第53話:フランス政府との話し合い・下
「と、いうわけで。お話を続けさせてもらいます」
座り直し、話を続ける。
「えっと……実はもう既に我が社は、とある方から依頼を受けているのです」
「と、とある方でしょうか?」
フランソワさんが、少し頭を押さえつつ聞いてくる。
「はい」
「それは、正式な国の依頼よりも重要なんですか?」
「はい」
「差し支えなければ、どんな方か聞いても?」
「えっと……驚かないで下さいね」
「は、はい……」
真剣な空気を纏わせながら言うと、真面目な顔でこちらに向き直る。
「それは……ジャンヌ・ダルクです」
「「「「「はぁ?」」」」」
キョトンとした顔になる、一体何を言ってるんだとも取れる顔だ。
「我々は遊んでるのでは無いんだぞ!!」
「そうだ! いくら国が危機的な状況とは言え過去の聖人が現れる訳無かろう!!」
そうですよね~俺だってアマテラスさんの解説無きゃ信じられないし……。
だからといって、国を救いたいと思った魂だけの存在も、俺達に負担をかけまいと頑張った友達をなかった事には出来ないからね。
「そう言う反応はわかってました、ですので明日本物のジャンヌを見せてあげますよ」
「何故今日見せられないのだ!」
「そりゃ覚醒したばかりなんですよ? 夜通し移動してましたし今は眠らせてます。それに鎧が出来て無いのですし、流石に私服で来られても信憑性がないですから」
「ぐぬぬ……首相!」
「そうだな……カミナギさん、他にそのジャンヌさんがジャンヌ・ダルクと証明できるものは?」
「そうですね……本当は秘密なのですが……ミカエルさん!」
「「「「「!?」」」」」
空中に向かって叫ぶ、すると金髪に鎧を着て剣を備え、羽根を生やした女性が現れた。
「どうしましたか? 我が親愛なる友、ユウキよ」
「えっと、ジャンヌさんがジャンヌ・ダルクって中々信じてもらえなくて……」
「「「「「!?!?」」」」」
そう言うと、ミカエルさん?が大きく頷く。
「そうですか。皆様、信じられないかもしれませんが彼の言う事は本当です、そして私は彼がこの国を救うと思い少女ジャンヌの元へ導いてもらいました」
「「「「「!?!?!?」」」」」
「ですので、信じましょう。彼とその仲間とそして今世のジャンヌを……」
そう言って、フランスの方々が唖然とする中、降り注ぐ光の中に消えて行った。
「という事で、信じてもらえました?」
「我々は……夢を見ているのだろうか……」
「天使が……ミカエル様がそこに居た……」
「我々は……救われるのか……」
(凄い掌返しだな!!)
「「「「「……」」」」」
皆も思っている様で呆れている……。
「それで、明日ジャンヌさんを連れてきますけど……俺達はジャンヌさんの元で力になろうと思います。よろしいでしょうか?」
呆けている首相及びお偉方に問いかける、返って来ないな……。
◇◆◇◆
それから数分後、我を取り戻した首相との話を再開する。
「それで、一つ皆さんにお願いしたい事があるんですが……」
「頼み事ですか? それはいったい……」
「えっと……明日連れて来るジャンヌを指揮官として起用して欲しいんです」
「さすがにそれは……」
「あぁ、指揮系統をくれとかそう言うのでは無くて。ジャンヌ自身の特殊能力的なもので自分の指揮下に居る者が鼓舞され身体能力とか、諸々が強くなるんです」
「「「「「は?」」」」」
何度目だろうこの返され方……流石にワンパターン過ぎるぞ。
「えっと……ミカエルさんから与えられた力で、オルレアン解放までは天使の加護が配下に入るみたいなんです。理由はあまりわからないですが、そういうものらしいです」
「そ、そうなのですか……ですが試してみないと……」
「えぇ、ですので明日試してみたいのです、どのくらいの人数に影響があるかも把握したいですし」
ジャンヌとリアさんの吟遊詩人としての能力が、どこまで影響するか知りたいしね。
「わかりました、それではオルレアン奪還戦のお話を致しましょう」
それからは作戦会議に加わり、色々と話を済ませるのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
◇???side◇
「クソォ!!」
私は足元にあった木箱を蹴り飛ばす、壊れた破片が散乱する。
「どうして……どうして!!」
2度も親友を失う悲しみが私を埋め尽くす。
「ランスの攻略は失敗、指揮官のジャン・ランヌ殿は戦死ですか……」
「何だ! 何が悪かった!? 50万の兵を使い最新式の火砲まで使ったのだぞ!?」
「わかりませぬ、ですが貴方様の親友でも倒せない化け物が居たと思うしか……」
「ロシアやプロイセン、様々な国を破ったんだぞ!! なのにどうして!!」
私は地団駄を踏み、机を蹴り器を投げ飛ばす。
「仕方ない……化け物には化け物です……呼び戻しなさい!!」
「で、ですが! 魔女はルーアンを攻めている途中で!!」
「だったら援護を送れ、さっさと陥落させるのだ!!」
将軍に叱咤し、座席に座る。
「忌々しい化け物め……貴様の命運もあと数日だ……」
増してくる力を感じながら私は思わず笑みが上がるのだった。




