第57話:オルレアン奪還に向けて
翌日の朝、駐屯地を出発した俺達は朝靄の中を進軍し始める。
「それじゃあ皆さん、よろしくおねがいします」
上空にて無線機から声をかける、下で動き出す約3000人程の部隊と共にランスからオルレアンに向けて軍を進める。今回の目的地はトロアだ。
「まぁ、オルレアンからの補給が無い場所だし、ジャンヌちゃんとリアさんの初戦には丁度良いだろうな」
敵が戦車を使えるとは言っても、基本的にアスファルトで動かすと地面の方が壊れてしますのでかなり復旧には時間がかかる。
それに不整地が踏破できると言ってもそこにつながる道を爆撃されてしまえば、不整地を進めるが戦車と一緒に動くとなると軍の移動は遅くなる。
それに対してこっちは、俺達が昨日の夜間に道路の修復と補強をしたので、戦場までは2時間もかからない程スムーズに進むだろう。
「それに、各地域に皆が援軍に向かったし。現地の軍ともリアルタイムに進行してるから切断と抑え込みには成功するかな……」
今頃西部地域でも都市の奪還戦が始まっている事だろう、フランス軍の半分は南西部に送ってもらったし。
「まぁこっちは、爆撃機とおんなじ位の殲滅力あるからなぁ……」
夜の間に取り返した二つの街、生存者は居なかったので思い切り攻撃したのだが最早怪獣の攻撃並みだった。
(その後は復興して元通りになったけど、人一人も居ないのに建物だけ綺麗なのが凄く怖かったな……)
そんな事を考えつつ索敵をしながら進む、道中出会う敵はアミリア達が倒しに行ってくれている。
「見えて来たな……」
快晴の空に対して街は燃え、屍人と呼ぶ事になった魔物で溢れかえっている。
「さてと……『——超広域探知』」
街の上空で魔力を引き延ばし探知をする、やっぱりと言うか生存者は居ない様だ。
「そういえば、処刑道具も無いんだよな……移動したのかな?」
(それと、城塞化されてるな……)
街の内部に通じる主要道路には瓦礫が積まれ安易に進行出来ない様になっている。
「全員に通信します、街の入り口は瓦礫で封鎖されてます。街の入り口は瓦礫で封鎖されています」
繰り返して言う、すると無線機の向こうから声が上がる。
「それでしたら、思い切り吹き飛ばしてしまいましょうか、生存者は?」
司令官のジョルジュ・ゲンズブールさんがさらっと言う、あっさりとした人で決めるのが早い人だ。
「残念ですが……」
「そうですか……それでしたら思う存分にやれますね。砲撃隊、前へ」
言うか早いか即決で決めて戦車を前に出す、それに応じて全体の行軍速度を下げる。
「では、30分後に戦闘を開始します。最初は戦車部隊で砲撃、その後は座標の位置に砲撃支援を。歩兵の皆さんは小隊単位で街路の制圧を掃討しますよ」
「「「「「了解!!」」」」」
「さて、それじゃあ俺達も仕事に移ろう。A班B班は街の周囲を警戒して、敵の援軍や逃走を阻止して」
「「「「「了解!!」」」」」
「リアさんとジャンヌちゃんの護衛隊も一応注意はしててね」
「「「「「はい(えぇ)!」」」」」
A班は耀、鈴香、里菜、セレーネ、リリアーナ、結菜、酒吞の7人。
B班はユフィ、エアリス、ミュリ、ユキ、シア、アミリアの6人。
護衛隊はメアリー、春華、冬華の三人となっている。
「その前にっと……」
初戦を迎える二人の元へ降りて行く。
「あっ、優希おにーさん!」
「どうしたんですか?」
駆け寄って来る冬華を受け止める、春華は盾を持って駆け寄って来る。
「リアさんとジャンヌちゃん、初めての戦いでしょ? だから様子を見にね」
そう言うと冬華は少し不満そうな顔をする。
「むぅ……たまには私達もかまってよ~」
頭をぐりぐりと押し付けてくる、春華も俺の服の裾を握っている。
「そうだなぁ……今日の戦闘で二人をしっかり守ったらね」
「むぅ……約束だよ!」
「わかったよ、春華もそれでいい?」
「お、お願いします……」
春華の頭を撫でる、すると気配は背後に現れる。
「……メアリーもな」
「ありがとうございまス、ご主人様。驚いてくれないのですね(ボソッ」
スッと消えて行った。
「メアリーおねーさん、悔しそうな顔してたね……」
「流石に今は警戒中だしね、絶えず探知はしてるし気付くさ……」
それにメアリーの使ってる、香水の香りはわかりやすいからね。
「はい、じゃあリアさんとジャンヌちゃんに声掛けして来るね」
冬華を降ろして春華を抱きしめた後二人の元へ向かった。
◇◆◇◆
「二人共、大丈夫?」
メイクルームとかを備え付けたキャンピングカーに入る、天幕だと設営も電気も大変という事でキャンピングカーを用意してくれた。
「あ、ユウキさん! さすがにこんな大舞台は初めてだからね……緊張してるよ……」
「えぇ、私は慣れておりますが。ジャンヌはおろおろとしておりました」
「あはは……流石にジャンヌは慣れてそうだね」
「えぇ、これでも最前線で突撃してましたから」
胸を張るジャンヌ、流石に馬は無いし突撃されるとこは無さそうなのが幸いだな。
「あはは……突撃しないでよ?」
「そんな事はしない……と思う」
「ジャンヌちゃん、行きそうになったら止めてね……」
「えぇ!? む、無理ですよぉ!?」
「そうだな、ジャンヌになら止められるだろう。それに私はあのフリフリは屈辱だ」
「そ、それは私も恥ずかしいけどぉ……」
「えー可愛いじゃない。私はジャンヌと一緒に歌うの楽しみよ」
抱き付くリアさん、服も既にアイドル用衣装だ。
「どう? 似合ってる?」
昨日見たジャンヌちゃんの衣装の色違いだ、二人に合わせて作ってるしジャンヌちゃんの衣装と合わせると凄く映えるだろう。
「うん、似合ってる」
「ありがとう! ジャンヌも早く!」
「ふぇぇ!?」
そうは言いつつもジャンヌの手が動き衣装が変わる。
「うん、二人共良く似合ってる。合わさって数倍可愛いよ」
そう言って緊張をほぐす様に笑って言う。
「あーあはは……ありがとう」
「あ、ありがとうございます……」
二人共恥ずかしがる、似合ってるし良いと思うんだどなぁ……。
「失礼します、皆様準備はよろしいでしょうか!!」
外から女性軍人さんが声をかけて来る、二人も頬を叩き気合を入れる。
「よしっ、時間だ……二人共頑張って」
「「はい!!」」
二人の背中を押して歩み出た。




