第55話:聖少女《アイドル》の作り方②
翌日、ジャンヌとリアさんの魔法鎧を取りにリーベルンシュタインへ向かう。
「おはようございますユウキ様」
「おはようございますメイド長」
互いに挨拶をしてヒナギクさんの元へ案内される。
――コンコン。
「反応無いですね……」
「そうですね、昨晩遅くまで作業を行っておりましたし寝ているのかもしれません」
まぁ特急で作ってもらってるしな……。
「うーん、どうしましょう……」
「じゃあ私が、中を確認してきます……」
そう言うと廊下の床板を外して床下に入って行った。
「いや、普通に入れば良いのでは?」
「それだと、面白みが無いじゃないですか」
天上からにゅっと生えてくるメイド長、いやここ城のプライベートスペースで天井低いからって何で天井から!?
「いえ、最近驚いてくれなくなりましたので……」
「あーはい……凄く驚きました……」
驚き過ぎて変な声出そうになったし……。
「そうですか、頑張った甲斐がありました」
嬉しそうに鼻歌を歌いながら扉を開ける、今までの流れは何だったのだろう。
「失礼いたします」
スッと入っていくメイド長、流石に俺は部屋の外で待つ。
暫くして、メイド長が出てきて手招きされる。
「どうしたんですか?」
「いえ、中で大分危ないものを見つけまして……」
「危ないもの? 爆発物とかですか?」
「そうでなくて……とにかく中へ……」
室内に通され導かれる、寝ている雛菊さんの隣を通り作業部屋に入るするとそこには朝日に照らされた、全身スケスケのローブが存在していた。
「……造り途中ですかね?」
「いえ、ここの書置きには完成品なので持って行って欲しいと書いてあります。それと使用方法も」
「えぇ……」
渡された紙にはそのローブの使用方法が書かれている。
「えっと……これを着て、胸のとこにある宝石を叩くと身体にぴったりとくっつき見た目の形態変化が行われる。形態は要望のあった2種類と普段着用の1種類が登録されてます。尚これを着てる時は透過せず魔法『謎の光』が発動して隠れるようになってます。だって……詳しい事はこのファイルにあるみたい」
置いてあるファイルを持ち上げパラパラと捲る、使い方や衣装のデザインなんかもしっかり描かれてる。
「なんと……見た目とは違いすごいですね……見た目とは違いますが」
「うん、見た目の抵抗感以外は完璧だと思う……」
そして、ファイルを捲り終えるともう一枚の紙が落ちて来た。
「ん? 『もしユウキさんやお嫁さん達が必要であればお嫁さん用の〝謎の光″無しの簡易化したものを用意できるから連絡してね』」
「まぁ……ユウキ様はそのようなご趣味を……」
「いや、確かにコスプレは興味ありますけど……皆の意見を聞かないといけないし……」
「そうは言いつつも良いなとか思ってますよね?」
「うぐっ……」
「それでしたら、私の方からヒナギク様にはお伝えしておきます、ユウキ様が欲しがっていたと……」
そう言われたら仕方ないよな……うん、しかたない!!
「お願いします……」
「了承いたしました、では私はこちらのお部屋を片付けておきますので、ユウキ様はお先にお戻りください」
そう言って、テキパキと手入れをしながら道具をしまっていくメイド長。
「わかりました、雛菊さんには代金の支払いでまた近々来ますので、伝えておいてください」
「かしこまりました、御武運をお祈ります」
メイド長に見送られ宿へ戻るのだった。
◇◆◇◆
それからなんとか説得してジャンヌに着てもらい車に乗る、向かう先は昨日行った駐屯地だ。
「うぅ……本当にこれ大丈夫なんですか?」
もぞもぞと身じろぎをするジャンヌ、恥ずかしそうにしてるのだが俺の目には普通のへそ出しTシャツにゆったりとしたデニムパンツのストリートファッションっぽい姿である。
「うん、特に普通の服にしか見えないんだけど。ジャンヌちゃん的には違和感あるの?」
「はい……見えない部分に布があるんですよ……」
そう言ってお腹の部分を触る、すると見えていたお腹の部分が半透明になる。
「へぇ……でも見えないって冬華も言ってたし、大丈夫じゃないかな?」
女子の中では一番眼の良い冬華が言うなら心配は無いと思うんだけど……。
「それにこのもう1パターンのフリフリ! こんなの聞いてないですよ!?」
魔石を叩くと衣装が変化する、アイドルアニメ並みのフリフリ衣装へと変化する。
「ジャンヌさん出て来なくなっちゃったんですよ!?」
「まぁでも、日本のアイドルって言うとそんな感じだしなぁ……」
白を基調としているし凄く似合うんだけど……。
「うぅ……もっと大人びた衣装がよかったですぅ……」
「それは今後追加してもらえる様にするからさ、今回は我慢してくれると良いな。リアさんとも合わせた衣装だし」
「うっ……ユウキさんがそう言うなら、我慢します……」
まぁもう1パターンもあるけど……まぁそれは、ジャンヌ次第だろうな……。




