて来た。
「皆さん、退避して下さい」
「えっ?」
「敵が接近して来てます、殿は俺が引き受けるので皆さんは早く離脱を」
敵が来る事を伝えると一緒に作業をしていた作業員たちが慌てだす。
「わ、わかった……すまない!」
「機材はこちらで預かりますので逃げる事だけに重点を置いて下さい」
「あぁ! 皆、撤退だ!!」
慌ててトラックに乗り帰っていく、一方敵は俺を包囲する様に動いている。
「敵は俺狙いか、皆を巻き込まなそうで良かった」
いつの間にか包囲し終えた敵が姿を現す。
「ふむ、貴様が化物か……只のひょろガキじゃないか、なんでったんで我が皇帝は気にしてるんだ?」
なんか身の丈3メートルの大男が現れた、他の敵も皆身長が高い。
「何だぁ? あまりに俺達がデカすぎて声も出ないのか?」
「ぎゃはは、ちげぇねぇ!」
(うーん、皆の位置がまだ近いな……)
「なぁアニキ! このままやっちまいましょうぜ!」
「そうだな。ここで手柄を立てれば、良い土産だ」
サーベルを抜いて近寄って来る、距離的にもう少し引き付けるか。
おおよそ3キロほど離れたな……。
「よしっ、大丈夫そうだな」
「「「「「はっ?」」」」」
空間収納から刀を抜き部下をバラバラに、リーダらしき男の膝下を落とす。
「おまっ! おまえぇ!!」
「さて、情報源が向こうからやって来たという事で、色々と聞いて行くか」
空間収納からガスマスクを着ける、そして追加でアンモニアの瓶を取り出す。
「な、なんだそれ! 臭ぁ!? いや痛い!?」
「ふーん、匂いは感じるんだ。それに痛みもある……」
「さて、質問です。君達のリーダーは?」
「い、痛い! 頼むからソイツを引っ込めてくれ!!」
バタバタと逃げそうなところを土魔法で抑え込む。
「答える? なら引っ込めても良いよ?」
「わ、わかった!! わかったから!! 喋る喋るから!!」
空間収納にしまって、残ったアンモニアも風魔法で吹き飛ばす。
「うわぁ……くさいねぇ……」
「お前がやったんだろ!?」
「敵なんだから容赦しないさ」
「うぐっ……」
黙り込んだ敵の前にしゃがみ込む、その上で質問を聞き直す。
「さて、もう一度聞くね。お前達のリーダーは?」
「………………」
「オーケー、もう一度だね」
空間収納からガスマスクを取り出すと慌てだす。
「はいじゃあ、答えてね」
「はん! 聞いて驚くな! 俺達のトップはフランス皇帝のナポレオンだ!!」
「ナ、ナンダッテー」
うん、知ってた。
呆れながらもう少し情報を引き出そうと思い誘導を続けるのだった。




